34話
昨日の夜、街に行く人を募集したらシラーとティナが立候補したらしい。
その為レフィーリア、ウォルド、シラー、ティナの4人が街に買い物に行った。
私を含めて残ったメンバーは午前中は特訓したり、畑仕事したりとそれぞれのいつも通りの行動をしていた。
午後は私はガーディの製作、隣の実験室には1人ずつ交代で銃の試し撃ちをしている。
試し撃ちの後、ガーディの原動力になる核にする魔力石に魔力を覚えさせるため、魔力を込めて貰う。
私、ジオルド、ルイ、ソウマ、ライゼン、タマキの分のガーディが出来た時、シャナリーゼはカインの試し撃ちを見ていた。
2人の様子を見てさらにシャナリーゼに感じていた違和感をいっそう強く感じる。
2人が実験室から出てきたので、シャナリーゼとカインにも魔力石に魔力を込めて貰う。
終わった後、3人でお茶する。
その時の雰囲気はとても重たかった。
シャナリーゼはウォルドといるときと表情が全然違う。
とても怖い。
私は早急にお茶を飲み、シャナリーゼとカインのガーディを作り始める。
作りながら、シャナリーゼ以外の女性陣とカインで話し合いをしようと計画する。
タマキと伝話ですぐに計画をたて、ルイに伝言をお願いする。
レフィーリアとティナは帰って来たら伝話しようと思う。
買い物に行っている4人のガーディも後は魔力石を嵌め込むだけの状態にして、振り向くとカインはすでに部屋を出ていっていた。
私もシャナリーゼに手伝ってもらったお礼を言い、研究室を出る。
それからタマキとルイにカインを探してもらい、リビングに連れてきて貰うようお願いする。
ここに住む者以外は私の部屋に入れないようにと言われているのだ。
応接室を作ればよかった。
いや、2階の空き部屋を裁縫室にして1階の裁縫室を応接室にしようか。
と計画しているとき、買い物組が帰ってきた。
なのでレフィーリアとティナに伝話で今からカインと話をする計画を伝え、リビングに来て欲しいとお願いする。
2人も思っていたことがあるようで、リビングに来てくれた。
そしてタマキとルイがカインを連れてきたので、話し合いの開始だ。
ちなみにリビングに誰も来ないようにライゼンが見張り役を買って出てくれた。
いきなり呼び出されたカインは少し怯えながらこちらの様子を伺っている。
「さてここにいるぜんいんがあなたにききたいこと、いいたいことがあるので、あつまっていただきました。まずはルイからどうぞ」
私は最後に話すので、この中では1番付き合いの長いルイから始める。
「では、まずお伺いしますが、シャナリーゼとどのような経緯で婚約まで進めたのですか?」
「私はずっとアプローチしていたのだが相手にされなくて、本気で告白したら、好きな人がいると言われて振られた。だが私に甘い両親がシャナリーゼの家に内緒で婚約をするよう圧力をかけたらしい。私の家のほうがシャナリーゼの家よりも爵位が上だったから断れなかったと言っていた。私は無理矢理でもシャナリーゼと結婚でき、傍に居られるだけで幸せだったから、両親に感謝した。だがシャナリーゼはその日から私に笑いかけることも話しかけることもなくなり、私には必要最低限しか関わらなくなった」
という話を聞き、やっぱりと納得した。
シャナリーゼのカインへの態度には一切好意が見られない。
好きな人がいるのに違う相手と無理矢理婚約させられ、結婚しようとしていたのだから。
だが、だったらなぜシャナリーゼは婚約破棄の後、泣いていたのだろうか?
普通は婚約破棄を喜んだり、結婚しなくていいということに安堵するのではないだろうか?
「そして媚薬を盛られたあの出来事が起きた。パーティーの翌朝に目が覚めた私は隣で寝ていた女に見向きもせず、シャナリーゼの部屋まで行ったがシャナリーゼはすでに側仕えの仕事をしていたので、部屋にいなかった。私は城で留学からの帰国のための書類を整理した後、再度シャナリーゼの部屋で彼女を待っていた。だがシャナリーゼが帰ってくる前にあの女が私に抱きついてきた。運悪く其処もシャナリーゼに見られたが彼女は気にせず、部屋に入った。私はその時やっと気づいた。シャナリーゼは私のことなどどうでもいいのだと。誰と何をしようが気にしないのだと。カッとなってシャナリーゼの部屋に押し入り、無理矢理彼女を………」
途中でタマキに耳を塞がれたので、話は聞こえなかったが、直前の話の内容からシャナリーゼはカインにレイプされたのだろう。
だから泣いていたのだと辻褄が合い、カインに怒りが込み上げる。
ルイ、タマキ、レフィーリア、ティナの顔にも怒りが見える。
4人の怒った顔はとても迫力があり、話終えたカインは縮こまっている。
「初めてこの屋敷に来たとき、シャナリーゼの部屋にいましたよね?大声が聞こえましたわ。あの時は何を話していたのですか?そんなことをされたシャナリーゼが貴方を部屋に入れるとは思いませんが」
タマキが問う。
「…えっとですね、また無理矢理押し入りました。あの日以来初めて会ったので、ちゃんと謝りたくて。あとまだシャナリーゼを愛していると伝えました。でも彼女は私を拒絶しました。またカッとなってしまい…」
4人の迫力に敬語で吃りながら答えるが、内容に唖然としてしまう。
こんなに酷いことをしておいて、愛している?
