↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

こんな悪役令嬢知らないなーと思ったらあの広告の開拓ゲーだった!?果ては聖女扱い!でもこのサクサク感は爽快!

作者: noel
掲載日:2026/09/22




「ううっ、アメリア様ぁ!そんなに私が嫌いなんですかぁ!?」


 ネズミの国の城みたいな離宮の庭で、私、アメリア・パリンテンは、心の中で叫んだ。


『しまった!契約結婚じゃなくて悪役令嬢!?』


 もうお分かりだろうが、私には、前世の記憶がある。

 文系大を出て就職直前の飛行機事故で死んだ私の記憶が、コレはヤバいと警告している。

 しかし、前世で胸焼けするほど流し読みしたネット小説の弊害か、自分がいったい何の世界に転生したのかさっぱりわからない。

 パリンテン伯爵家の長子として産まれ、後妻も義妹もおり、どちらも程よく性格が悪い。

 そんなフラグだらけの中、疑心暗鬼で生きてきた。

 だから、無骨な黒髪の第二王子に、三年後に離婚の契約結婚を持ちかけられたときは、ああ、契約結婚だったかとほっとしたものだ。

 これでひとまず安泰。契約結婚の理由は、女よけの為。夜会の空気が息苦しくてテラスに逃げ込んだ時に意気投合して提案された。

 慰謝料で豪遊するもよし。

 真実の愛に目覚め迫られるのも悪くはないイケメンだ。


 だが、第二王子は別の真実の愛に目覚めたようだ。しかもこんなタチも頭も悪そうな娘に。


 誰も見ていないスキをつき、勝手に紅茶を頭からかぶって泣き崩れる令嬢のララベスに私は冷ややかな目を向けた。

 そもそも招待客に入っていないのに、なぜそこにいる?

 そして、絶妙なタイミングで飛び出してきた我が婚約者の第ニ王子がララベス嬢を見て、鬼の形相で私を見た。


「アメリア嬢、ララベス嬢に何をした!嫉妬か?事と次第によっては然るべき措置を取るぞ!」


 いやいや、こんな茶番は耐えられない。

 契約結婚を持ちかけたのはそっちでしょ!?

 女よけの意味ないじゃん!

 言ってくれれば慰謝料貰って引き下がるってば!


「ベクター殿下。私、何もしていませんわ…」


 引くつきながら一応事実を告げるが、火に油だったようだ。


「ララベス嬢がずぶ濡れではないか!謝罪も無いとは呆れた!そなたのように不誠実な者とは…」


 うわぁ…。


「婚約破棄させてもらう!」


 キター!!!



*********



 すぐさま謹慎を言い渡された私は、三日後には婚約破棄が成立し、王族に不興を買った娘は要らぬとばかりに魔素凝りに半分以上侵食された辺境の領地へ送られる事になった。

 その領地は相当な不良債権だったようで、正式に私の所領となった。

 いや、それにしても不誠実はどっちよ、ベクター殿下。

 まぁ思い返してみれば、最近よそよそしいな、とか、ララベス嬢がやたら話しかけてきては勝手に不機嫌になってるなと、思い当たるフシがそこそこあった。

 

 ただ私は早く義母義妹の手の届かないところに行きたくて、周りが見えてなかったのだろう。

 あー、でも処刑じゃ無くて良かったかな!


 私はメイド、乳母、庭師、料理人、従者と母の代から仕えていた5人の家臣をつれ辺境の地へ旅立った。



*********


「ミアお嬢様、本当にこんなところで暮らすんですかぁ~?」


 メイドのスザンナがボロボロの屋敷を見てゲンナリと呟いた。

 うん。これは酷いと私も思う。

 屋敷の扉を空けたら差し込む光に舞う埃がキラキラ光ってる。光は天井の穴から差していた。うわぁ、お日様がよく見える。

 床には水たまりができ、歩くたびにギシギシいっている。


「しょうがないでしょ?だからついてこなくても良いって言ったじゃない……」


 そう。別にこんな人数はいらないと言ったのだ。

 が、ついてきた5人は庭師と乳母が夫婦。

 長男が料理人、次男が従者、そして娘がメイドだった。


「ミアお嬢様にどこまでもついていきます!」


 乳母のターラがそう言うと、5人はうなづきあってゾロゾロついてきた。


「お給金そんなに出せないんだけど……」


 私は正直に言った。

 一応王子側からの婚約破棄だったので慰謝料はもらえたが、家族に大部分とられ、私が貰えたのはほんの少し。

 どんなに切り詰めても1年後には底をつきそうだ。


「今までもそんなに貰っていませんから!」


 笑うみんなにちょっと涙が出た。

 私、愛されてるじゃん?

