聖女は、進む。
「だれ?」
花が尋ねると、
『この世界の創造主。一般的には、神、と呼ばれるものです。』
声は、答えた。
「神様?・・えーと。今、教育を終えたって言った?」
『五大要素の魔法の理解と習得、聖魔法と闇魔法の習得、ポーションの精製、精霊との対話、この世界での職業体験、「聖女」以外の称号の取得。全て終了しているでしょう?』
今、声が言ったものが聖女教育なら、確かに全部やったけど!
それ、全部生活のためと、偶然ですけど??
『王宮にある、謁見の間で待っています。』
それだけ告げて、声は聞こえなくなった。
「えーと、誰か説明してくれるかな?」
花が我に返ったとき、イルディンが到着したらしく、戸惑う声が聞こえる。
花は、確認する。
「ねえ、イルディン。今神様が話しかけてきてね、謁見の間で待ってるって言われたんだけど。」
「何?花、聖魔法使えたのか?あれ、でも精霊は?」
あ、言っちゃった。
主犯は間違いなく、イルディンだ。
「私にこっそり、聖女教育、してたわね?」
イルディンを睨んでやる。すぐ近くでミリエルも冷や汗をだらだら出しているから、共犯だな、これは。
「いや、積極的にしようとしたんじゃないんだが、もしかしたらこのまま出来ちゃうんじゃないかなあ、とはちょっと思っては・・というか、現在の状況にまったく追い付いてないんだが?!」
焦るイルディンはなかなかレアである。
改めて見回すと、荒れた部屋、氷漬けでグーグー眠るグランキンと男たち、元気になってるミリエル。部屋の主のように窓辺にもたれるコボルトに精霊。
ポチとリリーは、侵入者のイルディンへの警戒を隠さない。
確かに状況の整理は必要そうだ。
「イルディン、とりあえず彼らは大丈夫だから、帰ってもらうわよ?」
一応聞くと、うなずくので、二人に向かう。
「ポチ、リリー、来てくれてありがとう。嬉しかった!一旦森に戻っていてね。」
にっこり笑うと、二人も了承してくれる。
『主。またいつでも呼べ。世界のどこでも駆けつける。』
「あるじーじゃあねー。」
二人が去ると、場の空気が少し和らいだ。
それから花とミリエルで、簡単に事情を説明する。
イルディンは、苦い顔で話を聞いていたが、とりあえず今後どう動くべきかは決まったようだった。
「花。君は間違いなく聖女だが、本来の待遇ではなく、申し訳ないことばかりだった。だから、私は、君の意思に反することはできないと思っている。君が決めてほしい。謁見の間に、行ってくれるか?」
花は、もう迷わない。
「ここまできたら、最後まで付き合うわ。行きましょう。ミリエルも、ついてきてくれるでしょ?」
ミリエルは、笑顔で力強く答える。
「もちろんです!・・花が行くところならどこへでも。」
真剣な瞳は輝いている。
イルディンはほっとしたようだった。
「二人は宿に送るから、ゆっくり休んでくれ。私は後始末をする。」
ありがたいけど、送るってやっぱりあれだよね?
「テレポート」
躊躇の暇もなく宿に送られて、フラフラ。
後の事は省略しておく。
明日に備えて、二人は眠ることにした。




