始まりの銃声(うた)プロローグ
小さい頃、僕は小鳥を飼っていた。赤や青、黄色や緑、色とりどりの小さな鳥は非常に美しく、僕はとても可愛がっていた。鳴き声も素晴らしく、僕を楽しませてくれた。
「……ごめんね……」
一人の幼い男の子が庭に蹲っている。美しく整えられた庭園。王宮か貴族の館であろうか。
「……謝る資格もないけど……」
広い庭園にただ一人。ぽつんと茂みの側に佇む少年。傍らには緑の小鳥。もう自分の力では二度と動かない。飛ぶ姿を見ることもない。少年が掘ったのだろう、地面には大人の拳二つ、三つぶんくらいの穴。その鳥のための墓だ。少年は傍らの小鳥を手にのせた。今朝までその美しい緑の羽根をふるわせ、綺麗な声で鳴いていた。今は小さな目蓋(まぶた)をきゅっと閉じ、くちばしももう開かない。歳の頃六、七歳だろうか、その幼い少年は掌の中の冷たい小鳥をしばらく大事に手の中に抱いていたが、やがて自分で掘ったその穴に鳥をそっと横たえた。
「………………」
少年は無言で土をかけてゆく。鮮やかで柔らかな鳥の羽毛が全て覆われたところで彼は手を止めた。土の色が新しい。辺りにはそんな色の違う土の所が何ヶ所もあった……。
「……ーー……っーー……」
少年が何か声にならない声を上げた気がした。だがそれも風にさらわれて誰の耳にも届かない。一陣の風は彼の柔らかな金色の髪も揺らす。髪の毛で彼の表情は分からない。ただただ小鳥たちの墓場で幼い少年は立ち尽くしているのであったーー……。