7話
母上様と別れてからずっと馬を走らせる。
途中で馬を休ませながら、ひたすらルーベンス国やバーレンシア国から遠ざかるように、真っ直ぐ走り続ける。
走り続けている間はルーベンス国がどうなったかなど色々なことを考えずにすむほど、強行な旅だった。
朝になり、昼になり、夜が近付いた頃、1つの街が見えた。
どうやら観光客が多い街のようで、今日と明日はこの街に留まり、行き先や物資の調達を行うことにする。
身分を隠すために中ランクの宿に入り、大部屋を1部屋借りる。
大部屋は4つベッドがあり、トイレ・バスもついていた。
約1日馬を走らせ続けたため、汗がベタついている。
交代でシャワーに入ることになり、私はシャナリーゼと一緒に1番に入る。
その間にジオルドはこの街について女将さんに聞きに、ルイは私の服などの用意や今ある物資の確認を行う。
20時頃、全員がシャワーを浴び終わり、これからどうするのかを夕食を取りながら話し合う。
「この街は近くに絶対の海と深淵の森があるため、力自慢の者が腕試しに向かう前に立ち寄る、冒険者や旅人が多い街のようです。旅をするための物資は十分集まりそうですね」
ジオルドが収集した情報を公開する。
「この街には国を追われた無法者、賞金首等が多く集まっているようです。もし追っ手が来ても、気付かれずに街から出る方法はいくらでもあります」
ちょっと怖いことをシャナリーゼが言う。
「1日2日ぐらいはゆっくり出来そうですね」
ほっとしながらルイが言う。
私は馬に乗っているときから少しずつ思っていたことを思いきって聞いてみることにした。
「3にんはほんとうにいいのですか?わたしとともにいればずっとおわれつづけるかもしれません。ずっとたびをしなければいけないかもしれません。ほんとうにわたしといっしょにいてくれるのですか?」
最後は恐くなって俯きながら、思いを吐き出す。
しばらく誰も何も言わなかったが、最初に応えてくれたのはシャナリーゼだった。
「お側に居させてください。貴女様に出逢えたことは私の人生で1番の幸せです。貴女様に出逢えたから今の私がいます。これから先もずっとお側に居させてください」
「私もお側に居させてください。王妃様が仰っていたように、貴女様は月の光です。私を暗闇しかない場所から進むべき道を光で照らして下さいました。どうかお側に居させてください」
「私からもお願いいたします。お側に居させてください。私も貴女様に救われた者です。貴女様は覚えていなくても私達は3人とも貴女様に救われ、お側にいることさえできれば他に何も望みません。どうかお願いします」
シャナリーゼに続くようにジオルド、ルイの順に応えてくれた。
3人とも泣きそうな顔でそういった後、頭を下げている。
3人の言葉を聞き、渇れたと思うほど泣いたのにまた涙が出てきた。
「ありがどう、ござい、まず。ごれがら、も、ぞばに、いで、ぐだざい」
そう言うのが精一杯だった。
頭を上げた3人に慰められるが、安堵からか、落ち着くのに時間がかかった。
落ち着いた頃に考えていたことを提案する。
「しんえんのもりにすめないでしょうか?しんえんのもりにはめったにひとははいりません。つまりおってもこない。まものがいきているということはたべられるしょくぶつがあるということです。それにしんえんのもりとぜったいのうみはりんせつしています。さかなもたべれます。すめれば、わたしたちにはさいこうのかんきょうです!」
というと、
「確かに最高の環境です。しかし、魔物が強すぎるので安全を確保するのが難しいのですよ?」
「しばらくはわたしがかいはつしたテントにすんで、いえをたてるばしょをみさだめれればとおもっています。あと、まものよけのけっかいせきをもっているので、つかえないかとおもっているのですが、やはりむぼうでしょうか?」
ルイが危険だと、反対する。
対応策を出してみると
「可能かもしれません。この街にも結界石は手に入りますし、テントがあれば家がなくても暫くは大丈夫でしょう。それに私とシャナリーゼはかなり強いですから、ある程度の魔物は狩れます」
と自信満々に言う。
シャナリーゼも自信満々に頷いている。
私は思わずルイと目を合わせ、色々聞きたいこともあったが横に置いておいた。
「ではしんえんのもりにいくということで、きまりですね。あすはぶっしのちょうたつにいきましょう」
目標が決まり、お腹も一杯になり、不安が解消されたからか、一気に眠気が襲ってきた。
3人とも気づいたのか、寝支度を始める。
何とか歯を磨き、意識を手放した。
疲れが溜まっていたのか10時頃に目が覚めた。
部屋にいたシャナリーゼが身支度をしてくれ、軽めの朝食を取っているとジオルドとルイが部屋に帰ってきた。
「おはよう。おかえりなさい」
2人に挨拶をすると
「「おはようございます。ただ今戻りました」」
と微笑みながら挨拶を返してくれた。
ほっこりしていると、
「レイラ様、今日はどうされますか?お部屋でもう少しゆっくり過ごされますか?それとも外に出ますか?」
とジオルドに問われる。
「かいたいものがあるので、そとにでます」
「買いたいものですか?」
「はい。わたしせんようのぶきがほしいのです。しんえんのもりにいくのであれば、わたしもたたかうちからがひつようになります。もしも3にんとはぐれたとしてもごしんようにもっておいたほうがいいとおもいました。ダメでしょうか?」
通常であれば4歳児が武器を持つことは反対されるだろう。
私も城にいるときは、持つことはおろか触ることすら許されなかった。
しかし状況が状況だ。
持っていた方が今後のためにも良い。
でも持たせたくない。
3人ともそんな複雑な顔をして葛藤している。
3人で1度目を合わせた後、ため息をついて
「本当は危険なので反対したいですが、今後お持ちいただく方が安全でしょう。後程全員で武器屋に買いに行きましょう」
と渋々ジオルドが許可を出してくれた。
賛成してもらえた安堵からか、肩の力が抜け緊張がほぐれた。
母上様、私は頑張って生き続けます。いつか貴女方のもとに行くときに沢山の土産話を聞かせられるようにします。だから見守っていてください。