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6話

 村中の人々が投票の熱気で支配されていた。


 ここウルクルフでは、新たな村長を決めるとき、珍しいことに世襲制ではなく村人の投票によって決められる。


 新たな村長になれる資格がるのは、その時に村の中で一番武力の高い若い男子や発言力がある若い男子に限られている。


 つまり帝国兵士を瞬殺したフェルドは前者にあたり、冷静で物事を的確に指示することが出来るハルツは後者にあたる。


 だが、フェルド自身は未だに自分が何十人もの人を殺したことを実感していなかった。


(どうしよう!どうしよう!どうしよう!)


 同じく壇上に上がっている隣のハルツの持つ箱にドンドン票が流れていくのを黙って見ているだけだった。


 ハルツは自慢の口で演説を繰り広げている。


「実はオレには帝国人の中に知り合いがいる。名前は言えないが、かなりの力を持った人物だ。オレが新たな村長になれば今回の事件は必ずお咎めは受けないだろう!そう、この隣に立っている考えなしのフェルドの首を差し出す!村が救われる道はただそれだけなんだ!」


 ハルツはフェルドに向けて薄笑いを浮かべた。


 昨日まで厳しくも優しく接してしてくれていたハルツが、今ではフェルドのことを殺そうとしているのだ。


 ほとんど票が入らない自分の箱を呆然と眺める。


(な、なにが安心してオレに任せろだ……!初めから俺を殺すために候補者に仕立て上げたんじゃないかっ!)


 乱れに乱れた心中でキッとハルツを睨んでいると、またあの少年の声が聞こえて来た。


 〔いやー、まーた荒れてんなぁお前〕


(ーー!?き、キミはもう一人の俺!)


 〔ああそうさ。もう一人のお前だぜ?〕


(一体どうしてくれるんだ!キミの所為で俺は殺されそうになっているんだぞっ!?)


 〔知ってるって。だからまた助けに来たわけじゃん?〕


(もうなにもしないでくれ!キミがなにかすると今より酷くなりそうだ!)


 〔おいおいおい。今より酷い事ってなんなんだよ?お前、自分が死ぬより最悪な事ってあると思ってんのか?死んだらそれで終わりなんだぜ?まぁ……そうでないこともあるにはあるが……例外中の例外だろうな〕


(だから訳のわからない話をするな!それに、なんであんな勝手なことをしでかしたんだよ!?全部キミの所為じゃないか!)


 〔うん?勝手なこと……?はてさてなんのことやら?〕


 おどけた調子の少年の声に、フェルドは思わず叫んでしまいそうになったのを堪えた。


(ふざけるなっ!帝国の兵士を皆殺しにした事だろっ!)


 〔ええー?そんなこと言われましてもねー?ーーだって、あの何とかちゃん助けたかったんだろ?オレはあの子や村人を助けてやったんだぜ?文句言うなよ〕


(俺は彼らを殺せなんて一言も言っていないぞ!!)


 〔呑気な頭だな。言っておくが、奴らを殺さなかったら全員助かっていなかったぞ。それに、もし数人でも逃していればこの事が帝国知らされ反乱分子とみなさる。3日以内には近場の砦から兵士が攻め寄せてくる事になるだろう。オレは情報を漏えいさせない為に殺しただけだ。これだけで一週間の猶予が出来る〕


(そ、そんなこと、分からないじゃないか!あの時必死に頭を下げていれば助かっていたかもしれないだろう!?)


 〔笑わせるな。んなもん隊長の眼を見れば一目で分かる。ありゃあひ弱な子鹿を狩る時の眼だ。いたぶって、いたぶって、いたぶり倒して、充分に遊んでから殺すのさ。所詮亜人は人間にとっちゃおもちゃにしか見えてねぇんだよ〕


(確証もない事を言うな!キミは俺なんだろ!?そんなこと分かるはずないじゃないか!)


 〔あぁ〜……面倒くせ。んなことどうでも良いんだよ。同業者は見た感じで分かんだよ!ーーって、とにかく!オレだってここで死ぬわけには行かねぇんだ!さっさと身体をオレに預けろや!〕


(嫌だ!もうこれ以上俺を苦しめないでくれっ!!)


 そう心の中で叫ぶと、急に頭を何かで締め付けられているかのような痛みがフェルドを襲った。


「あ……あ……っ!?」


 〔だから早くオレに任せろつったのに……ま、仕方ねえ。いま楽にしてやるよ……〕


(な……なにを……っ!?)


 〔なに、ちょっと緊急システムが作動しただけだ〕


(また適当なことを言って誤魔かーー)


 フェルドは激しいめまいに襲われて、その場で突っ伏してしまった。

あれ?まだ説明不足?


前回の文を改編しておきます

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