7話
突如壇上で倒れたフェルド。それを認めた村の人々は投票を忘れて彼に釘付けになった。
「なんだ?何してんだよアイツ」
「さぁ?あんまり票が入らないんで、つい失神しちまったんじゃないのか?」
ドッと笑いが巻き起こり、人々は「やっぱり次の村長はハルツで決まりだな」と言い合った。
そんな中、フェルドの妹であるイリルと幼馴染のレリンが、彼の倒れた壇上へ駆け上がった。
「お兄ちゃんしっかりして!!」
「フェルド大丈夫っ!?」
彼女らがフェルドに声を掛けてから数秒後、フェルドは何ごともなかったかのように涼しい顔で立ち上がった。
「大丈夫だ二人とも。それと今は投票中だ。邪魔だから退いてくれ」
「お、お兄ちゃん……?」
「勝手に心配しちゃったみたいでゴメンね……?」
イリルとレリンは、以前と違って毅然とした態度の彼に戸惑いながらも壇上から降りた。
フェルドはそれを確認してから息を大きく吸って吐き出した。集会場に立ち尽くし、自身に向けられた嘲笑を真正面から受け止める。
「一つお前らに話しておくことがある。悪いことは言わねぇ。ハルツに票を入れるのは止めておけ」
今まで押し黙っていたフェルドがここへ来て初めて演説を仕掛けて来た。
ハルツは目を見開いて彼を凝視する。が、すぐに気を取り直してあの薄笑いを作った。
「へぇ?俺に票を入れちゃいけないって理由はなんなのさ?言ってみろよ」
ハルツの挑発に便乗した村人も口々に騒ぎ出す。
「そうだそうだ!言ってみろ!」
「今更負け惜しみすんなよ!」
「もう諦めた方が良いんじゃないのかっ?」
そうやって笑い飛ばす村人に対して、フェルドは大きな声で怒鳴った。
「話は黙って聴け愚か者共!!オレが今から話すことを聞き逃すんじゃねぇぞ!」
相手を見るだけで殺してしまいそうな鋭い眼光で睨むフェルド。彼に一瞥された村人たちはその迫力にひどく驚いた。集会場は辺り一面静まり返る。
隣の壇上に立つハルツも怖気づいて言葉を発せなくなった。
フェルドはようやく話を聞く姿勢をとった一同に満足して頷いた。
彼は壇上のハルツに薄笑いを返してこう言った。
「ようし。じゃあ話すとしようか。このウルクルフに潜んでいる「裏切り者」の正体について、な?」
時間を少し巻き戻そう。フェルドが帝国兵士の死体を始めて目にしたところからだ。
「誰に殺されたかだって……?フェルド!お前、自分のやらかしたことを忘れたっていうのかっ!?」
「え……?」
ハルツに胸倉を掴まれたフェルドは、困惑して瞳を激しく揺らした。
(俺がやらかしたこと?ハルツさんは何が言いたいんだ……?)
帝国兵士の死体から目を背け、目をぎゅっと閉じる。
すると、ハルツは胸倉をつかむ手に力を込めて言い放った。
「こいつらを殺したのは、フェルド!お前なんだぞっ!」
「は……?」
フェルドは、なんとか笑顔を作って見せようとしたものの、その顔は完全に氷のように固まって動かなかった。
そして周りの村人たちの顔を見てようやく理解した。兵士らを殺したのは俺なんだと。
現実から逃れようと頭を掻き毟るフェルドを慰めるように、ハルツが彼の肩に手を置いた。
「やってしまったことはもう元には戻らない。この件は俺に任せろ。俺がお前を助けてやる」
「助けるってどうやって……。俺は村を窮地に追い込んだだけじゃないか。もう助からないよ」
「大丈夫だ。俺とお前が新たな村長候補として名乗りをあげる。お前は村の中で一番強い若者だからその資格がある。そして村長には俺がなろう。帝国に知り合いがいるからそいつに便宜を図れば何も問題はないさ」
「本当……ですか……?」
「ああ、もちろんだ。全て俺に任せろ。お前は黙って壇上に立っているだけで良い」
「わ、分かった……ハルツさんに全部任せるよ……」
壇上でフェルドが薄笑いを向けた相手はハルツだった。
「そう、裏切り者はてめえだよハルツさん」
村人の視線が一挙にハルツへ振り向いたーー
うん。まぁ、ざっくりこんな感じですかね……雑ですけど、これもエタらないためなんだと思って下さいっ!( ̄^ ̄)ゞ