13話
契約後、目的地に向けて出発した。
私とルイが馬に乗り、私の乗った馬をレフィーリアが、ルイの乗った馬をシャナリーゼが牽き、ジオルドが先導して歩く。
昨日はまだ入り口近くだったので何回かに分けて術を使っていたが、今日からは道中ずっと術を発動させたまま進むことになったルイ。
休憩中は術を解いているが、疲労が見える。
ルイのためにも早く目的地に着きたい。
昨日と違い、今日の道中は想定の範囲内の出来事で終わった。
まあ魔物に2回襲われ初めて鉄扇を使ったりということはあったが。
今は2回目の戦闘後の休憩中だ。
「うみのちかくまであとどれくらいでしょうか?」
昨日よりも全員の疲弊が早いため、確認する。
「私が龍化して確認して来ましょうか?」
レフィーリアが言った。
確かに龍化すれば空を飛んで残りの距離を確認できる。
私はレフィーリアにお願いすることにした。
快く了承してくれたレフィーリアは龍化するために私達から距離をとる。
レフィーリアが目を閉じて、聞き取れない言葉を唱える。
するとレフィーリアが光ったので眩しくて目を閉じると光が収まったときには銀色の大きな龍がいた。
《驚きました?》
レフィーリアの笑いながらの声が頭に直接響くように聞こえる。
《おどろきました。とてもきれいですね》
レフィーリアの銀色の鱗が太陽の光を受けて、キラキラしている。
見惚れていると、
《ありがとうございます。取り敢えず行ってきます》
と照れたように言って、飛んでいった。
私が笑って見送ると、3人が不思議そうにしていた。
説明すると3人も笑う。
「意外とかわいい一面があるんですね」
「でしょう?昨日の夜も褒めたらすぐに照れて、ついからかってしまいましたわ」
「あらまあ。シャナリーゼに気に入られるなんて、私ももっと仲良くなって可愛らしい一面を見たいです」
と3人が言う。
3人と談笑しながら遅い昼食の準備をして、レフィーリアを待っていると
《ただいま戻りました》
と声がしたので上を向く。
レフィーリアが1度旋回してから降りてくる。
降りてくる途中で光ると着地するときには人化したレフィーリアがいた。
「ただいま戻りました。ここから目的地までは順調に行って5時間。魔物に襲われたらもう少し自覚かかりそうです」
「ありがとうございました。とりあえずちゅうしょくにしましょう」
昼食を全員で取りながら、レフィーリアの報告を聞きこれからどうするかを決める。
今日はここでテントを用意をすることにし、明日目的地に辿り着くようにする。
そこまで急いでいる訳ではないし、みんな疲弊しているしといろいろ理由がある。
とくに、この場所は近くに川がある。
川が近いと魔物が寄ってきそうだが、水を求めるものは疲弊し敵意が少ないものが多い。
ある意味ここは安全な場所らしい。
すぐにテントと結界石を用意し、設置する。
テントに入り、順番にお風呂に入る。
全員がお風呂に入り、リビングで談笑している。
私はこの暖かい雰囲気を壊すことになるが、レフィーリアに過去を伝えるのは今だと思っている。
なので勇気を出して、切り出した。
「レフィーリア。あなたはわたしをあるじにとえらんでくれました。しんようしてくれました。だからわたしもあなたをしんよう、しんらいしているあかしとしてかこをつたえたいとおもうのです。いまおもいうかべ、つたえてもいいですか?」
レフィーリアは覚悟を決めたように頷き、
「私は今とても嬉しいです。こんな短時間で信用してもらえるなんて。契約したと言っても、すぐには信用されないと思っていました。本当にありがとうございます。是非、教えてください」
と言ってくれた。
私は涙を堪えて頷き、さっそく大兄上様の結婚式から思い浮かべ、伝える。
家族全員の最後の言葉を思い出すと堪えていた涙が溢れ出たが気にせずレフィーリアと出会うまでを思い出す。
伝え終わり目を開くと隣にいたシャナリーゼが私の涙を拭いてくれていた。
お礼を言い、レフィーリアを見ると大泣きしながらルイに世話をされていた。
その状況に唖然としていると、シャナリーゼに抱き上げられ
「先に顔を洗いにいきましょう」
と言われたので、顔を洗って目を冷やす。
リビングに戻るとレフィーリアが先程よりも落ち着いていて、ほっとした。
全員でルイが入れ直してくれた紅茶を飲んで一息着く。
その後はレフィーリアに大変だったねとか、これからは私も守るからとか、言われたが1番嬉しかったのは素晴らしい家族だと、皆を褒めてくれた。
私また泣きそうになったが、レフィーリアにみんながどれだけ凄いか、そして大好きなのかを語った。
レフィーリアだけではなく、3人も誇らしげに私の話を聞いたり補足したりして、私は家族と離れて初めて皆を思って泣いた。
やっと泣けることが出来た。
年相応に泣く私を見て4人がほっとしていたということに私は気が付かなかった。
ちなみにレフィーリアが大泣きしているとき、ジオルドは爆笑していた。