 今まで気を張り詰めて生きてきたけど、こんなボロ屋なのに、やっと自分の居場所を見つけた気がした。

 実家が人手不足になったようだが、知ったことではない。



*********


 みんなが屋敷の大掃除をしている間、私は領地の様子を見に行くことにした。

 屋敷は少し高台に建っているので領地を見渡すことができた。

 魔素に侵された土地と聞いていたが、なるほど、あちらこちらで赤紫にメラメラと空気が揺らいで見える。

 私も魔素凝りを見たのは初めてだ。

 万物に微量に存在する魔素はこの世界で当たり前に使われている魔力の源泉として、無くてはならないものだ。

 魔術師たちはこの魔素を動力に火を灯したり、水や風を操る。時には魔素を足元に展開して空も駆ける。

 魔素は呼吸するように常に物質と大気を循環しているのが正常な状態だが、その巡りが滞ったのが魔素凝りだという。

 流れない水が澱んでいくようなもの…だろうか。

 メラメラの中ではクネクネ曲がった木や枯れ果てひび割れた荒れ地が見えた。


 けれど、そのメラメラをみていると、何だろう?何か幾何学的な物が景色に被って見えた。


「は?え?」


 それはとても、とても懐かしい。

 しかし、ここにはあるはずのないもの。

 半透明の四角いゲージに小さな丸太のマークと『0/100』と。

 目を擦り視線を空に上げる。あ、見えない。

 しかし別のメラメラを見ると今度はリンゴマークと『0/5』と見えた。

 うん。紫の斑のリンゴ、確かになってるね…。

 バカバカしい予感に、私は半笑いを浮かべた。

 メラメラ澱むリンゴの木に近づき、そっと手を幹に触れた。

 ブワッ!


「うわっ!」


 身体を何かスーッと爽快な感触が駆け巡った。

 同時にポコポコポコポコポコ!シャキーン!と軽快な音が頭に鳴り響き、腕の中にツヤツヤの赤いリンゴが5個、そして紫の小さな魔石が1つ。


「は、ははは……これ……まさか、うっとおしいほど流れてきたあの広告の……」


 ✕やSKIPがやたら押しづらく、うっかりダウンロードしたら時間が溶けるように無心にやったあの……。


「ドリーミングワールド!?」


 私が転生したのは契約結婚でも悪役令嬢でも妹に婚約者を取られたでもなく、まさかの広告ゲームの世界だった。



*******



「はい!みんな、良いもの持ってきたよ!」


 私はピカピカのリンゴをみんなに差し出し、一人一つずつ配った。

 私の分は無いが、しょうが無い。5個しかないし。

 元の姿を見たから食べたくないとかじゃないからね。


「ミアお嬢様、このリンゴ凄く美味しいです!」


 料理人のヘンリーが言った。

 よっしゃ。味にうるさいヘンリーが言うなら問題ない。


「この辺の植物はみんな元気がないのに、良くこんな立派なリンゴがありましたなぁ」


 庭師のモリスも不思議そうにリンゴを見ていた。


「この土地はね、お宝の山よ!見て!」


 私は紫の魔石を親指と人差し指でつまんで見せ、にっと笑った。


「これ、魔石じゃないですか!しかもこんなに透き通って特上なやつ!」


 万物に宿る魔素は極微量だ。だから魔術師は魔石を非常に重宝している。

 しかし、魔石は長く生き魔素を多く取り込んだ魔獣の腹や地下深いダンジョンでしか採掘できず希少な存在だった。


「そうよ、トマス。明日は商会にこれを売りに行くわ。いくらで売れるか楽しみね」


 これでみんなにお給金が払える。

 私はほっとした。

 そして、次はこの屋敷だ!


「ねぇ、みんな手伝って欲しいの。修理には木材がいるわよね?みんなで運んで欲しいの」


 訝しげな5人を連れ、向かうは小さな丸太マーク『0/100』!

 みんな遠巻きにメラメラを眺める中、私は勢いよく魔素凝りの木に抱きついた!

 木が内側から格子状に光ったと思うとまた身体を巡る爽快感!ポコポコ……と多分100回音がして、板状になった木材が地面に規則正しく積み上がった。

 そして私の手には大きな魔石が二つ。


「おおおおお、おじょおさまぁっ!?」


 みんな、何が起こったか理解できないのだろう。目を見開いて口をパクパクさせている。

 いや、だけどこれ、何て説明する?


