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NO 4.





...2009/5/10/19:36





誰かの言い争う声がする。静かで、冷たい二つの声。


ああ、誰だろう。俺の寝室で音を立てないでっていつも言ってるだろ?




「―――ボス―うしてコイツ――ですか?」

「――が――選んだ――いいんだよ」

「確かに―――射撃――抜群に優れて――が」


うるさいなあ。俺はまだ眠っていたいんだ。



「なあ零夜。お前もこのやり方に反対か??」

「・・・いえ・・・ボス」


はっきりと彼らの声が聞き取れるようになったとき、世界が急速に色付き始めた。霧がかったようにぼやけていた俺の視界も同時に明確になり、言い争っていたと思われる二人の顔を視界に捕らえた。

誰だろう、ついさっきまで見てた気がする。


――――ああ。


答えにたどり着いた瞬間、何処か呆けていた頭が完全に覚醒した。


俺たちはマフィアに連れてこられて、ここに入れって・・・。

んで・・・俺は、花梨を、撃った。

それから・・・気を失って・・・?



朱雀達はまだ俺が起きたことに気がついていないようだ。


「なら、黙ってろ。俺はあの四人が欲しい」

「はっ・・・しかし。隆哉、棗、花梨の三人はいいとして・・・あの少女は・・・」

「彼女はあの三人をサポートしてくれる。それに・・・すぐにでも此処に馴染んでくれるだろう」


・・・四人・・・・・少女??

朱雀の言葉が淡々と紡がれる。


「彼女は俺がすぐに見つけてくるよ。それまで・・・君はあの三人を指導しといてくれ」

「・・・わかりました。ボス」


指導・・・??


手を突いて起き上がろうとすると決して上等とはいえないベッドが軋んだ。その音で二人とも此方に気がついたようだ。“ああ、よかった起きたんだね”と言いながら朱雀は笑顔で俺の傍へと寄ってきた。先ほどの冷たい瞳がフラッシュバックのように蘇る。あまりに鮮やかなので今彼が浮かべている穏やかで優しい笑顔とかぶって恐怖が尚背筋を撫でる。思わず後ろへ身を引くが彼は“さっきはありがとう”と優しく言って嫌な顔一つしなかった。


「起きてたなら俺達の会話は聞いていたかな?君たちには指導を受けてもらおうと思うんだ」

「し、どう??」

「うん、俺達はそう呼んでいる。新しく入ったメンバーに色々と特訓してもらうんだ」


朱雀の言葉がすんなりと頭に入ってきて、“ああこれが普通なんだ”と思えてきた。思わず頷きかけたとき、零夜が口を開いた。


「俺が指導係だ。よろしく」


頭のもやもやが一気にはれた。


冗談じゃねぇ!!


カッとなって体が震えた。


「なんで、俺達が・・・」


花梨が言っていた言葉を呟く。うわ言のように何度も繰り返していると朱雀がそっと毛布をかけなおした。


「さっきも言ったけど、君達は俺のファミリーに必要なんだ。どうか・・・協力してくれないか」


朱雀が頭を下げた。先ほどまではなかった行動に戸惑いを感じ、思わず“ぁ、頭を上げてください”と呟いてしまった。朱雀はゆっくりと頭をあげ、俺を見た。

悲しみが入り混じった瞳で俺を見詰め・・・穏やかな笑みを見せた。



ああ。


この人は人殺しだ。

マフィアだ。


いい人も何も有るわけがないだろう?

それなのに。


なぜ、この人はこんなに優しい顔をするのだろう。



「君の心配はごもっともだろうが、それでも言わせて貰おうか。俺達は人殺しは最小限に抑えている」

「は??」


思っていたことを言い当てられ間抜けな返事を返した。朱雀は”そんな顔してた”といって苦笑いを零した。


「俺達はマフィアと一括りにして同一化しているが、我がミリナードファミリーは警察と政府と結託しているんだ。主な仕事はマフィアの統括と違反ファミリーの通報。簡単に言うとマフィアを取り締まるマフィアをやってるっぽいよ」


っぽいって・・・なんて、適当なんだ。


「だから、銃も護身用ってだけであまり撃たない。撃たせない、っていうのが正しいかな。それに特訓って言っても、護身術と射撃訓練だよ。当たり前だけど本当に人を撃つわけじゃないしね?」


だから・・・協力してもらえないかな??


最後にそういって、彼は笑った。




なぜ貴方は、そうやって悲しそうな顔で笑うんだ。

貴方と・・・あの人が重なって、溶け合ってしまうじゃないか。


お願いだから、そんな顔して笑わないでくれ。





「・・・返事などいらない。行くぞ」


狂気に飲み込まれそうになった俺を引き戻したのは、あれほど恐怖を与えていた零夜の冷たい声だった。






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