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聖女は、勉強する。(2)

翌日。

とりあえず一週間、この居酒屋兼宿でお世話になりながら対策を考えることにする。

グランキンがこの場所をみつけて追っ手を差し向ける時間と、イルディンが国を離れていても多分なんとかなるギリギリの時間を計算した結果らしい。

イルディンのいる法務部は、大規模な戦闘の後方支援が主な仕事だが、他にも外交や内政の雑務処理が早いためいろいろ兼任しているのだとか。

まあ、あの王様だと、周りが仕事しないとまわらないだろう。

グランキンもああ見えて仕事はできるほうらしい。


「イルディンが後方支援?宝の持ち腐れでしょ?」

「普通はあんなまねできません!イルディン様が規格外なんです!!」

ミリエルが力一杯説明する。

まあ、納得。

で、その一週間で何をするか、だが。

イルディンが、花に提案する。

「花。魔法、使えるようになりたくない?」


本来、この世界のものたちは、多かれ少なかれ魔力を持って誕生する。魔法は生活に身近なものだ。

召還されたからには、魔力があるということ、らしいのだが。

「称号の力は、微量ながら必ず魔力を使う。作ったものは人の魔力を回復し、しかも『変幻』を一度も解かずに使い続けていられることから考えて、花の魔力はかなり大きいと思われる。」

「魔法って、どうしたら使えるようになるんですか?」

興味をひかれて聞くと、イルディンはにっこりと笑う。

「最高の教師が教えてさしあげよう。」

「イルディンは、魔法学校の名誉教授です。」

ミリエルが横から補足説明。イルディンって、いい意味でヤバい人だと、花は改めて思う。

異世界にせっかくきたのだ。魔法が使えるようになるなら、それはぜひに!という気持ちである。

資格検定勉強で培ったやったるぜ根性がムクムクとわきあがる

「使えるようになりたいです!」

イルディンの魔法講座が始まることになった。


「えー、まずは魔力量を知っておかないとな。」

街から少し離れた森の開けた場所でイルディンが言う。もともとの魔力量によって、初期に教えられる魔法も限られる。鍛えれば増えていくらしいが、とりあえずは一週間で、使えそうな魔法を会得する方向でいくようだ。

「ステータスをだして、見てみてくれ。ゲージの数字は??」

花は、言われたとおりにステータス画面を出す。MPゲージは出るには出るのだが、実は以前も見方が分からなかった。

素直にそう言うと、「そんなにわかりにくかったかな?」と言いつつ、

「ステータス、オープン」

と表示して、自分のステータス表示を見せてくれる。

いわゆる教員免許のあるものしか、ステータスを公開したり相手のものを見たりすることはできないらしいが。

イルディンのMPは『3500』。

普通は四桁いくことはないらしいので、まあ、きっと規格外なのだろう。

ゲージは満タン。青い光を放っている。

「花のも見ていいかな?」

そう言うので了承すると、イルディンは、花の出していたステータス画面をくるりと回す動作をする。

そして、マンガでしか見たことないような顔をする。

いわゆる『ガーン』である。

「あの、どうかしましたか?私のゲージ、イルディンみたいな青い光がないんです。数字も。だから、見方がわからなくて。」

恐る恐る聞いてみると、イルディンは深く深呼吸をした。

「君たちは私を規格外と言ったが、それはこちらの台詞だな。ゲージの表示がないのは、必要がないからだ。」

「え?それは魔力が0ってこと??」

いやまて、と考える。それじゃあ『称号』の発動が説明できない。

「逆だよ、花。こんなマーク、見たことない?」

そう言うとイルディンは数字の8を横に倒した形を指で宙に書いて見せる。

見たことは、ある。花もテレビは見るし、アイドルも好きな方だ。そのマークは、某アイドルグループの名前に使われている。意味は確か、

「無限?」

イルディンがうなずく。

そう言われて改めて自分のゲージを見ると、うっすらグレーでそのマークが表示されていた。青い光を探していたから、目に入らなかったのだ。つまり。

「君は、使い方さえ覚えれば、どんな魔法を何回使っても魔力が減らないってことだ。」

実際は魔法には体力も必要だから、使い続けられるわけではない。しかし、なんでも使えるというのは、なかなかすごいのではないだろうか。

「聖女だから?」

「いや、聞いたことないですよ。そんな話。」

ミリエルも驚いている。

「・・まあ、教えがいがあるというものだ。さっそくやってみるか。」

いち早く気を取り直したイルディンが、講義を始めてくれた。


魔法を使うときには、呪文がある。が、イルディンやミリエルのように、言葉として発するのは僅か。必要なのは、イメージだ。

一応、学校などでは一般的な名前を教え、

例えば風魔法なら「ウィンド」「ウィンドラ」「ウィンドガ」のように、使う魔力や威力にあわせて三段階くらいで覚えていくらしい。

「独学で魔法を使う人間もいるからな。その場合は異なる呪文になるわけだ。」

要は言葉ではない、ということだ。

魔法の属性は、「火、水、土、氷、風」そして「聖」と「闇」。他に、自然界にある精霊の力を借りるのも魔法に分類される。

得意不得意はあるものの、不可能はないらしい。

「魔法も、努力なんですね。」

なんだかしみじみしてしまう。

それならば、頑張ってみようかなとも思う。

「花は既に何度か、称号を使うときには魔力を使っている。なんなら変幻を使っている今も、魔力を使っているわけだが。」

普通は減るから、分かりやすいらしいが、花の場合はそもそもゲージに影響がないため感じ取りにくい。

そこで、とりあえず実戦から始める。

「火、から始めてみるか。」

そう言うとイルディンは

「ファイア」と唱え、手のひらの上でぼっと音がして火が灯る。

反対の手でパチンと指を鳴らすと火は消える。

「魔法を消すのもイメージだからな。ジェスチャーも自由だ。」

さあ、やってみようか、と促され、花は挑戦してみることになった。



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