「何かね、私が魔素凝り触ると、こうなるみたいよ」


 私は事実と結果だけを伝えた。



********



 木材を荷馬車で運び、屋敷まで戻ると、屋敷のドアの前に半透明の四角く区切られた枠が見えた。丸太100と書いてある。

 これは期待しちゃうなー。

 ほんとにできちゃう?

 そこまでできちゃう?


「あの四角に木材置いてもらえる?」


「ミアお嬢様?四角ってなんですか?」


 どうやらみんなには見えていないらしい。そりゃそうか。


「玄関前に木材を下ろしてくれたらいいわ」


 改めて指示して100個の木材を置いた時、期待に応えて木材が空に浮かび上がり次々と屋根の穴に吸い込まれていく。地面から虹色の光のラインが家の屋根に向かつて登っていった。

そのラインを境にボロ屋は真新しい木の匂いが芳しい新築物件になっていた。


「??!?!?!!!」


 さすが家族だ。みな同じ顔で仰天していて、おかしくなった。


「ミアお嬢様!お嬢様は魔術師だったんですか!?」


「うーん、何だろうねぇ。魔術は多分使えないの。こういう仕様、なんだよね」


 私だって、いくら何でもあのゲームを現実として体感できると思わなかった。

 いやしかし、何か脳から変な汁出てるね。

 サイコーに気持ちいい!


 恐る恐る屋敷に入ると中の調度品やベッドに至るまでピカピカになっていた。

 布の素材は集めてなかったけど……細かい事はいいか!

 さすがにHPを消耗するらしい。

 この日はタスクを3つでヘロヘロになった。



*********



 翌日、領地の商会へ挨拶を兼ね足を運んだ。


「はあ、新しいご領主様で?」


 商会長はトマスとスザンナを連れて訪れた私を値踏みするように上から下まで見た。

 まあ、こんな若い娘が難ありの地にやって来たら、訳ありだと思うよね。失礼な態度だけど、しょうが無いか。


「ええ。アメリア・パリンテンよ。よろしくね。早速だけど、買い取って欲しいものがあるの」


 私はトマスに魔石を出させた。

 商会長の前にゴロンと魔石が3つ並ぶ。


「こ……これは!こんなに質の高い魔石をいったいどこで……!これほどの物は王都でも滅多にお目にかかれませんぞ!」


「私しか知らない入手ルートがあるのよ。それで、買ってくれるの?」


「あ……はい。はい!もちろんです。買い取らせていただきます!」


 商会長は金貨の入った袋を二つ出してきた。

 

「んー?この小さい魔石はいらないってことかしら?」


 私は魔石をつまんで巾着に戻そうとすると店主は慌ててもう一つ金貨の袋を出した。

 よしよし。

 私はにっこり笑って、金貨二袋をスザンナに渡す。そして追加で出されたもう一袋を握ると、ずいっと店主に向かって差し出した。


「これで、私の家の周りを警備してくれる人を手配してくれない?今すぐ。そしたら、また魔石を定期的に持ってくるわ」


「て、定期的に!?」


「ええ、定期的に。だから、もしこの先私に何かあったら、魔石はこの3つでおしまい、ね?」


 商会長はコクコクと頷き、小間使の少年を使いに出した。しばらくすると、屈強そうなモヒカン頭の男が二人店に入ってきて、トマスとスザンナがヒッと息を飲むのがわかった。

 うん。強そう。いいんじゃない?

 護衛、大事。私は満足気に頷いた。



*******


 さて、それからはタスク消化の日々。

 岩場に行き、石材500。それを橋に運び、木の橋から石橋へ。大きな荷馬車解放。

 荒れ地に寝転び穀倉地帯解放。

 モヒカンを10人増やし、穀倉地帯の作業タスクに投入。

 しかし何でみなモヒカンなのかな?仕様?


 スライム色の沼地に足をつけるのは勇気がいったけど、素足の指先が触れた瞬間、サァーっと虹の円が広がり底までクリアな清水になった。ああ……脳汁ダダ漏れの快感!


 そうして、1年かけて領地の魔素凝りは全て無くなり、魔素凝りでダメになっていた橋や道、畑や農場、果樹林は全て息を吹き替えした。

 別に隠していた訳じゃないので、人目があってもタスクを消費すると、いつの間にか浄化の聖女と呼ばれるようになった。

 ま、魔素凝りは私をフィルターにして余分な魔素を魔石に分離してるんだろうね。

 聖女というよりは浄水器みたいなもんかな?

 それに、そんな清らかな呼ばれ方はなんか違う。

 動機が、ほぼタスク消化したいってだけだもんね。


 もはや領地の産業はウナギ登り。

 何もしなくても5人の使用人と12人のモヒカンは余裕で養える。

 でもさぁ……。一月も持たなかった。

 私はあの快感が忘れられなかった。

 そして、ふと思いついて大陸の地図を広げた。

 ああ、地図の上に紫のメラメラが見える……!

