#25 結果
押し付けられたタオルで、少し涙を拭いて、後ろを振り向いた。
『・・・湊君』
少し、戸惑った。
付き合っているのがばれないように、学校ではあまり話しかけるなといわれていたのに。
今目の前には、その湊がいるのだ。
湊は、一瞬祐菜の方を見てからすぐにクラスの皆の方へ目をやった。
いざ湊を目の前にすると、やっぱりこわいらしく皆一気に黙ってしまった。
「・・・どうして、誰も祐菜を信じようとしないんだよ」
『あのっ・・・湊君!もういいから!』
「・・・」
湊は何も言わずに、そっと祐菜の頭を撫でて集合場所へ向かった。
「・・・あんなに喋った湊君、初めて見た」
湊が居なくなった途端、誰かが呟いた。
「うん。なんか、雰囲気違ったよね」
少しの沈黙。
「・・・ほら、団選抜リレー始まるよ!」
突然そう言ったのは、ずっと黙っていた華蓮だった。
その言葉で皆ははっとしたように応援に戻った。
『華蓮ちゃん・・・』
「ほらっ!応援応援!」
華蓮に背中を叩かれ、祐菜も応援に戻った。
結果は、見事に優勝だった。
団選抜リレーは、最初は負けていたが、なんと湊が白団を追い抜き勝利。その結果、総合で優勝も出来てしまったのだ。
「ちょっと湊くん!」
「おい湊!!」
湊が戻ってくると、一気にクラスの皆に囲まれた。
「見直したよ!」
「なんかあたし、湊君のこと酷い人だって勘違いしてたよ!ごめんね!」
「湊のおかげで勝てたよー!!」
そんな中祐菜は、ぽかーんと口をあけていた。
『湊君が・・・囲まれてる』
「皆も、怖いとか勝手に思うのやめたんじゃない?」
隣で華蓮ちゃんも少し微笑みながら言った。
『皆・・・も?』
「あたしもってこと」
そんな華蓮を見て、祐菜もつられて笑顔になった。