聖女は、潜入する。(1)
『メイド検定』というものがある。
日本メイド教会が主催していて、一見、メイドの知識を問うと聞けば、一般的にオタクと言われる人のメイド知識を聞くのかと思いきや、そうではない。
メイドに「なる」ための検定である。
かの有名な秋◯原で働くメイドさんの中には、この検定で一級をとって、大々的に宣伝している人も。
一級ともなれば、実技試験まである本格的な検定だ。
とったのは、好奇心もあるが、メイド体験したい人は結構多いんじゃないかと思ったから。
意外と奥が深く、検定料もリーズナブルだったので、一級まで取得してしまった。
こんなところで、リアルメイドがいる状況は、全く想定していないのだが。
『熟練のメイド』
探してみれば、やはりある。
・・また神様に会えた時は、この称号について、いろいろ聞いてみたい。
ちょっと前のことだから、忘れていることもある訳だが、試しに称号を発動すると、ちゃんとメイドのお仕事が身に付いている感覚がある。
言うなれば、自分の上からすっぽり、「できるメイド」の着ぐるみを被った感じ。
擬態には好都合だ。
花が自ら行く話を提案したとき、当然ながら皆反対した。
一番の理由は、グランキンが花を知っている、ということ。
「でも・・」
と花は言う。
「グランキンの私のイメージって、黒、だと思うんだよね。」
髪と目の色の印象は強い。
『変幻』でそれらの色を変え、加えて、メガネ、とかで変装すれば。
「絶対、分からないと思う。」
試しにエリザさんをイメージして、ブロンドの髪と、緑の目にして、『変幻』の小道具にあるブルーのメガネをかけてみる。メイクで目元をちょっとつり気味にしてリップを塗ると、
「これは、分からないな。」
フィラードが呟き、周りもうなずく。
加えて、『メイド』の称号を発動し、
「お帰りなさいませ、ご主人様。」
と、お決まりのセリフを言ってみると、
皆から「おおー。」と歓声があがった。
いけそうじゃない?
目立たないようにすれば、声でばれるリスクも減る。
メイドのスキルがあれば、入り込むのも可能だろう。
「ただ、この世界のマナーやルールは、ちょっと不安があるなあ。」
花がぽそりというと、
「なら、家で2日ほど見習いでもするか。」
とフィラードが申し出てくれた。
フィラードの所なら、メイドの心得はバッチリだろう。
「せんにゅうできたら、精霊を探してみて。きっと屋敷に一人か二人はいるはずだから。」
魔力が高くないものも中にはいる。そういう者が働く場合、精霊の助けは必須なのだそうだ。
「その間、良かったらバイト、代わりますよ。」
ミリエルの申し出もありがたく受ける。
これで、憂いはほとんどない。
あとは、メイドを雇ってくれるか、という問題だが。
「そちらの方は、何とかする。」
諦めたようにイルディンが言った。
明日から2日間の見習いにいき、3日後にはグランキンの屋敷に潜入する。
その手筈を確認していると、
『主。北にくるならば、最近集まっている魔物たちに会ってみてくれ。主になら、何か話すかもしれない。』
ポチが、考えながら言う。
皆の親分になっているのだと推察して、花は快く了承した。
「第一、『称号』を同時にいくつか発動できるなんて、他に誰がいるんだよ・・」
イルディンは終始ぶつぶつ言っていたが、花は気にしないことにする。