 翌日、私は旅に出た。



********


 聖女の噂は王都まで届いたらしい。

 実家や王室から真偽を確かめるべく書簡が届いていたようだが、何しろ私は旅立ったあと。

 追い出して一年も手紙一つ寄越さなかったのにね。

 返事が来ない事に業を煮やし、義母義妹が領地に乗り込んで来た……と残ったモヒカンから報告があった。

 魔石をいっぱい持っていたから、ふんだんに使ってもらって、風で声を届ける魔道具作ってもらったんだよね。

 MAXまでグレードアップした白亜の豪邸を見てズルいって叫んでいたらしい。

 中に入ろうとしたけど、泥除けの魔道具が発動して水浸しになり、泣きながら帰って行ったって。あー、楽しい。

 ……って、我ながらなんて意地悪な聖女サマかしらね。

 

 

*********


 さて、1年ぶりに領地に帰ってきた。

 何かすごく発展して人口が増えていた。

 お店も増え、活気がある。

 領主さまが帰ってきたと大歓迎を受け、わが家に着いたのは日も暮れかけていた。


「ミアお嬢様、おかえりなさいませ!」


 留守番していたモリス、ターラ、ヘンリーが揃って声を上げた。

 旅に同行したトマスとスザンナは父、母、兄に抱きついた。

 ああ、帰る家があるって幸せだなぁ。

 私は温かい気持ちになったが、山積みになった王家と実家からの書簡の山を見てゲンナリした。


 全部開けるの面倒くさい…。

 私は直近の日付のものをそれぞれ確認した。

 実家からは要約すると、今まで何で力をかくしていた。とにかく一度帰って来いということだ。便せん10枚も使って要点がそれだけってどうよ?


 そして王家から。

 王家の双頭の牡鹿の紋が箔押しされた便せんの中央に流麗な文字で数行。

 こちらはまた極端に要点だけねー。

 どれどれ?



 最期通告


 度重なる招集を無視するアメリア・パリンテン。

 下記期日までに登城の上申し開きなくば、領地召し上げ、捕縛の上斬首刑を執行す。


 日付は…1週間後!!!


 しょ、処刑イベント、キター!?




*******


 王都までは通常一ヶ月の行程。すでに詰んでいるじゃない!

 私は急いで領内に新設された魔術師協会に駆け込んだ。

 飛び込んできた私に、魔術師たちの顔が一斉に明るくなる。


「領主様!魔石の供給ありがとうございます!おかげ様でちびちび進めていた研究がどれだけ進んだ事か!立派な設備まで!」


 そう。ここは魔石を1000個でビルドした施設だ。うーん。このイベントへのフラグだったのかな?


「王都にすぐに向かいたいの!1週間の期日に間に合わないと領地召し上げの上、私、処刑よ!これからもこの設備を維持したかったら何とかして!」


 それからは阿鼻叫喚。

 魔術師たちは徹夜で空飛ぶ絨毯を仕立てた。かなり魔石を使うがしょうが無い。 

 絨毯は5枚。1枚は私と5人の使用人。残りは護衛に5人づつモヒカンを乗せる。

 操縦の為に魔術師が1枚に1人乗って、絨毯は空高く舞い上がり一路王都に向かった。

 Vの字で隊列飛行をする絨毯。

 豆粒のような地上が足元に見える。

 風魔法の展開で絨毯の上は無茶苦茶快適なんだけど…。

 あ。そういえば私飛行機事故で死んだんじゃん。この世界で空飛ぶ機会なんてなかったから忘れてた!いやあああっ!


「ア…アメリア・パリンテン、参上しましたぁ!」


 やはり空の旅は早い。

 爆速で早朝に出発して昼過ぎには王城の門の前に私を先頭に5人の使用人、6人の魔術師、そして20人のモヒカン軍団が整列していた。




********



 謁見の間に通されると、そこには第二王子ベクター殿下と王家の人々。そしておなかがぷっくりしたララベス嬢がにやーっと笑っていた。

 うわ、すっかり忘れてたけど私の大恩人じゃん!幸せそうで良かったね!

