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聖女は、聖魔法が使えない。(2)

ベッドで眠るミリエルについて、花は後悔で押し潰されそうになっていた。

あの時、負の感情に流されるままに、ミリエルに力をぶつけた。

今から考えると、まともじゃなかったと分かるのに、あの時はなんとも思わなかった。

「ごめん、ミリエル・・。」

イルディンが、様子を見に来る。

「呼吸も正常だし、すぐ目を覚ますはずだ。すまない、花。あそこまで強力な魔法が飛び出すと思わなかった。完全に私のミスだ。」

「いいえ。人に魔法をぶつける怖さを考えなかった自分が怖いです。私、もう二度と闇魔法は使いません。」

花は深い反省とともに決意を言う。

だが、

「いや、それはちょっとなあ・・」

イルディンの歯切れが悪い返事に違和感。

しかし、その違和感は、ミリエルの「ん、うーん。」といううめき声でかき消える。

「ミリエル?!」

呼びかけると、ミリエルの目がうっすらと開き、目の焦点が花にあう。

「大丈夫?ミリエル!もっとしっかり目を開けてみて!!」

「・・花。僕の細い目は生まれつきです。」

ミリエルがツッコミを入れながら苦笑いする。

それからゆっくりと体を起こすと、手を握ったり開いたり、足を曲げたり伸ばしたりして感覚を確かめながら、

「もう大丈夫です。びっくりしました。」

と笑う。

「ミリエル、ごめんなさい。本当にごめんなさい!」

ベッドの縁におでこを何度もこすりつけて謝る花。

「いや、花は言われたようにやってみただけで、悪意はなかったでしょう?」

言われて花は、正直に答える。

「積極的に傷つけるつもりはなかったわ。でも、魔法への好奇心で、深く考えもせずにグランキンへの敵意をミリエルにぶつけたのは事実。私には魔法を使う資格はないわ。」

ミリエルはそれを聞いて、慌てたように言う。

「いや、それは困るっていうか!気をつけて使いこなす方が大事ですから!あ、それに、僕あのオコノミヤキまた食べたいです。この世界では料理に魔法は必須ですし!」

お好み焼きか。確かに、次は自分で火力調整して、美味しいやつをミリエルに食べさせてあげたい。

「・・わかったわ。じゃあ、闇魔法だけ封印する。」

「花。それなんだが。」

様子を見ていたイルディンが、言いにくそうに口を開く。

「雷系の魔法は、実は闇魔法なんだ。」

それがなにか?

雷系の魔法は料理には必要ないはずだ。

そもそも、イルディンに雷系の魔法を頼んだのってなんでだったっけ?

記憶を探る花に、イルディンが説明する。

「花の場合は、あの、ミキサーという道具のように、雷系の魔法が必要なものがあるのではないか?」

家電か・・!

花は少なからず衝撃を受ける。

確かに、この世界の料理に電気はいらない。

そもそも概念がないのだから。

だが、花は・・。

(多分、道具の中には、電化製品、まだあるよね。)

なんといっても、前の世界の道具は、ほとんど動力に電気をつかうのだ。それが使えないのはもったいない。もったいなさすぎる!!

「私は、どうすれば・・。」

そこで、イルディンが提案する。

「花。危険性を知ってほしくて、ミリエルに麻痺をかけてもらったんだ。まさか、あんなに強く発動するとは思わなかったが。で、だ。危険性を知った上で、調整する力をつけるために、あのミキサーが役に立つと思う。」

微量の電気を流す練習。相手はミキサー。

これなら、失敗したら霧消するだけだし、成功もわかりやすい。

花は、次の日から、聖魔法の発動と、ミキサーによる闇魔法の調整を身につけることとなった。


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