第5話 放課後の学校
第5章 放課後の学校
休止スリーブさせようとすると悲鳴を上げるので休止もできない。
バッテリー駆動のままショルダーバックにPCを放り込む。
PCにヘッドセットを付けて男子寮を出た。
壊れたフェンスをくぐればもう学校の校庭だ。
校舎の1階の鍵の懸かってない窓を探して、窓から校舎に入った。
ショルダーバックの中のノートPCの中の自称高瀬律子に文句を言った。
「俺、不法侵入だよ。俺が訴えられたらお前責任取ってくれるだろうな」
「私が説明する」
「バカ。PCの中に人間が入る事はないんだよ。俺に前科が付いたらお前のせいだぞ」
灯りの消えた廊下には外の外灯の光だけが差し込んでいて充分に不気味だ。
暗い校舎でライトを照らせば”ドロボーがここにいますよ”と周りに教えているが気がしてあえてライトは点けなかった。
真っ暗な校舎の中で灯りも点けずに歩くのは気味悪い。何かしゃべらないと間がもたない。
「これじゃ泥棒だよ。何か盗もうか、律子の体操服でも盗もうか」
「バカ、変態」
場を和ませる為に言ったのだがマジで怒る。
ユーモアのセンスが無い奴だ。
階段を上がって2階の教室に入った。
月明かりに照らされて高瀬律子の席があった。机が乱れている。カバンもまだある。
「お前、まだ帰ってないな」
(帰った記憶が無い)
反対側のドアが開けっ放しだ。
「反対側の階段の方に行って見る」
そちらの階段は校舎の端になるから余り使う生徒がいない。
階段に近づくとかすかに生臭い匂いがした。
嫌な予感がする。
「律子、階段の方から血の匂いがする」
(怖い)
「俺の方がリアルに怖いんだぞ」
階段の上に立ち階段踊り場を覗き込んだ。
ただでさえ暗い階段、何があるのかわからないのは怖い。
じっと目をこらすと踊り場に何か影が見える気がする。
「階段の踊り場に何かがある」
さすがに不気味なので俺はライトを点けた。
ライトの光の輪は踊り場のコンクリートの床を照らした。
床は赤に血で染まり、その血の先には女子生徒が倒れていた。
俺は急いで階段を駆け下りた。
(どうしたの、何かあったの)
「女子生徒が倒れている。血が流れている」
頭から血を流している女子生徒をゆっくりと起こして顔を見た。
(ねえ、だれなの。誰が倒れているの)
俺はPCの中の高瀬律子にゆっくりと答えた。
「高瀬律子。お前だ」