14話
目を覚ますと、テントの私の部屋にいた。
家族の話をして泣いて、夕食を食べた後に今日の予定を再確認している途中で記憶がなくなっている。
泣いたことで体力を使ってしまったため、いつもより早く眠ってしまったらしい。
ベッドの上で反省していると、私を起こすためにシャナリーゼが部屋に入ってきた。
起きている私を見て少し驚いていたが
「おはようございます。ゆっくり休めましたか?」
と言ってくれたので、いつも通り挨拶をし身支度を手伝ってくれる。
「目が腫れていなくて良かったですね」
と言ってくれたので、頷いた。
「レフィーリアは目を冷やすよう言われていたのにどうやら忘れていたようで、目が腫れているのですよ」
と笑いながら教えてくれた。
シャナリーゼと共にリビングに向かっているとジオルドの笑い声とレフィーリアの怒った声が聞こえてくる。
何事かと思い、顔を出すとレフィーリアの目が想像以上に腫れていてビックリした。
私が固まっていると2人は挨拶してくれたが
「ほら見ろ。ルミエール様が固まってしまっただろう。だからルミエール様が起きる前に少し冷やせと言ったんだ」
「冷やしているのにお前がからかってくるから冷やせなかったんだ!」
と言い合いをしている。
「さっきからずっとこうなのですよ」
とキッチンから来たルイが挨拶の後にそう教えてくれる。
だがその表情は微笑ましいような、呆れたような、なんとも表現しにくい顔をしていた。
「2人ともいい加減になさいませ。朝食にしますわよ」
とシャナリーゼが言うと、2人も朝食の準備を始める。
私はレフィーリアが3人と仲良くなっていることを純粋に喜んだ。
ジオルドは特に警戒心が高い。
シャナリーゼとルイは警戒心を解くのに1ヶ月ぐらいかかったと、以前言っていた。
ジオルドは警戒している間、その人の前で感情を出すことはない。
ずっと微笑んでいて、表情を変えない。
なのに出会って3日で笑ったりからかっているなんて驚きだ。
今日は朝から驚くことばかりだと、朝食中に話す。
昨日と違って、今日は朝食中ずっと笑い声が絶えなかった。
今日は目的地まで進むと決めていたので、早々に出発した。
今日も私とルイが馬に乗り、レフィーリアとシャナリーゼが馬を牽いてくれて、ジオルドが先導して歩く。
道中は騒がず静かに進む為、森の動物の声や誰かの叫び声がよく聞こえる。
私は弱い。
助けたくても一人では助けられないし、4人を危険な目に遇わせたくない。
だから叫び声が聞こえても何も出来ず、放っておくしか出来ず、自分の無力さを実感する。
そんなわたしに気づいたレフィーリアが
《大丈夫ですか?》
と伝えてくれる。
私は思っていたことを伝えると
《全員を救おうと思っていては貴女の方が力尽きてしまいます。だから目の前にいる助けられる人を助けられるように強くなりましょう?貴女が貴女らしくいる為に私達4人はいるのですから》
と言ってくれる。
私はレフィーリアにお礼を言って微笑んだ。
この深淵の森には魔物だけではなく、動物も多く住んでいる。
その為全員無言でも、私は馬上から木上の鳥やリス、休憩中はウサギやシカ等の動物を観察して暇を潰している。
動物は観ていてとても癒される。
この森に住むのだから同じ住民として仲良くなりたいなと思う。
今日は魔物に襲われることなく、無事に目的地に着いた。
すぐにテントと結界石を設置し、近くの海をレフィーリアと見に行く。
森を抜けると目の前には神秘的な光景が広がっていた。
もう夕方の17時頃だからか、夕焼けが海に沈んでいくところで、いつもは青い海を赤く染め上げている。
前世も含めて初めて見る光景に目を奪われる。
しばらくその場で景色を眺めて、テントに戻る。
レフィーリアと興奮ぎみに3人にどれだけ素晴らしい景色だったのかが今日の夕食の話題だった。
明日からはここに家を建てたり、畑を作ったりと長く快適に過ごせるようにしようと思う。
現住民の動物には迷惑にならないように気をつけないと。