#2 仲間たち
『あの・・・ここ女子寮じゃ・・・』
"杉浦湊"と紹介された少年が去った後、祐菜はおそるおそる柚希に聞いた。
「あら、だって6人しかいないもの。わざわざ男子寮と女子寮つくるなんて、お金がもったいないわ」
柚希は笑顔で言った。祐菜がおどおどしながらリビングの椅子に座ると柚希は話を続けた。
「大丈夫よ♪ユナちゃんをいじめるような子がいるなら私がすぐに追い出すから♪」
柚希は笑顔でそう言ったが祐菜には何故か殺気が感じられた。
「だぁから!!なんでこんな格好なんだよ!!」
突然、"杉浦湊"が降りてきた階段から大声が聞こえた。
「ふふふ♪この声は輝ね」
柚希は笑顔で声のした階段を見た。
『ヒカル?』
祐菜が柚希を見上げると、階段から降りてきたのはセーラー服を着た黒髪ショートヘアの少女。
『えっと、ヒカルちゃん?よろし・・・』
祐菜が少女に手を差し伸べると少女は祐菜を睨みつける。
「誰が輝ちゃんだよ!!!」
突然少女が怒りだした為、祐菜が困っていると階段からはからはもうひとり、ツインテールの少女が降りて来た。
「あははは。その子は三宅輝。中等部3年生の男の子だよ」
『お・・・男の子?!』
「あ、因みに私は中等部3年、秋月桃香。よろしくねっ!」
『よ、よろしく』
祐菜と桃香が握手をした時、階段を誰かが下りてくる音が聞こえた。
「あら、葵いたの?」
柚希の声で、祐菜は階段に目をやる。
そこには、クールそうな、少し背の高い少年が立っていた。
「・・・うん。寝てた。・・・あれ?」
祐菜は"葵"と呼ばれた少年と目が合った。
『あ!初めまして。篠原優菜です』
「高等部2年、秋月葵」
『秋月・・・?』
「桃香の兄。・・・それより湊は?」
葵は部屋を見渡した。柚希は困った顔で笑った。
「あぁ、部屋に戻っちゃったわ」
「皆揃った方が楽しいのに。寂しいから誰か呼んで来・・・」
『さっ・・・寂し・・・』
葵の言葉を遮るように祐菜が声をあげた。柚希はくすくす笑って葵を指さす。
「葵、ぱっと見クールに見られがちだけど全然そうじゃないわよ。心配性だし、まるで皆のお母さんだし♪」
くすくすと笑い続ける柚希を、葵が睨みつけた。
「お前だって篠原に優しくしてるけどほんとはドSじゃねぇかよ」
「あら、そんなことないわ♪ただユナちゃん可愛いからちょーっといじめたくなっちゃうだけよ」
言い合いをやめようとしない2人を、祐菜は呆然と見ていた。
その隣では桃香が輝にフリフリの服を無理矢理着せようとしている。
こうして、ちょっと変な人たちに囲まれながら祐菜の憧れていた寮生活が始まったのだった。