#18 誤解
走って寮までたどり着いた祐菜は勢いよくリビングの扉を開けた。
『湊君っ!!』
だが、そこに湊の姿はない。
部屋にいるのかと思い、歩き出そうとしたその時。
「・・・なんで帰って来てんの」
『?!』
いつの間にか、真後ろに湊が立っていた。
手には買い物袋。買い物をしに行っていたのだろう、とすぐにわかったがそれどころではない。
『・・・湊君・・・』
相変わらず、目も合わせてくれない。
湊は返事もせずにキッチンへと向かう。
『・・・側にいるから』
「・・・?」
やっと、湊が振り向いて目を合わせてくれた。
それだけでも嬉しくて、堪えていた涙が一気にこぼれた。
『私が湊君の側にいるからっ・・・』
服の袖で涙を拭う。
「・・・意味わかんない」
湊から帰ってきたのは、そんな言葉だった。
『え?』
顔を上げて湊をみると、いつもの優しい湊の顔ではないことはわかった。
怒っているような、でもどこか寂しげな表情。
「・・・俺のこと怖いなら構わなきゃいいじゃん。放っとけば」
『怖いなんて思ってないっ!!』
「別にそんな嘘つかなくてもいいじゃん。あんたの友達と喋ってたじゃん」
何のことだかわからず、少し考える。
頭に浮かんだのは、以前の華蓮との会話だった。
『もしかして華蓮ちゃんとの・・・』
「・・・あんた、"うん"って答えてた」
『ちっ・・・違うっ!!』
祐菜は湊の前へ少し早歩きで向かう。
湊の表情は相変わらずだ。
『確かにうんって言ったけど、それは初めて会った時は怖かったよって話をっ・・・』
祐菜は必死に訴えるが、途中で湊は背中を向けてしまった。
『湊君!信じてよ!!』
「・・・そんなこと、出来るわけないじゃん」
『湊君っ!』
祐菜は、湊の背中に抱きついた。