#6 過去?
"あんたが、俺を助けてよ"
湊の言葉が、頭から離れない。
祐菜はあの後、結局学校に戻った。
数日たった今も、その言葉が離れない。
『何か・・・あったのかな?過去に?』
祐菜は部屋のベッドで大の字になって考え込む。
「おい、祐菜?夕ご飯出来たってさ」
部屋のドアをノックする音と、輝の声がドアの向こうから聞こえた。
祐菜はドアを開けて、じっと輝を見つめる。
「・・・何?」
輝は不機嫌そうに祐菜を睨んだ。
『ねぇ、湊君って過去に何かあった?』
「湊?・・・さあね。知らない」
『・・・そっか』
祐菜が落ち込んだのを見て、輝はため息をついた。
「・・・あるとするなら、寮に来る前なんじゃないの?」
『寮に来る前?』
「湊、毎年夏休みも家に帰らないし」
『そうなの・・・?』
夕飯も食べ終え、祐菜は柚希の部屋の戸をノックした。
「はーい♪どうぞー」
中から柚希の元気な声が聞こえる。
祐菜はドアを開け、ベッドの上に座り込んでいる柚希の隣に座った。
「あら、珍しい。ユナちゃん♪」
『あの、えっと・・・』
「今日の夕飯どうだった?ご飯はいっつも葵が作ってるのよ♪」
『え?そうなんですか!?てっきり柚ちゃんが作ってるのかと・・・』
「私は料理なんか出来ないもん」
『ええ?!・・・って、そうじゃなくて!』
つい話し込んでしまった。
祐菜は急いで話題を帰る。
『湊君が寮に来た理由って知ってますか?』
「湊が寮に来た理由・・・?」
祐菜はあの日、湊に言われたことを柚希に話した。
それを聞いた柚希は、静かに微笑む。
「ふうん・・・。私、湊が寮に来た理由、知ってるわよ」
『え?あの、何でなんですか?』
柚希は、人指し指を立てて、口元にあてた。
「それは、湊君自身から聞いた方がいいと思うわ」
『・・・』
「多分、"寮に来た理由"ってのは湊が喧嘩をする理由に関わってると思う」
『じゃあ、それを知ってて何で喧嘩を止めてあげないんですか?』
「どう声をかけてあげたらいいのかわかんなくって」
『・・・?』
柚希の言っていることがよくわからない。
祐菜は、腑に落ちない面持ちで首を傾げた。