ふざけるな!!!
愛していたら相手に何をしてもいいのか!?
許されると思っているのか!?
カインのあまりにも身勝手で自己中心的な考えに、腹が立った。
だがカインだけではなく、私自身にも腹が立った。
毎日一緒にいて、全然シャナリーゼの嘆きに気づかなかった。
不甲斐ない自分にも腹が立った。
怒り、悔しさ、悲しさなどさまざまな感情を処理できず涙が溢れる。
それに気づいたタマキが私を自分の膝に乗せて抱き締めてくれる。
私はタマキの胸に顔を埋めて、気持ちを落ち着かせる。
落ち着かせてる間にレフィーリアがカインに渡していた銃を奪い取る。
「悪いが私はお前を仲間として受け入れたくない。シャナリーゼは私の親友だ。あいつはとても強い。おそらく国が滅ぼされたからずっとレイラ様のことだけを考えて生きているんだ。だが、弱いところもある。お前はあいつが泣いている所を見たことがあるか!?1人では泣けないのに、人前でも泣けない。そんなあいつがどうやったら泣けるのか知っているのか!?あいつが弱さも見せられないような奴を信用できないし、したくない」
レフィーリアは感情にままに言葉をぶつける。
シャナリーゼは誰か1人信頼と信用できる人の傍でないと泣くことができない。
2人以上いると決して泣かない。
誰かが泣いていても泣かない。
国が滅んだときも4人でいるときは泣いていなかったが、レフィーリアと同室になったときには泣けたのだろう。
これは城にいた頃からのことで、ジオルド、ルイも勿論私も知っている。
おそらくはタマキ、ティナも知っているし、ライゼンもタマキから聞いていると思う。
他にもシャナリーゼが信用した者にだけする行動があるが、カインにはしていない。
シャナリーゼやルイは女官や侍女だったので、武器はスカートの中に分かりにくいようにポケットがあり、其処に隠されている。
シャナリーゼは信用していない者が同じ空間にいると無意識に武器がすぐに構えられるように手がそのポケットの近くに固定されるのだ。
思えば最初からシャナリーゼはカインを警戒していた。
私はカインとウォルドが国を売ったからだと思っていたが、ウォルドにはすぐに警戒を解いていた。
常にカインに警戒していたし、怯えていたのだろう。
私はカインをここに迎え入れたくないと強く思った。
「だが私はシャナリーゼに許してもらってここでレイラ様に仕えたいのだ!後でもう一度シャナリーゼに謝罪にし、許して貰うからここにいさせてほしい!」
カインが身勝手極まりないことを言う
誰もがその発言にカインを怒鳴ろうとした。
その時、リビングの扉がすごい勢いで開いた。
全員でそちらを見ると泣きそうな顔で震えているシャナリーゼとそれを支えている怒った表情のウォルドがいた。
ライゼンに伝話すると、シャナリーゼの願いでソウマとシラーと3人でダイニングルームで夕食の用意をしているらしい。
伝話しながら、私は泣きながらシャナリーゼのもとに向かう。
シャナリーゼが膝を折って腕を広げて私を受け入れてくれた。
「シャナリーゼ、ごめんなざい!シャナリーゼのぢがらになりだぐで、カインにいろいろぎぎました。ぎづいであげられなぐで、ごめんなざいぃ」
と泣きながら必死にそう言って、強く抱きつく。
シャナリーゼは泣きそうに目に涙を溜めながら私を強く抱き締める。
タマキに促され、私とシャナリーゼは私の部屋に行く。
リビングを出る間際、カインを殴るウォルドを見た。
私の部屋に入り、シャナリーゼと私は2人で泣いた。
2人で泣くのは初めてだった。
私はシャナリーゼにごめんなさい、シャナリーゼは私にもういいんです、大丈夫です、ありがとうございますと泣きながらお互いに言い続けた。
しばらくして泣き止み、部屋のソファーに座っていると、部屋にタマキとレフィーリアが来た。
2人は濡れたタオルや夕食を持ってきてくれた。
夕食は4人分あり、疑問に思っていると私、シャナリーゼ、レフィーリア、タマキの4人分ということだ。
護衛とカインをどうするか、さっきはどうなったのかを話し合うために部屋に来てくれたらしい。
2人に感謝し、私はタマキにまず顔を拭かれた。
シャナリーゼはレフィーリアに抱きつき再度泣いていた。
珍しいと思う心と、ホッとしたのだろうと安堵する心とでタマキに感情のまま抱きついた。
シャナリーゼが2人以上の人がいても泣くことができるほど、安心できる場所が出来てよかったと、心底思った。




