#16 ゴールデンウィーク
『おはようございま・・・』
土曜日の朝。
祐菜が起きてリビングに行くと、鞄を持った輝と、コーヒーを飲んでいる湊しかいなかった。
「あ、祐菜。おはよ」
輝が鞄をリビングの机に置く。
わけがわからず、少し考え込んでしまった。
『あ、今日からゴールデンウィークか』
「そ。それでみんなもう帰っちゃったよ。祐菜も昨日帰る準備してたじゃん。もう忘れたの?」
輝は鞄の中身を確認している様子だった。
『あ、そっか』
輝は鞄を閉めて、呆れた様子で祐菜を見た。
そして、ため息をつく。
「これでしばらくは桃香に変な格好させられずに済むよ」
変な格好、とは女装のことだろうか、と一人で考え込む。
なんだかんだ言っても輝と桃香の中学生コンビも仲良しだな、と言おうと思ったがやめた。
輝に怒られてしまいそうだ。
ふと、湊が目に入る。
(・・・そっか。湊君帰らないんだ・・・)
結局あれから湊は一度も目を合わせてくれない。
勿論、話しかけてもくれなかった。
『湊君・・・』
小さくそう呟くと、湊は飲み終えたコーヒーのカップを片付け、階段を上がっていってしまった。
(・・・私も帰ろ・・・)
昼近くになると祐菜も寮を出て行った。
それを確認した湊はリビングに降り、冷蔵庫を開ける。
「・・・あ」
冷蔵庫の中は空っぽだった。
いつもは皆が交代で買い物にいくのだが、そのみんなが居ない。
(・・・買いに行くか)
ため息をついて冷蔵をを閉め、外へ向かった。