#14 最悪のタイミング
『へへへっ♪』
湊と一緒に学校をサボってしまった日から数週間。
祐菜はずっとご機嫌だった。
「・・・祐菜最近楽しそうじゃん。どしたの?」
放課後、玄関で華蓮に呆れながらそう聞かれる。
祐菜は笑顔のまま、玄関を出た。
『あのね、だってね、最近湊君が、遅刻もサボりもしないんだよっ!』
「・・・でも、喧嘩はしてるんでしょ」
『え?』
急に、華蓮の声のトーンが下がった。
祐菜は、華蓮の顔を見上げる。
「・・・祐菜は、アイツが怖くないの?」
『きゅ、急にどうしたの?』
「祐菜も本当は杉浦湊が怖いんでしょ?!」
「・・・」
なんでだろうか。
湊は、放課後の廊下を歩きながら一人で首を傾げる。
最近、サボる気が全くしなくなった。
授業は聞く気がしないが、学校をサボる気はしない。
「・・・・・・」
あいつの、篠原祐菜のせいだろうか?
「祐菜は、アイツが怖くないの?」
突然、そんな声が玄関から聞こえる。
「・・・?」
不思議に思いながらも、玄関で靴を履き替えた。
「祐菜も本当は杉浦湊が怖いんでしょ?!」
湊は、立ち止まった。
その答えが、何故だか気になった。
本当は、無理しているのだはないのだろうか?
そう思ってしまった。
『・・・うん』
それは、確かに祐菜の声。
「・・・」
湊は、祐菜たちに見つからないように離れた場所から玄関を出た。
「祐菜も本当は杉浦湊が怖いんでしょ?!」
華蓮の言葉に、祐菜は驚いた。
怖い?本当は、湊君のことが怖いのか?
『・・・うん・・・確かに初対面の頃は私もそう思ってた。でも・・・優しいよ。湊君は、優しい』
「・・・」
華蓮は、いまいち納得できない様子だったが、祐菜が歩き始めると、隣に並んで歩き始め、話題を変えた。
近づき始めた2人の距離は、また、離れていった――・・・