#5 サボり
『お天気お姉さんの嘘つき・・・』
祐菜は教室の窓から外を眺めて呟いた。
天気予報では晴れと言っていたはずなのに雨が降っているのだ。
一度ため息をつく。
『わっ、もうこんな時間?!』
次の時間の授業は調理室でなので祐菜は急いで教室を飛び出した。
『あれ・・・?』
廊下を見ると、調理室とは反対方向に歩いていく湊の姿があった。
『湊君っ・・・』
湊は祐菜の声に気付かず、そのまま歩いていった。
「どうせサボるんでしょ」
『ほえ?!』
突然の声に祐菜は思わず振り向く。
後ろに華蓮が立っていた。
「あんなのよくあること。放っときなよ」
『・・・』
華蓮はそのまま調理室に向かって歩き出す。
だが祐菜は、湊が行った方へと走った。
「ちょっと、祐菜?!」
『華蓮ちゃん、ごめん!先生に私は体調悪いって言っておいて!!』
勿論そんなのは嘘だ。
祐菜は急いで湊の背中を追いかけた。
「・・・・・・あんた、授業行かなくていいの?」
湊を追いかけてたどり着いたのは寮だった。
リビングで祐菜は湊にばれて現在に至る。
『だって、湊君が・・・』
その後、しばらくお互い何も言わず、静かな時間が過ぎる。
『ねぇ・・・湊君・・・。何で喧嘩しちゃうの?』
一生懸命に話題を考えた結果、これだった。
少し間違えたかもしれないが、これしかなかった。
湊は何も言わず、リビングの椅子に座り、頬杖をつく。
『だめだよ・・・喧嘩なんかしちゃ・・・』
「・・・知らない」
湊は目も合わさずに、答えた。
『え?』
「・・・理由なんて、俺もわかんない」
『理由がわかんないなんてそんな・・・』
「・・・じゃあ、助けてよ」
湊は、顔を上げた。
こうやってまっすぐに湊を見るのは始めてかもしれない。
『・・・え?』
「あんたが、俺を止めてよ」
祐菜は、何も答えることが出来なかった。




