#19 伝えたいこと
祐菜は、湊の背中に抱きついた。
『怖いなんか、思うわけない』
腕の力を少し強くする。
湊の返事を待った。
「・・・離して」
そっと、湊の手が祐菜の腕に置かれる。
祐菜を背中から引き離した。
「・・・もういいから、優しいぱぱとままの居る家に帰れば」
相変わらずの、冷たい言葉。
祐菜は、湊の手が触れた腕を強く握り締めた。
『・・・どうして信じてくれないの・・・?』
「・・・そんなの、信じるだけ無駄。今まで、散々裏切られてきた」
そう言った湊は、棚からコーヒーカップを取り出し、コーヒーを淹れ始めた。
『・・・湊君は、寂しいだけなんだよ』
「・・・は?」
『寂しくて、一人になりたくなくて、構って欲しくて。だから、喧嘩して、周りを心配させて』
「っ・・・そんなんじゃない」
『・・・私が、ずっと側にいるから。楽しいなら一緒に笑ってたい。湊君が悲しいなら私も悲しい。湊君が寂しいなら、側にいたい』
「・・・なんで」
湊が祐菜の方を振り向き、そう尋ねた。
何かに期待するような瞳で、じっと祐菜を見つめる。
『湊君が、すきだから』
わかっていたのに、言い出せなかった言葉。
湊が祐菜を好き、ということは柚希も葵も言っていたのに。
ただ、不安だった。
信じることが出来なかった。
『ずっと、湊君の側にいたい』
今は、この気持ちを信じる。
たとえ嫌われていても、この気持ちだけは嘘じゃないから。




