第8話 どうして馬之助が来るの? だれか連絡したの?
さすがは律子さんだ。良い質問だ。
「馬ノ介は、家から学校まで電車で片道1時間かかるよな。
駅から走ってきたと言ったよな。
駅から寄り道せずに、学校まで一生懸命走ってきたんだよな。
外は真っ暗だぞ。
学校に着いたら何も悩まず校舎のガラスを叩き割り、電灯を付けて、俺と律子がいる、この奥の階段の踊り場まで走ってきたよな。
アイツ、だれから聞いたんだ?
どうしてここに律子が倒れている事を知っていたんだ?
絶対に馬之助が怪しい。
病院に急ごう。
馬之助が犯人か犯人の共犯ならば、病院の律子に何か危害を加えられえる可能性がある」
俺は自転車に飛び乗った。
真面目な素振りは真っ赤な嘘。こいつは、犯罪者的なペテン師だ。
これだけの大嘘を白々しく言えるのはもう芸術的なペテン師な奴だ。
「律子、お前がPCに移った時って、たぶん、お前が死んだ時なんだろうなあ」
「私もそう思う。たぶん、もう私は死んでいる」
「白兎君」
「何だ」
「白兎君約束して。病院の私が死んだら、このPCの電源を切って。たぶん、それでPCの中の私も死ぬ。消えてしまうと思う」
「それでいいのか」
「体が死んで心だけ機械の中に残っていても悲しい」
「約束する。PCの中のお前を消去する」
「ありがとう」
「どうして俺のPCに律子の心が入ったんだ?」
「たぶん、襲われた時、あの時、私は死んだと思う。心だけ助かりたい思ったのだと思う」
「どうして俺のPC?」
「それは私が印象深く覚えていたからだと思う。PC、オタク、キモイ、赤井白兎って」
「最低な連想記憶な。どーせオタクですよ。言っておくがそんな俺にファーストキスを奪われてオッパイもみもみされたのはお前だぞ」
キスとオッパイモミモミの話を出したら、律子がキレた。
「そんな言い方するからヘンタイって言われるんでしょうが変態がボケ!
アンタのした事は英雄的行為だと胸張って言えないの!
白兎は私が助かるかわからない絶望的な状況で血まみれになって必死に人工呼吸してくれたのよ。
私はPCの中から見ていた。アンタ泣きながら私に人工呼吸していた事をもう忘れたの!」
うっ、言葉に詰まる。
「TPOわきまえてしゃべりなさい! ヘラヘラしない! 茶化さない! やってる事は立派でも言ってる事はサイテー!」
何も言えません。
「でも、感謝している。ありがとう」