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聖女は、夢を語る(3)

部屋を出ると、皆が駆け寄ってきた。

質問ぜめにする予定だったそうだが、花の姿をみて、皆口をつぐんだ。神様と謁見したことだけは、素直に信じられたからだ。

花も言えることは多くない。

ただ、

「すぐに分かる、と言われたわ。」

と伝えただけ。


部屋の外でどんな話があったかはわからないが、ひとまず花とミリエルには王宮の離れに部屋が与えられ、そこに住むことになっていた。


ある夜のことだ。

『主。』

なかなか眠れずに寝返りをうったとき、窓がひらいて、ポチが姿を見せた。

ポチもテレポートが使えるようだ。

『神と話したんだな。加護が見える。』

「そうなの?」

ポチは眩しそうに花を見る。

北の地の淀みは、消えてしまったそうだ。そこから生まれた魔物だけを残して。

『淀みが消されるときには、魔物も消えるのが今までのならいだった。不思議な気持ちだ。』

これまでは、いわば強引に、浄化の力で迷いを振り払ってきたのだろう。

自然と淀みだけ消えたというのは、神様にとってはよいこと、だといい。

『我々魔物は、神の一部だ。主の加護は、俺たちの心を安らかにさせる。』

すぐに分かる、というのはそういうことか。

花は、納得する。

この加護をどう生かすのかは、確かに花にゆだねられている。

ポチは、その場に膝まずいて、花の手をとる。

『主。我々を生かしたのは主だな。感謝する。自分の意思に関係なく消されるのは、誰しも恐怖だからな。我は、主がいる限り、一生を捧げることを誓う。これから、主がどんな道を選んでも、な。』

ポチはそう言うと、微笑み、

『それだけ言いたくてきた。森に帰っている。』

と言い残して、かき消える。

あとには深い夜の闇が残っていた。


翌日。

これまでの償いもこめて、望みはないかと聞かれ、花は王都を見たいと頼んだ。

ミリエルをガイド役に、街を、みて回る。

活気のある街の様子は、元気を与えてくれる。

初めての純粋な異世界観光だ。


「はあ。たのしんでましたね、花。」

1日引っ張り回されてへとへとになりながら、ミリエルが言う。

「うん!楽しい!やっと異世界に来たって感じだよ。」

花はキラキラした目で答える。

前の世界でも旅行の魅力はしたことのない体験、新しい発見だ。

「なんだか、羨ましいです。この世界には、純粋な娯楽で旅をする文化がありませんから。」

旅は手段でしかない。知らない土地に行くことは不安と一体だ。

「ねえ、ミリエル。私ね、この世界で、夢を叶えようと思ってるの。」

争いのない、平和な世界。それが実現したら、この世界の人達に旅行の楽しさを広めたい。


どうせ行くなら、その人にとって、その旅行が、何かを得るものであってほしい。

好きなものを、より深く。新しいものは素敵な体験と共に印象深く。一人でも知らなかった自分をみつけたり。パートナーのことがより大好きになったり。


いつか、ミリエルに語った夢は、この世界でもきっと実現できる。

「私、やってやるわ。この世界のこと、もっと知って、最高の旅行プランナーになる!聖女のスキルと称号があれば、案外いけそうな気がするの!」

えい、えい、おーと腕をつき出す花の横で、ミリエルも合わせて腕をつき出す。

「僕もお供します。花の夢、手伝わせてください!」

ゆっくりと日が落ちるなか、二人のえい、えい、おー、は、しばらく続くのだった。



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