 私は自分でもビックリするほど心の底からニッコリと笑いかえし、ララベス嬢の頬がヒクついた。

 でもあれが私だったらと思うとゾッとするわ。


「アメリア嬢。そなた、再三に渡る招集を無視する愚行。まずは申し開きをせよ」


 ベクター殿下がイキり気味に圧をかけてきた。

 自分の債務不履行はなんの説明も無かったのに偉そうに。なんかすっごく小物に見えてきた。

 あー、私、ただ死にたくないだけでこんな男選んでたんだねぇ…。

 私の自虐気味な表情が顔に出ていたのか、ますますベクター殿下の眉が吊り上がった。小物。


「招集に応じられなかった事、深くお詫び申し上げます。長く領地を留守にしており、その事実を知ったのがつい先日だったのでございます」


 うちの領地があまりにも僻地で、伝令も来なかったのだから知りようが無い。

 私が使っている通信の魔道具も魔石の消費が激しいから、実用には程遠いのだ。

 でもだからって斬首はひどいよ。


「ふむ。そなたが浄化の聖女と呼ばれ各地を浄化していると報告を受けたが真か?なぜ今まで力を隠していた?」


 今度は第一王子のラスター殿下が落ち着いた声音で問いかける。

 あ、やっぱり世継ぎの君。大物の風格あるなぁ。


「聖女などと滅相もございませんが、どうやら魔素凝りを解消する力があるようです。王都は清浄な地。私もそのような力をこの身に持つことは、所領に就き初めて知ったのでございます」


 知ってたらあんなにビクビクして生きてなかったっつーの。


「ではここで力を示し、真偽を確かめることは叶わぬ、か」


 あ、理解早くて助かります!


「兄上、何を生温い事を。カタリに違いありません。投獄して斬首刑で!」


 酷(ひど)っ。

 しかしラスター殿下は弟の暴言を華麗にスルーして話を続けた。


「ではアメリア嬢。そなたの領地の南方に古くからある魔障の樹海がある。そこを浄化できたら正式に聖女として列聖し、領地に編入することにしよう」

 

 折しもそこは最後に取っておこうと思った特大のメラメラ地帯だった。



*********




 さすが樹海というべきか私の浄化能力を上限まで使っても、この地の攻略は至難の業だった。

 なにしろ南を攻略しているうちに北が、東を攻略しているうちに西がまた魔素凝りを起こすのだ。

 

「うわぁーっ疲れた!」


 私はモヒカンの軍団のために作った食堂でテーブルに突っ伏した。

 他にもこの辺一帯は宿泊所、娯楽所、温泉、商会、麦畑、野菜畑をビルドしてすでに一つの街として機能していた。


 ここはどうやらほかの場所と違うようだ。

 一度、何とか中心部までたどり着いたが、脈打つ網目状の傘をかぶった紫色の毒々しい巨大なキノコから、ぽふっ、ぽふっと胞子が噴き出していた。

 胞子は昨日浄化した地帯の方角へ飛んで行った。その日はとてもあれを浄化する体力は残っておらず、引き返した。

 なんとなくわかった。

 あれが、魔素凝りの源泉。

 あれを浄化すればオールクリアだ。


 一度、ベクター殿下が現場に来た。

 私は作業服を着て泥まみれ。

 ベクター殿下に気づかず浄化を行い、モヒカン達に石材10000を運ばせているところだった。

 ポコポコ石が積み上がっていく最中に私はベクター殿下と目が合った。

 ベクター殿下は眩しそうに目を細め私を見たあと、


「すまなかった。オレは、バカだったな……」


と言って帰って行った。


 ドーベルマンがキューンと耳と尻尾を落としてトボトボ歩いて行くような姿に、私もちょっぴり胸がキュッとなった。

 うん。小物だったけど、やっぱり顔は良かったもんね。




「それにしても終わらない。早く終わらせないと。終わらせないと……?あれ?」


 よく考えたら、終わらせる意味、ある?

 私、聖女になりたいわけじゃないよね?


 振り返ればそこには無限の魔石供給源も、働き手も溢れているわけで……。

 何より、ここならエンドレスじゃない!?

 私は、脳からドバドバ何かが溢れてくるのを感じた。



**********


 アメリア・パリンテン

 47歳で亡くなるまで魔障の森の浄化に貢献し続けた。

 産出された魔石は膨大な量にのぼり、今日の魔術師協会の発展の礎となった。


 晩年は

 「さすがに飽きたわー」

 と漏らしていたという。


 森の中央の巨大な白いキノコの上で、眠るように息絶えていたのを発見される。

 その顔(かんばせ)は笑みの形で満足気であった。

 そして、魔障の森は霧が晴れるように魔素凝りが解消された。


 翌年、聖女列聖。

 





 




アメリアさん、ラスボスキノコの上にダイブしてゲームクリア!

悔いなきゲーム廃人を全うしました(笑)

後半モヒカンをやたら気に入り、持っていかれました。


面白かった方はリアクションやブクマいただけるとうれしいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。