長官は、苦肉の策をねる。(1)
「はい、お給料。よく頑張ってくれたわね。」
定食屋の営業時間を終え、花は念願のお給料を手にする。
エリザさんは年齢不詳の美魔女だ。
イルディンの古い知り合いらしいから、四十歳はこえているはず。
でも、『モニカ』にくる、エリザさん目当ての人たちの年齢層は広い。
お給料の支払いは、現金支給だった。コインが入った袋を渡してもらい、内容を確認。
「4000コイン!!」
この世界では、前の世界の100円イコールほぼ10コイン。
お給料をもらって、にやける顔が抑えられない。
そのままありがたく、ステータスATMに入金。
ふかーくお礼をして、花は店を出た。
店をでると外でミリエルがいて驚く。
パッと見神官には見えない普段着で、店の前で待っていたミリエルは、花を見つけると、ぱあっっと笑顔になる。
いかん、しっぽが見える気が。
「花、買い物行くかなと思って。お供しますよ!」
「楽しみなのね、お好み焼き。」
はからずも、お買い物デートである。
この国にスーパーマーケットはない。
イメージは、昔ながらの商店街。
お肉屋さんに八百屋さん、露店タイプの焼き鳥やさん、コロッケやさん・・
豚肉とキャベツは欠かせないとして。卵もゲット。魚介類も売っていたので、ホタテと桜エビを購入。
「あともう一つ、欠かせないものがあります!」
気持ちがのってきた花は、明るい声を弾ませる。
「なんですか?」
興味津々のミリエルに、びしっと人差し指を立ててみせる。
「それは、て・ん・か・すです!」
お好み焼きが好きならきっと常識の『天かす』。
中にいれれば適度に水分を吸って柔らかく。
外に散らばらせればカリカリした食感を演出。
お好み焼きには欠かせない。
「てんかすって、なんですか?」
「もう話はついてるの。行こう!」
『モニカ』でバイトしながら、お客さんの話を聞いたり街を探索したりして、下準備は万全だ。
いくつか路地を曲がると、揚げ物の匂いがしてくる。
「どうもー。お願いしていた天かす、いただきにきました!」
言いながら入ると、
「おう、花ちゃん待ってたよ。どうぞ。」
天ぷらやのおじいちゃんが、笑顔て迎えてくれた。
袋にいっぱいの天かすを用意してくれる。
お金を払おうとすると、止められた。
「他に使い道もないし、捨てなきゃいけないものなんだ。もらってくれて嬉しいくらいだよ。これ、良かったら食べな。そのかわり、定食屋でおまけしておくれ。」
花は、少しためらったがにっこりと受け取った。
「ありがとう!また、好きなおかずの日に、ちょっとおまけしちゃうね。」
満足そうな二人に、
「勝手にそんなことして大丈夫なんですか?」
ミリエルは、ハラハラする。
「大丈夫。エリザさんも了承済み。お得意様なの。」
パチンとウィンク。
お土産に持たせてもらったチーズ天ぷら二本を、二人で一本ずつ食べながら帰る。
今夜は、お好み焼きパーティーなのだ。
「花、花、もう一枚!」
ミリエルの声がかかる。
花はうでまくりにバンダナ。庭で屋台スタイルだ。
焼きはじめはミリエルだけだったが、先に伝えておいたので、転移魔法でポチとリリーも来て、庭はにぎやかだ。
「聖女様の異世界料理が食べれるらしいな。内緒にするとはよそよそしいぞ。」
王宮から来たのはフィラードだ。
・・転移魔法って、そんな私的な使い方していいのか??
「領主様がこんなとこに来てて大丈夫なんですか?」
若干引きぎみで花が尋ねると、フィラードはからからと笑う。
「いいの、いいの。用事もあったしな。夜ご飯で留守にしたくらいで危機に陥るような、半端な治め方はしてねえよ。」
・・こういうとこは、頼れる人だなと思う。
みんな、ひとしきりお好み焼きを堪能して、そろそろ店じまいかなと思った頃。
「・・まだ、残ってるか?」
やってきたのは、心なしか頬がげっそりした、イルディンだった。




