#9 気持ち
(好きだからね、か・・・)
だんだんと暑くなってきた日の午後。
祐菜は教科書を読む先生をじっとみつめる。
だが、先生の言葉など頭には入って来ていない。
湊の過去の話を聞いた時につい口から出た言葉。
――好きだからね!
どうしてついあんな言葉を言ってしまったのか。
そして、その言葉は友達として、なのかそれとも・・・
(わかんないよぉ・・・)
祐菜は髪の毛をくしゃくしゃと掻き乱した。
『柚ちゃん助けてくださいっ!』
学校が終わって寮に戻った祐菜はすぐに柚希の部屋に行った。
柚希は困った時の相談相手となってしまっている。
「あらユナちゃん♪最近良く来るねぇー」
ベッドに座ってコーヒーを飲んでいた柚希は楽しそうに祐菜に手招きした。
祐菜は柚希の隣に座るなり、柚希の方を向く。
『わかんないんですっ!』
「・・・?何が?」
笑顔のまま、柚希は首を傾げた。
『聞いたんです。湊君の過去のこと。・・・でも、何て言ったらいいかわかんなかった』
柚希は黙って何度も頷いている。
『しかも、私・・・自分の気持ちもわかんなくって』
「自分の気持ち・・・?」
柚希の問いに、祐菜はあの日の夜の事を思い出す。
『私・・・つい湊君に好きとか言っちゃったけど、友達としてなのか・・・それとも・・・』
そのまま黙りこんでしまった祐菜を見て、柚希は少しだけ笑った。
「そんなの私に相談してどうすんの!」
『ほえ?』
「ユナちゃんの気持ちを一番わかってるのは、ユナちゃんでしかないんだから!」
『うっ・・・・・・そっか』
今夜はまた、眠れない夜になりそうだ。