#24 失敗
『あのっ・・・ごめんなさいっ』
リレーの後、昼食へ行こうとする皆に祐菜は頭を下げた。
立ち止まったクラスの皆は、少し引きつったような笑顔になった。
リレーで負けてしまい、合計得点まで抜かれているのだ。
「あ・・・大丈夫!団選抜リレーで勝ってやるから!」
「そうそう!杉浦湊君、足速いらしいじゃん!」
クラスの皆は「気にすることないよ!」と言って再び歩き出した。
『・・・湊君、来るよね?』
皆の背中を眺めつつ、そんなことをポツリと呟いた。
「篠原!篠原祐菜!」
午後になり、皆が盛り上がっている中、体育大会実行委員の男子が慌てた様子で祐菜の名を呼んでいた。
『な、何?』
「ねえ、湊は?!」
一瞬、どきりとする。
おそらくそろそろ団選抜リレーの選手の集合時間だろう。
だが、湊の姿は無かった。
『えっと・・・い、今来るんじゃない?・・・かな?』
「来ねぇじゃん!」
その声に、クラスの皆が不思議そうな顔で集まって来た。
「あーもう!どーすんだよ!だれか代わりに団選抜出れる奴居ねぇの?!」
実行委員の男子はイライラした様子でクラスの皆を見回す。
今、どういう状況なのか察したらしき皆はざわつき始めた。
「・・・何?湊君来ないの?」
「えー?!俺あんな重要な役割ヤダからね!」
「結局私達のせいで負けるの?!先輩に合わせる顔ないよ!」
「何で来ないの?!最低ー!」
祐菜は、体操服を握り締め、すこし息を吸った。
『・・・来るもん!湊君、来るもん!!』
クラスの人の数人がため息をつく。
「・・・来るわけないじゃん」
「ていうか、篠原さんが転ばなければねぇ・・・」
皆は一気に呆れたような顔になってしまった。
『そんなっ・・・でも、来るもん!湊君は絶対来るんだもん!』
そう言った瞬間、涙が出そうになった。
何で転んだんだろうか。
どうしてもっと必死に湊君に頼まなかったのだろうか。
「・・・なんであんた達は信じようとしないわけ?」
聞き覚えのある、そんな声が不意に聞こえた。
それと当時に、祐菜の顔には後ろからタオルが押し付けられる。
『・・・?!』
聞き間違えるはずの無いこの声。
今聞こえたのは、確かに湊の声だった。