#17 一人。
祐菜の家はごく普通のマンション。
7階なので、エレベーターに乗り込む。
(・・・ほんとうに帰ってきちゃった・・・)
湊一人を寮に残してきてしまった。
(やっぱり私だけでも残ってた方が良かったんじゃ・・・)
一瞬、そう考えたがすぐにそんな考えは消えた。
毎年一人だったわけだし、今の湊との微妙な関係で戻っても気まずいだけだろう。
それに、湊ならきっと大丈夫だ。
鞄を担ぎ直し、エレベーターが7階に着くのを待つ。
『・・・?!』
刹那、ガコン、という大きな音を立ててエレベーターが止まった。
しかし7階に着いたわけではない。
『えぇ?!嘘っ・・・こ、故障かな?!え、えっとっ・・・』
突然の出来事に、頭の中はパニックだが、とりあえず非常ボタンを押す。
すぐに男の人が対応してくれた。
(よかった・・・)
ほっと胸をなでおろす。
一人で閉じ込められるようなことになっていたらどうしよう、と考えてただけで恐ろしくなった。
(ほ・・・ほんとによかった)
『・・・!!』
ふと、湊のことが頭をよぎる。
湊は、一人なんだ。
帰るべき場所もなくて、泊まりにくるほど親しい友達がいるわけでもなくて。
どうして、大丈夫だなんて思ったのだろうか。
そんな保障なんてどこにもない。
湊は、ずっと寂しかったのに――
祐菜はすぐにケータイを取り出した。
『・・・もしもしっお母さん?ごめん、やっぱり帰れない。私、寮に戻る!』