#10 笑顔
「んー・・・おはよ」
柚希が朝起きてリビングに行くと、そこにいたのは葵だけだった。
皆の朝ごはんを作っている。
「・・・あら?葵だけしかいないの?」
「んー。お前今日いつもより起きるの早くない?」
「そう?」
柚希は葵の所へ近づき、ちょっとだけつまみ食いをした。
「・・・おい」
「あ!そうそう!ユナちゃんと湊、いい感じだと思わない?!」
「篠原と湊・・・?ああ、そういえばそんな感じだね」
朝ごはんを作り終えた葵は調理道具を片付けながら言った。
料理は出来ないけど片付け位はできると思って、柚希も一緒に片付けを始める。
「ユナちゃん、早く自分の気持ちに気付いて湊とラブラブになってくれるといいんだけどねー♪」
「・・・そしたら湊も大分楽になるんだろうね」
「・・・・・・そうね」
そこで、丁度片付けも終わった。
「・・・おはよ。2人とも早いね」
2階から、桃香も降りてきたので、葵と柚希はさっそく朝ごはんをテーブルに並べた。
『・・・朝ごはんおいしかったけど・・・眠いなあ・・・』
朝食を食べ終えた祐菜はあくびをしながら2階へとむかう。
歯磨きをするために洗面所へと向かった。
『ふあ・・・眠・・・』
「・・・あくびするなら手くらいあてれば?」
『ほえ?!』
突然、洗面所から人の声がした。
見てみれば、洗面所には湊の姿がある。
『み・・・湊君!おはよう!』
「・・・おはよ」
湊は、前よりかは喋ってくれるようになったと思う。
始めて出会った頃は、挨拶すらしてくれなかったし。
『・・・』
そんなことをぼーっと考えていると、湊は不思議そうな顔でみていた。
「・・・何ぼーっとしてんの」
『・・・ほえ?!あ、いや・・・なんでもないの!!!』
我に返った祐菜は急いで歯ブラシを銜え、歯磨きを始めた。
だが、その瞬間に気付いた。
『あれ?!これ歯磨き粉じゃなくて洗顔?!!!』
ぼーっとしすぎて間違えた。急いで歯磨き粉を手に取る。
「・・・あんた、ほんとドジだね」
『え?』
そう言った湊の顔をみると、笑っていた。
以前のような作り笑いではない。
本当に、笑っている。楽しそうに。そう見えた。
湊はそのまま去っていったが、祐菜は頬が熱くなるのを確かに感じた。胸がきゅうってする。
あの笑顔をもっとみたい、そう思う。
――――好き
友達としての好きとは、違う。
『・・・私、湊君が好き・・・なの?』
友達としてではなく―・・・