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家の前のお調子者

作者: 輝樹

…ホント…なんかいつも以上にグダクダだぁ~…。


どうしよう。(笑)

オレは怒っていた。



母さんと姉が出かけてしまい、一人ドアの前で立ち尽くす。



高校2年生のオレ、佐藤はため息をもらす。


「ハァ~…どうしろっての。

母さん今日カギ持ってけって言ってなかったじゃん。」


軽く苛立ちも込み上げる。


「アレ~、佐藤じゃん。」

「…ゲ、吉実よしみ…。」


立ち尽くすオレの目の前に、家の前に住む吉実が現れた。

オレは正直、吉実が苦手である。


なんでかというと、まぁ。


オレは友達と楽しんではいるが、静かにというか。

そんなに目立たず遊んでいる、みたいなカンジなんだよね。


そんなオレとは正反対に、吉実は友達と大声ではしゃぎ倒し、好きなタイプだとか嫌いなタイプだ、とかはスパッと分かれてしまうカンジの。


そして、オレはさっきも言ったが、嫌いなタイプ派。


ついでに、吉実は顔に大きなホクロがある。

彼女はそれをとても気にしているらしい。


いくら友達であろうとソレについては禁止用語だ。



「どしたの~??カギ忘れたの~??うわっ、ダッサ!!」


そう言った後、キャハハと笑う吉実。


今日の授業で使った習字セットの文鎮で腹を殴ってやろうか。


「うっせ!!そんなお前はカギ忘れたコトねぇのか!?」

「ないよ。」


きっぱり返された。


「…証拠は??」


オレは小学四年の頃にココに引っ越してきたので、そういうのは分からない。


それに、相手は女子だ。

知ってたらキモいよ、オレ。


「だって。アタシの家カギいらないもん。

パネルを順番にうったら自動で開くんだ。」


…ナヌ??


オレはすぐさま吉実の家のドアを見る。


…ホントだ…コレ…パネル式だわ。


もう一度吉実の方を見ると、そこには黒い笑みを浮かべた吉実がいた。



「ぐっ……。」

思わずそんな声が漏れる。


「ハハん♪あ、アタシ塾行かなきゃ。

アンタに構ってたら保育士っていう夢が叶わないわ~♪」


「…保育士…??」


オレはハッとする。


「何よ??」

吉実はそんなオレを見て少し引いているように見える。


勝手に引いとけ。



今、オレにとって、お前はただの顔に大きなホクロを携えた糞野郎だ。


「…その夢…ホントなんだろうな??」

オレの顔はマジになっていたらしい。


「ほっ、ホントに決まってんじゃない!!」

ソレをみてなのか、吉実はそう怒鳴った。


「なんで…なんでオレと…同じ夢なんだ…。」


「……え…。」


お互いショックを受ける。


「…負けネェよ。」

握りこぶしを出来るだけ吉実に見えないようにしながら声を低くして言う。


「…あたしこそ。

先にアタシがこの家を出て立派な保育士になってやるんだから!!」


「オレのが早いに決まってる!!

オレなんかお前みたいにブログ毎日三回更新とかしてる暇ないんだからな!!

まずオレは勉強に必死すぎてブログなんてやってねぇよ!!」


…言ってやった……!!


それと同時にオレの母さんが向こうから歩いてきた。

やっと家に入れんのか~。


「…フン、それは友達に進められたからよ!!」


まだ折れないのか、吉実。

いい加減にしなさい、佐藤君怒るよ??


「ハァ??オレ知ってんだぜ??

ブログ内で友達一人もいなくて毎回コメント0だってコトもな!!」


「なんでそんなコト…!!」

「友達が言ってたんだ。」


そんな言い合いをしていると母さんはもうオレとの距離は3メートルほどになっていた。


「…なによ…知らない!!」


そして吉実は走り去っていった。



なぜか呆然と立ち尽くすオレ。

勝利の余韻に浸っていたのだろうか。


「あら、あんたカギ忘れてたの??バカね~。」


やっとオレに話しかけてくるほどの距離にまで近づいてきた母さん。


「うっせーよ。

うっかりしてただけだ。」


そう言って母さんからカギを受け取り、家のドアを開ける。


「そういえば、泣きそうな顔で吉実さんとこの子走ってったけど…。

アンタなんかしたの??」


「何もしてねぇよ。

それより母さん、オレ…絶対…夢を掴むわ。」


「…何の夢か知らないけど、勝手にしな。」



…アレから7年が経った。


相変わらずオレと吉実はお互いの家から出ることはなかった。



アレから変わったことと言えば。


毎年、正月になると家が前なので、吉実が郵便受けに直接年賀状を入れてくるようになった。


まぁ、『あけましておめでとうございます』の後に『死ね』と書いてあるのはまた別のお話。



そして、今。

オレはサラリーマンをしている。



親から保育士の仕事は目つきが悪いので向いてない、子供が泣きじゃくるぞ、と言われ、それではまだ心は折れていなかったが、学校でも同じようなことを冗談交じりのようだが、本気で言われてしまい、完全に心が折れてしまった。


目つきの悪さを利用して人の夢を壊した大人達。


大人。


オレは今、その立場に立っている。


「…今日は肌寒いな。」


スーツに身を包み、保育士には程遠い格好だ。


毎日毎日、この駅前を行き来する日々。


そんなヤツに…本当はなりたくなかったんだ。


コツコツコツ…


オレの後ろからヒールの音が聴こえる。

後ろを向くと…。


「…あ…。」

「…吉実。」


年賀状でしか会話?しない俺たちは、久しぶりにお互いの顔を見た。


「…佐藤、久しぶり。

そのバカ面、全く変わってない。」

吉実はまいているマフラーで口を隠しそう言った。


「…お前もな、相変わらずブログのコメントは0か??」


「…最近は2・3件来る。」

『そっか』とあっさり返した。


「…お前、保育士やってんの。」

この際、オレのダメっぷりをこいつにバラしてもいいか。


あの時『お前より保育士になる』とか豪語してたのに…オレは今サラリーマンだ。

やっぱり吉実はちゃんと保育士やってんのかな。


「ううん…OL。」


…!!


オレと同じじゃねぇかぁああぁぁあぁあ!!!


まるで電気が走ったかのような表情だったようだ。

吉実がビックリして一歩後ろへ下がる。


「…佐藤は??」吉実は泣きそうだった。


「…サラリーマン。

フッ、お互いもう夢を捨てたんだな。」


「…捨てたんじゃない。

捨てられたんだよ。」


何分か沈黙が続く。


「…どっかの居酒屋入んね??」

「…うん、アタシの上司の愚痴、聞いて。」


そう言って二人ゆっくり歩き出した。



今、こうして夢をお互い捨てて。


似たような仕事して。

分かり合えるコトってあるんだな。



こうして二人の関係はライバルではなく、飲み友達に昇格したのだった。

どうでしたでしょうか??


自分はまだ未成年なので、働くってコトはよく分からないけど、当たり前な道って歩むのは大変だって…耳をすませばで言ってました。(笑)

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