聖女は、勉強する。(3)
格闘すること、一時間。
「まーったく出ません!!」
花が空をあおぐ。
手のひらを上に向けて、「ファイア!」
下に向けて、「ファイア!」
前に向けて、「ファイア!」
両手で、「ファイア!」
振り向き様に、「ファイア!」
以下、略。
「魔法の習得に必要なのは、魔力の流れを感じ取ることと、形にするためのイメージ力なんだが・・」
こればっかりは、習うよりも慣れろ、ということらしい。
赤ちゃんが、初めて歩いたり、言葉を発したりするのと同じ、感覚的にカチリとはまると当たり前のようにできるようになるそうなのだが。
「僕も最初に覚えたのは火系の魔法でした。一番身に付けやすいとは思うんですが。」
ともあれ、これは練習あるのみ、かな。
「しばらく、いろいろ考えてやってみます。お二人は、自由にしていてください。」
そう言って、「ファイア」を繰り返す。
二人は奥で何やら話し込んでいた。
その間に考える。
(やみくもにやっても無理っぽいな。)
大事なのはイメージ力。火、火・・。
不意に、友人と手持ち花火をしたときのチャッカマンを思い出す。
「カチリと押すと、ボッって・・」
指先をチャッカマンに見立てて、イメージする。すると、
ボウッ
指先に突然火が灯る。
「わあ!できた!!」
話し込んでいた二人が反応して駆け寄ってくる。
「すごいじゃないか!」
「すごいです!」
指先に火がともったまま、いっぱい褒められる花。問題はそこからだった。
「ファイア!」
出ない。
「ボッ!」
出る。
「ウィンド!」
出ない。
「ビュー!」
出る。
「やだー!!」
思わず駄々をこねてしまう。
要するに。
イルディンが追っ手を撃退した時の、「ファイラ」「氷牙」「ウィンド」が、花の場合は
「ボボボ!」「カチーン!」「ビュー!」
となる。
なんのリズムコントやねん!!
関西人ではないですが。
つまり、全然かっこよくないのだ。
「思ってたのと違う。」
ふてくされる花に、イルディンは笑いをこらえたせいで思いきり歪んだ顔をしながら、いきも絶え絶えに言う。
「いや、はあ、とにかく、ぶふ!魔法の使用はくっ!問題無さそうだな。いや、さすがというか、くくく!」
フォローになってません。
火ができたことで、調子にのって他の系統も擬音語でやってみたら、出来てしまったのだ。そして、他の言葉では発動しなくなった。
「普通に考えて、初日で五大要素の魔法が使いこなせてるだけで化け物ですけどね。」
ミリエルはなぜがげっそりしている。
「化け物って褒め言葉に聞こえないんだけど??」
花がぎろりとにらむと、あわてて
「いい意味で、です!」
と弁解するミリエル。
いい言葉、覚えやがったな。
花はブラックな気持ちで、そう思う。
それからもかっこいい呪文にチャレンジし続けたが、不毛な時間だけが流れた。
「今日はこれくらいにしようか。」
イルディンの一声で今日はおしまいになる。
夜は、宿代の代わりに居酒屋のバイトをしているのだ。




