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2:大天使アリスさん




「──もうやだッ! こんなクソゲーやめてやらぁ!」


「よしよし、辛かったわね。……というかキミ、よく10分以上も逃げ回れたわね……どういうことなの……」


 意気揚々と草原に出るや、武装集団に追いかけ回されてぶっ殺されるという衝撃のスタートから数十分後。【始まりの街】にて“蘇生リスポーン”した俺は、さびれた酒場でうだうだぐだぐだと愚痴っていた。

 そんな俺のことを慰めてくれているのは、蘇生先の墓場で知り合った『魔人種』プレイヤーの女性である。

 何でも初心者をサポートするのが趣味らしく、落ち込んでいた俺のことを放っておけずに声をかけてくれたそうなのだが……


「……どうしたの? 私のことをじっと見て」


「い、いや、何でもないっすよアリスさん」


 ──少なくともこのゲーム内においては、女性ではなく少女として扱うべきかもしれない。

 見た目年齢は十代も前半といったところだろうか。ルビーのような紅い瞳が、銀色の長髪によく似合っていた。その頭頂部には黒いカチューシャを載せていて、小さな身体をゴシックドレスで包んだ姿はとても幻想的である。


(それに……)


 加えて彼女は『小悪魔族』という種族を選んでいるそうで、腰のあたりからはコウモリのような羽根が生えていた。


 ──ちなみに、ランドセルが似合いそうな見た目のくせに胸だけは生意気にポインポインとしてやがった。ありがとうございます!


(うん。可愛いか可愛くないかで言えば、全会一致で超絶可愛いと叫びたくなる容姿なんだが……)



 ……小悪魔ゴシックロリ巨乳とか、ぶっちゃけこのゲームじゃなかったらネカマを疑っていたところである。



 フルダイブシステムを取り入れた【ダークネスソウル・オンライン】では、精神への影響を考慮して異性のアバターを使うことが出来ないのだ。その当然と言えば当然と言えるかもしれない仕様が発表されたときには、多くの男性プレイ希望者たちが(掲示板で)絶望の叫びを上げたという。

 まぁその数秒後には、『そうだ! だったら男の娘オトコノコキャラになればいいじゃん!』と犯罪的な解決法を見出していたそうなので安心だが(?)。


 はてさて、そいつらはマジで男の娘になったのだろうかとどうでもいいことを考えていると──不意にアリスさんがクスリと笑いかけてきた。


「ふふっ、その様子だとだいぶ落ち着いてきたみたいね?」


「えっ、あ、ああ……!」


 ってそうだ、本当に今さらながら何をやってるんだろうか俺は……!

 いくら衝撃の初死亡体験だったとはいえ、初対面の相手に愚痴をこぼすのは流石にちょっとないだろう。

 彼女も内心では迷惑と思っているに違いない。俺は素直に、頭を下げることにした。


「……すまん、アリスさん。気を悪くさせちまったよな……」


 そうして、俺みたいなクソ初心者を相手に時間を使わせてしまったことについて、改まってびを入れると──


「いいのよ別に。何でもかんでも我慢して、一人で抱えることはないわ。特にアナタはまだまだ可愛い初心者さんなんだから、遠慮なんてせずに先輩を頼ればいいのよ。

 ──まぁ、私みたいなぱっと見小さい先輩なんかじゃ、ちょっと頼りなく思えちゃうかもだけどね?」


 そう言って、クスクスとたおやかに笑うアリスさん。

 …………ってなんだこの人ッ!? 天使か!!! 小悪魔だと思ったら天使だったのか!?


「(い、いやいやいやいや待て待て待て待て。ここまで優しい人がいるわけがない! きっとほら、あれだ、相談料とか言ってアイテムをせびってきたり……)」


「それじゃあアナタも落ち着いたことだし、まずは【ダークソウル・オンライン】の現状について教えてあげるわ。ああ、それと回復アイテムなんかをいくつか分けてあげるから、これから頑張っていきましょうね……アラタくん?」


 ウッ──ウワアアアアアアアやっぱり天使だったァァァアアアアアア!!! 俺の、好感度が、マックスまで上がったッ!

 

 ──ゲーム開始から一時間、こうして俺は小悪魔ゴシックロリ巨乳ことアリスさん(大天使)に攻略されてしまったのである……!



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― 新着の感想 ―
[気になる点] 天使族とか鳥人は居るのかな。(居ても邪神側?) ……これが運営側じゃないとはなんてゲームだ……。
[良い点] この回も面白かったです。 別作品を先に読んでると見知った名前が出た時に親近感が湧きます
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