15話
城を出てから1週間。
今日は6月13日。
この世界は人族の暦を使って1年と計算している。
私の国は四季があって、日本の北海道と同じような気候だった。
日本よりも湿気は少なかったが。
深淵の森と絶対の海に挟まれたこの場所は湿気は多いが木が温度を下げているようで、6月なのに涼しい。
魔族は15歳までは人族の10年で1歳年を取る。
誕生日も毎年祝うが、10年に1回、年を取る時だけプレゼントを贈る。
ちなみに私の誕生日は11月15日なのだが、4歳になってから1年ちょっとしかたっていない。
魔族に生まれて私の時間の感覚は完全に麻痺している。
1年半がちょっとの感覚になっているのだ。
ちょっと感傷的になったが、気を取り直します。
つまり前世を思い出してから既に11年は経っている。
私はこの11年、いろいろなことを経験した。
魔法道具もいろいろ作った。
家族と楽しい思いでもたくさんある。
こちらの音楽を学んだり、前世好きだった歌を歌ったりもした。
いろいろ経験していても、どうしたらいいのかわからないときはあると今、実感している。
昨日は夕食を食べたあと、今日からいろいろ開拓するために何を作るか、何がほしいかを話し合った。
・家(全員の個室、魔法の研究室、図書室、食料の貯蔵庫、LDK、バス・トイレ、武器庫、物置あり)
・馬小屋
・畑と庭
・池(魚の養殖用)
の4つが必要だという結論に至った。
その為に何をするか、何から始めるかを今日の午前中に話し合った。
まずは馬小屋を建てる。
私達にはテントがあるため家は後でもいいが、馬は野ざらしだ。
その為先に馬小屋を建てる。
ジオルドが森にはいる前の街で建築魔法の本を購入していたため、材料が集まればすぐにできそうだ。
次に畑と庭。
早くに作って、種を植えておいたら家を建てた後にすぐに利用できるからという理由だ。
次に家。
テントがあるため、急ぐ必要はない。
最後に池。
一応魚は海で釣れるので、急ぐ必要はないという理由だ。
この優先順位で作ることになった。
森に断って、木を必要な土地分伐採していく。
その木を利用し、ジオルドが馬小屋を建てる。
ジオルドの本を貸してもらい、私が建てたいものの建築魔法を確認する。
私は必要な土地の周囲に木を利用した柵を建てるのだ。
建てた後に柵の上に結界石を嵌めていく。
柵の上一部に結界石を嵌めて無くさないように、なくしてもすぐに気づくようにした。
みんなが褒めてくれて、大満足だ。
シャナリーゼとルイは畑を作り、地を掘っている。
レフィーリアは屋敷を建てる用の土地を確保するため木を伐採している。
昨日までと違い、皆で話しながら作業していたので、あっという間にお昼になった。
昼食を食べ終わったとき、それは起こった。
近くで戦闘の気配がしたのだ。
それまでの和やかな雰囲気から一変し緊張が走る。
魔物の咆哮と人の怒声が聞こえるため、ジオルドとレフィーリアが様子を見に行く。
2人は買い物に行ってくるような雰囲気で「行ってきます」と言って結界の外に出ていった。
《もしけがにんがいたらつれてかえってきてくださいね》
とレフィーリアに伝えたため、誰かを連れて帰ってくるかもしれないと思い、ルイに水や治療道具を持ってくるように指示する。
しばらくすると戦闘が終わったようで辺りに静寂が戻る。
ほっとし、2人が帰ってくるのを待つ。
2人は怪我人を連れて帰ってきた。
男女2人ずつの和服の集団だった。
私は自己紹介をする。
4人はライゼン、タマキ、ソウマ、カガリと名乗った。
ライゼンは鬼族。
髪は長い白髪で目は赤のアルビノみたいな色合いのワイルドイケメン。
ここにいる人の中で1番背が高くてガッチリしている。
タマキは妖孤族。
長いストレートの綺麗な銀色の髪にうすい青色の目の妖艶なスタイル抜群の美女。
ソウマは天狗族。
ショートヘアの茶髪に緑の目の普通の鼻のイケメン。
鼻が長いイメージだが天狗族は鼻の長いお面をかぶってじゃないと術を使えないため、鼻の長い種族だと思われているらしい。
だから鼻は普通だと笑われながら言われた。
カガリは妖動族。
肩ぐらいまでの茶髪に茶色の目のかわいい系の美少女。
頭上にはうさ耳がついている。
妖動族は頭上に動物の耳がついている。
代表的なのはネコ耳、クマ耳、うさ耳だろう。
他にもいるらしいが、想像できない。
とにかくカガリはリアルバニーガールだ。
だがカガリは無表情か嫌悪の表情しか見せない。
タマキは妖孤族の光魔法が得意ということで、最初にタマキを治療し2人で皆の治療を行う。
そしてライゼンとタマキ、ソウマとカガリは夫婦らしい。
しかし大抵は他種族同士の結婚は反対されている。
寿命が違いすぎるからだ。
まあ鬼族と妖孤族の寿命は近いためたいして問題はないが、天狗族と妖動族の寿命は10倍近く違う。
妖動族の寿命は人族の次に短く100~150年。
天狗族は1200~1500年。
その為寿命が違いすぎる種族同士の結婚は反対されていることが多い。
双方の周りの反対が憂鬱になり駆け落ちしてきたらしい。
ライゼンとタマキは寿命は大丈夫だがお互いの親に身分、立場などで反対され、お互いに暗殺者を送り込んだりとドロドロ展開。
それでも別れなかった2人は勘当されて今に至るらしい。
魔族の国に行っても、契約されてしまったら一緒にいれるかわからない。
行く場所もなくこの森に来たらしい。
森に入ってすぐに4人は出会い、約1週間森をさ迷っていたらしい。
ルイに4人の昼食の準備をお願いし、ジオルドにこの場に日よけテントを用意してもらう。
一気に人が増えて、これからどうしようか。