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NO 2.


...2009/5/10/18:48






見たことのないはずの一面の白に見覚えがある気がするのは何故だろうか。

遠い遠い昔の記憶にぼうっとこの壁を見詰めていたような・・・。


そんな気がするのは、何故だろう。







男はあの白い扉を開けた。振り返り顎で促していく零夜に、俺は黙って着いて行くしかなかった。むかっ腹はたつがいちいち抵抗していたら・・・殺される。この冷たい目に。

出たのは部屋よりも一段暗い通路。勿論というべきかそこも真っ白だった。まるで映画で見る隔離病棟のような不気味な雰囲気にまたもや怖気が走る。そんな俺を一瞥し、零夜は少し長い赤い髪を揺らしながら早足で歩いていく。


―――にしても、この男・・・。


俺は彼の後をのそのそと着いて行きながら考えた。


俺達をどうするつもりなんだ。双子はともかく、別に俺を拉致しても身代金なんかもらえないだろう。先ほどのこの男の言い方だと、まるで俺が目的のようだった。棗と花梨は俺を脅す道具のような・・・無機質な言い分だった。俺の勘違いか?


しかしヘタレな俺はそのことを聞く勇気は無く、無言で暗い通路を歩く。


二人分の足音しか響かない廊下。この場所自体が俺を拒否してるみたいなオーラが出ていて、パニック状態が続く。ああ、足がまた震えてきた。


「入れ」


拷問かと錯覚するような長い沈黙の後、突然零夜が扉をあけて中に入るように促す。

頷いて従おうとするものも、足が竦んでなかなか動かない。零夜はそんな俺を鼻で笑うと、背中を押して中へ押し込んだ。



「・・・棗、花梨・・・っ」

「「隆哉!!!」」


ああ、さすが双子だ・・・。

こんな時でもぴったりハモった二つの声。


竜道 棗、そして竜道 花梨。俺の親友達。

おそらく・・・俺が巻き込んでしまった、大切な二人。


どこか申し訳なくて入ったそこから一歩も動けないで居ると、焦れた双子は二人して俺に飛びついてきた。棗か花梨かわからないが、どちらかの腕が俺の首に当たりラリアットのようにぶっ飛ばされてしまった。


「ぐえっ」

「うわっひでぇ、隆哉!」

「・・・俺、なんもしてねえのに・・・ッ・・・」


・・・棗、お前だな。俺の耳にはしっかりお前の笑い声が聞こえたぞ!!

痛い喉を押さえて棗を睨む。棗は声は悲しそうだが目は笑っていた。てめぇいつかゼッテェ同じ目にあわせてやるからな!


二人は微笑んだ。花梨は少し不安そうな目だった。


「お前等。来い。」


少し和んだ空気に北風のように冷たい声が掠めた。風上に目を向けると零夜が奥の扉を開けていた。勿論・・・さっきまでそんなものはなかった。


目配せをしあった俺達はゆっくりとその扉と零夜のもとへ行った。



またあの暗い通路を歩く。違うのは足音の数。複雑に入り組んでいるらしい通路は、同じような風景を右へ左へとくねくね進む。歩いてるだけで酔っちまいそう、ぅぇ・・・。


「・・・な、なあ」

「なんだ。」


意を決して話しかけた俺だが、喉から漏れたのは怯えてつっかえた声で・・・ああ俺ホント情けねぇ。横を歩く二人はじっと俺を見詰め、零夜は前を向いて歩いたまま気のない返事だけ返した。


「俺達は一体どうなるんだ?」

「それは俺ではなく、これから会うお方に聞け。」


単調に答えると零夜は突然止まった。そんな彼の真後ろを着いていた花梨は零夜にモロに鼻からぶつかった。“うわぁ!”と小さく悲鳴を上げて花梨は泣きそうな目をした。いや、むしろ半泣きだ。


着いたぞ・・・。


零夜はそう呟いて扉を開けた。






その部屋は最早当然というべきか、本当に白かった。何処を見ても真っ白で机も椅子も・・・何もかもが白かった。雪のような淡い色彩ではなく人口の白に目が眩む。


ただ、一つだけ白くない物。

爽やかな茶髪の男が笑っていた。


「ようこそ。我がファミリーへ」


・・・ファミリー・・・?

ファミリーって・・・【family】だよな。家族・・・族・・・郡・・・??


・・・はあ??


俺が混乱して目が回っていると棗がよろめきながら一歩前に出た。


「あの・・・俺達、なんでここにいるんですか??ここは何処なんですか??」


さすが棗だ。目が泳いでいるが核心をしっかりと口にした。

そんな彼を馬鹿にするわけでも怒るわけでもなく、茶髪の男はさも愉快そうに笑い飛ばした。俺達は男の突然すぎる行動に思考が着いていかず眉根を寄せた。

漸く落ち着いたらしい男はそれでも尚クスクスと笑いながら零夜を軽く叱った。


「零夜、俺の指示にはキチンと従えよ。」

「・・・は。しかし此処まで連れてくるという指示にはしっかりと従ったはずでは。」

「ばーか!プラス状況を掴ませておけ、だろ」


“そんなこと仰ってませんでした”という声は少し不機嫌になった男の声に掻き消された。


「すまなかった。いあーやっぱり何にも聞いていなかったのかっ!どうりで怯えているわけだ。まあ、一つずつ話そうか。取り合えず・・・



 ね、花梨君。銃を降ろそうね?」


男の一言に花梨を振り向くと、彼はがたがたと震えて・・・その手には銃が握られていた。銃口は椅子に座る男に向けられて。



泪を流して見開いたその目は、真っ黒な恐怖に染まっていた。













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