#22 体育大会
ゴールデンウィークも明けて数日。
教室で華蓮とのお弁当タイムだった祐菜は、クラスの男子に頭を下げられていた。
『・・・へ?』
「だから!湊に、体育大会のラストの団選抜リレーに出てって頼んでよ!」
顔を上げてそう言ったこの男子はたしか体育大会の実行委員に選ばれていた。それでか。
『体育大会・・・』
そう、祐菜たちの学校では、もうすぐ体育大会があるのだ。
その中でも勝つために最も重要な競技が、ラストの団選抜リレーらしい。
体育大会実行委員の男子は、困った顔で両手をあわせ「お願い!」と呟いた。
「あいつ、去年も体育大会サボってるし・・・」
『あの、でも、何で私?湊君なら多分屋上にでも居るから頼んでくれば・・・』
「だってあいつなんか怖いじゃん!篠原なら一緒の寮だし、なんとかなるだろ!」
『・・・じゃあ、わかった』
怖い、というのはいまいち納得出来ないが、祐菜の言葉にその男子の表情は一気に明るくなった。
「ほんと?!じゃあ、確定していい?!もう締め切りやばくて!」
『わ、わかった。頼んでみる』
祐菜が頷くと男子は慌てて去っていった。ほんとうに締め切りがやばいのだろう。
今、屋上に行って頼むことも出来たのだが、湊には学校であまり話しかけるなといわれている。
『・・・帰ってからでいいか』
「・・・嫌」
『ええ?!』
夕ご飯のあと、湊の部屋でたのんでみると、返事はあっさりNOだった。
『湊君体育好きでしょ?!』
ずっとベッドの上で寝転がっていた湊はからだを起こし、祐菜と向き合った。
「だいたい、あんな騒がしい行事嫌いだから、出るつもりもない」
『ええー・・・』
最近の湊は、学校をサボることは少なくなった。
だがやっぱり体育大会は無理らしい。
『毎日頼みにくるから!絶対出てね!』
それだけ言い残し、すぐに湊の部屋を出た。
『・・・どうしよう』