12話
紅茶を飲んで、やっと落ち着いたのかレフィーリアが声をかけてきた。
「こんなに驚いたのは久しぶりだよ。そのネックレスにも驚いたが、このテントは本当に凄い。後で各部屋を見て周ってもいい?」
「いいですよ。シャナリーゼにあんないとつかいかたやちゅういじこうもあわせておねがいしましょう」
と言ってシャナリーゼを見ると頷いて了承してくれた。
3人はここでレフィーリアに自己紹介をし、みんなで雑談をして親睦を深めた。
龍族や妖孤族は他人の感情や行動に敏感で、嘘は通じないことで有名だ。
その為、嘘偽りなく話をする。
そのまま夕食をとり、順にお風呂に入る。
私はシャナリーゼと入った。
その後は部屋が4部屋しかないので、誰が相部屋になるかを決める。
すると、意気投合したのかシャナリーゼとレフィーリアが相部屋になることを提案してくれたので、すぐに明日の出発の時間や片付けの担当などを決め、それぞれの部屋に入る。
私は契約の証をどのようなものにするかをああでもない、こうでもないと試行錯誤しながら、デザインをした。
契約の証には主の名前を入れる。
なるべく分かりにくいようにしたい。
納得がいくものが出来、部屋に置いてあった大兄上様に貰ったくまのぬいぐるみに抱きついて眠った。
翌朝、ルイが起こしに来て身支度をしてくれる。
2人でリビングに入り挨拶した後全員で朝食を食べる。
その時に寝る前に考えた契約の証を発表する。
レフィーリアが気に入ってくれたので、朝食後に契約することにした。
契約の証は全体は薔薇の蔦と花びらで型どられ「LEILA」と名前が分かりにくく入った三日月に円の部分には薔薇の花。三日月の中の名前と蔦、花びらの部分は水色、周りの部分と薔薇の花は濃い蒼色。
薔薇の花は母上様がよく例えられていた花だ。
なので契約の証を見ると、母上様に見守られているような、一緒にいるような気分になるようにデザインした。
ルイとレフィーリアが朝食の片付けをしているときに、隣にいたジオルドに
「レフィーリアにわたしのほんみょうも、なにもかもすべてつたえますね」
と言った。
契約を交わした主従はイメージしたものを相手に伝えることが出来る。
つまり私が今までのことを思い返してレフィーリアに伝えたいと思ったら、伝えることが出来るのだ。
伝えたくないと思ったものは伝わらないということなので、プライバシーも守られる。
何人かと契約している場合は誰に伝えるかを思うだけで選別出来るらしい。
とても便利だ。
ジオルドは事情を知る者は少ない方がいいと反対したが
「うまくせつめいできないのですが、レフィーリアはわたしをあるじにえらんでくれました。わたしならいいという、ぜんぷくのしんらいだとかんじました。だからわたしもレフィーリアにぜんぷくのしんらいのあかしとしてじじょうをkはなしたいのです。そしてこんごレフィーリアいがいのかたとけいやくすることになっても、じじょうをはなそうとおもっています」
と今後どうしたいのかを伝える。
ジオルドは答える前にシャナリーゼが
「私は賛成です。契約した場合、主の不利になることは出来ません。それがなくてもレフィーリアは信頼できる者ですし、大丈夫だと思います」
と言ってくれたので、ジオルドは苦笑し、了承してくれた。
片付けが終わった2人がリビングに来たので、全員でテントから出る。
テントと結界石を収納ネックレスに入れた後、契約する準備をする。
その間にジオルドとルイが馬の用意をする。
シャナリーゼに確認して貰った後、レフィーリアに向き直る。
「ほんとうによいのですか?まだやめることができますが「私の主は貴女がいい」…わかりました」
最終確認をしていると、話を遮ってレフィーリアが意志を伝えてくれる。
わたしも覚悟を決め、契約の呪文を唱える。
唱えている最中にお互い指先をナイフで切り、唱え終わった瞬間にお互いの手から出ている血を舐める。
そして目を閉じてデザインした契約の証を思い浮かべると、左胸と鎖骨の間が一瞬熱くなる。
「お疲れ様です。無事、契約出来ましたよ」
とシャナリーゼが言う。
目を開けると、心底嬉しいという表情で左胸と鎖骨の間にある証を撫でているレフィーリアが目に入る。
私も自分の証を確認し、無事に契約出来たことに安心した。
「レフィーリア、わたしをあるじにえらんでくれてありがとうございます。まだまだみじゅくで、ふがいないあるじですが、これからよろしくおねがいします」
と言うと、涙目になりながら
「此方こそよろしくお願いいたします、ルミエール様」
とレフィーリアが微笑んで言った。