#4 入学式
入学式は予想以上につまらなかった。
思ってもいないようなことを長々と話す生徒会長や校長。
中等部の頃からそんなに変わらない生徒達。
何も映していないかのような瞳で、杉浦湊はなんとか入学式を終えた。
「・・・・」
新入生達が揃って教室へ戻る中、湊はその列から外れようと教室ではなく、玄関に向かって歩き出す。
どうせこの後も担任からの長々とした話が続くのだ。行ってもつまらないだけだろう。
『待って!!』
そう叫んでいきなり進行方向を変えた湊の手をつかんだのは祐菜だった。
『どこ行くの?教室行かなきゃ?』
少し怯えたような瞳が、湊を覗き込んだ。
「・・・」
湊は何も言わずに列に戻る。
この行動には湊自信も疑問を感じた。
いつもの自分なら、こんな言葉は気にしなかったはずなのだ。
『湊・・・君?』
心配そうに首を傾げた祐菜が他の人とは違う気する。
殻の中に閉じこもってしまった自分を、光の中に連れ戻してくれる。
湊は、そう感じていた。
祐菜と湊は同じクラスとなった。
周りは知らない人だらけで戸惑っている祐菜はきょろきょろしてばかりいる。
「ねぇ、あんた見かけない顔だね。名前何て言うの?」
突然、後ろから声が聞こえた。
『ほわぁぁ!!』
おどろいて祐菜が振り向くとそこにいたのはショートヘアの少女。
祐菜の声が大きすぎたのか、少女は耳をふさいでいた。
「あんた驚きすぎ」
呆れた目で祐菜を見下ろした少女は芹沢華蓮。
その少女とは結構息が合い、休み時間中話込んでしまった。
『ねぇ、華蓮ちゃん』
会話の途中、祐菜は急に声を潜めて教室の隅の席でじっと窓を眺めている湊を横目で見た。
『湊君なんだけど・・・』
「あぁ、アイツは止めときなよ」
まだ祐菜が話している途中にも関わらず、華蓮は否定するようにぶんぶんと手を振った。
「いっつも一人でいるし、学校来ない日もよくあるし、喧嘩とかしてんのよく見かけるし」
『そう・・・なんだ』
チャイムが鳴ったので、祐菜と華蓮は急いで席に着いた。