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なにやら見た目が変わっているのですが

 血まみれで、ぐったりと城壁の中に入る私たちを、住民たちは遠巻きに見つめていた。興味と不可解が入り混じったような視線だった。


 先ほど丘の上で見た時は魅力のある町に見えたけど、今は見渡す気力もない。口数も少なく、一直線に城へと向かう。


 城に着くなりウィラードとレオナードは傷の手当てを受ける、というので別行動となった。


 城は外観も内部もかなり凝った作りになっていて、中庭には噴水や綺麗に整えられた花達が並んでいる。ここは本当に大国なのだ。


 普段の私だったら嬉々として中を探検するだろうけど、魔物襲撃の疲れで、やはりそんな気分にはなれず、城の人に案内されるがままに風呂に入れられた。

 汗と土埃、獣の返り血でドロドロだったので、正直とてもありがたかった。



 一息つける部屋に案内されたところで、私はやっと、考えるだけの回復を得た。


 先程起こったことがまだ信じられない。


 私が聖女と言われているなんて。

 私の手から放った光で魔物が消え去るなんて。

 ああ、なんてことなの。家に帰りたい。

 また交通事故に遭えば帰れるだろうか。


 転生して悪役令嬢になるかと思いきや、よりにもよって私のまま「世界を救う聖女」になってしまった。

 聖女なんて責任重大で、やりたくないというのが正直なところだった。



 ◇



 そして私は今、王様に会う前に、リリーナによって身支度を整えられていた。彼女は明るい性格のようで、話してて元気になれる。


「終わるまで、鏡は見せません! お楽しみです!」


 なんて彼女が言うものだから、自分が一体、どういう状態になっているのかまるで分からない。鏡には私が覗きこまないように、丁寧にも布がかけられている。


「あの獣……魔物っていうのは、たくさんいるの?」


 リリーナに髪の毛をいじられながら、ずっと気になっていたことを聞いた。

 あんなのがたくさん襲ってきたらたまらない。


「まさか!

この辺りの危険な魔物は全て討伐されてるし、基本的に、魔物達は臆病なのが多いんですよ。城壁の中まで入っても来ないし……。今日みたいなのは……私も初めてです」


 少し困惑した様子で彼女は答えた。よかった、と安心する。とりあえず町中で襲われることはないみたいだ。


「でも、ウィラード様とレオナード様、かっこよかったですよね! お二人にお護りされるなんて、一生の思い出ですぅ!」

「え、そうなの?」


 私の反応に、リリーナは驚愕の表情を浮かべた。


「ええ!

 だってお二人は国王の側近のバルト将軍の腹心の部下なんですよ! エリート中のエリートで、しかもあのルックス! ウィラード様は男気溢れて凛々しく! レオナード様はさわやかでスマート! お二人並ぶと美の暴力じゃないですか!?」

「へ、へぇ?」


 色々と衝撃的な事がありすぎて、二人の騎士の顔なんてまじまじと見なかったけど、思い返せばカッコいいと言えなくもない。


「エルドールの女性の話題に必ず上がるのは、『あなたはウィラード派? レオナード派?』ってことですね!」


 興奮した様子で話すリリーナに気圧されてしまう。


「し・か・も! お二人とも、とっても優しいんですよ! あたし、ウィラード様にお仕えできて本当に幸せです!」


 リリーナの演説はまだ続いている。レオナードはともかく、ウィラードが優しい? そこだけは疑問だ。


「ウィラード様は、身寄りのなかったあたしを使用人として雇ってくださったんですよ。泥棒ばかりして学のなかったあたしが今生きているのはウィラード様のおかげです!」

「ど、どろぼー!?」


 私の驚きにもリリーナはにこにこして返事をせず、代わりに「はい! できました!」と言った。


「ジャジャーン! どうでしょう? 聖女様。リリーナの仕立屋です!!」


 軽快な効果音とともに、鏡の布を取り払う。

 そして、鏡に映ったものに私は目を見張った。


 私のボブの髪は綺麗に編み込みされ見事だった。


 ……だけど私が驚いたのはそこじゃない。

 そこじゃなくて!!


 私は()()()()()()()()()()()で、と言うことは普通に()()()()()()()()()()()()なのだ。


 しかし、鏡に映った姿は――


「だ、だ、誰よ!?」


 白銀の髪に、金色の瞳が、鏡から驚いた顔で見つめ返していた。


「なにこれーー!?」


 何度目かのパニックが私を襲う。


 白銀の髪!? 金色の瞳!?

 しかし、よく見ると顔は私のままだ。肌の色は少しだけ白くなったような気もする。


「なんで、なんでなんでんんで!? 異世界って、見た目も変わっちゃうんだっけ!?」


 取り乱した私の姿を、リリーナの大きな瞳が困ったように見つめていた。

なぜ見た目が変わってしまったのか、それはいずれ明かされます。

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