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過日の亡霊――転生冒険者と死亡した転生元王女。ただし転生冒険者は現在副業中  作者: 剣崎月
第二章・迷宮の怨霊――迷宮主人の喪失

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【01】

 魔道列車が急停止した衝撃で目が覚めた――車掌が停車の理由を説明して歩く。


「大型生物との接触により、一時停車しております。ただいま撤去しておりますので、復旧までしばらくお待ちください。大型生物との接触により、一時停車しております。ただいま撤去しておりますので……」


 遠ざかってゆく車掌――


「……計画通り」


 基本的に魔道列車は、頻繁に生物との接触事故が起こる。

 なにせこの世界、人が生息している領域と、動物が生息している領域、そして魔物が生息している領域の三つに分けると2:3:5だから……わたし調べだけど、きっと間違ってないと思う。

 そんな感じなので、街と街の間は、大型生物が跋扈していて、まあまあな確率でぶつかって、魔道列車が止まるんだ。


「さて、昼寝して頭もすっきりしたから、書類でも読むか」


 寝ている最中に、書類を盗み見られたりしていないか? それは大丈夫。魔法がある世界なので、書類が入っている袋は、自分以外の人間は封を開けられないように細工しているから。


 もちろん、魔力封印を解除できる人もいるし、わたしも出来るけど、手元にはない(・・)から読まれようがない。

 書類は王都の地下迷宮にいる、わたしの分体が書類を持っていて、そちらが読んでいるのを、わたしが閲覧する形式にしているので、書類は手元にないのさ! 完璧なリスク管理!


 分体が襲われたらそれまでだけど。


「迷宮支配人失踪事件……分かってはいたけどね」


 わたしは迷宮都市出身で、所属していたクランは回収(生死は問わない)が専門だったこともあり、カラブリア王国内の迷宮事案の多くを回される。


 迷宮事案はやりたくない……というか、モチベーションが上がらないんだよ。給与が安いから。

 機関職員、給与はいいんだけど、これ(・・)冒険者として引き受けたら、今のわたしの年収の五倍の料金設定モノなんだよなあ

 金のために働いているわけじゃないんだけど、差額が頭を過ぎるので。


 普通の殺人事件とか、失踪事件の調査とかは、全然いいんだけどね。むしろそれがしたくて来たからさ。でも迷宮案件はなあ。冒険者でもできる事だからー。


「事件の概要は……まっ、いっか!」


 書類を読み込まないのか?

 通常の事件なら読み込むけど、冒険者ギルドから回された案件なら、手癖というか脳死周回っていうか、機関と違って力業でなんとかできるから、さらっと読むだけでいける。


 慢心してる?

 いや、慢心はしてないよ、本当に。本当に慢心してないってば! 慣れてるんだって。それを慢心というのかも知れないけれど。


 到着駅のホームに設置されているベンチに座って、遠ざかる姿を眺めながら、案内担当のギルド職員を待つ。


 案内を担当するのは、イルジオンという男。

 わたしが調査を依頼された迷宮に、先見調査隊として派遣され、唯一生き残った人物だと記載されていた。

 迷宮での事件は、基本冒険者ギルドが行う。

 冒険者登録をしていない人が迷い込んだり、迷宮に遺棄されていたりしたら、機関が出てくるけれど。


 ゼブンズからの依頼は、迷宮主ドロクローの行方を探って欲しいということだった。


 ドロクローという人物については全く知らないが、ドロクローは金を払って冒険者ギルドに血液と髪の毛を預けており、わたしが受け取った書類には、血を湿らせた布と五ミリ程度の髪の毛が入った袋も同封されていた。

 こんなにも個人情報があったら、攻略済み迷宮なら簡単に探せ……おや?


 行方が途切れた。探索不能だ。


 ドロクローの迷宮が、未攻略になってる。もしかして「あれれ~?(殺人事件)」案件じゃないのか!

 てっきり迷宮の利権を巡る、骨肉の争い……からの連続殺人事件だとばかり思ってたけど…………これ、違う案件っぽいな。


 迷宮リニューアルで主が殺されたパターンか。


 どうもこの世界の迷宮は、全てではないが「進化」することがある。進化とは主がいるにも関わらず「新たな迷宮(ボス)」が発生すること。

 進化すると、主は支配権を失う。

 もう一度迷宮の主になるためには、新たな迷宮核を倒さなくてはならないが、進化後の核は、今までの主では勝てないことの方が多い。


「冒険者ギルドに進化と未攻略の連絡してないよな。連絡があれば、書類に書かれてる筈だし。進化後にすぐ殺害された? …………迷宮相続については、詳しくないんだよなあ」

 

 うん、迷宮相続には詳しくないんだ。相続したことないし、する予定もないから。ドロクローを探すだけなら、適当にやって帰ろうと思ったけど、どうやらそういう案件じゃなさそうだ。


 迷宮でイレギュラーが起きた場合は、引き受けて解決しなければならない……カラブリアで機関に所属して調査をしたいと申し出た際に、クラン長のスムマヌスからつけられた数少ない条件の一つだ。


 クランを抜ければよかったのでは? それはそれで、面倒なんで。それに、クランの仕事も嫌いなわけじゃないし。わたしの機関捜査官は、いわば副業みたいなもの。

 だから本業の上役の条件には従わなくてはならない。

 言わなきゃばれないけど、ここオルタナいるから、絶対に筒抜けするんだよなあ。まあ、わたしも向こうのクラン長に、オルタナのこと伝えてるから、いいんだけど。


 …………ここは不本意だけど天与(ギフト)を使って、死亡年月日と死因を調べるとするか。


 [天よ権能を与えたまえ]と唱えて目を閉じる。


 おっ、中肉中背の男性が、六人パーティーに囲まれてる。側には死体が転がって……あー殴られてる、殴られてるぅ。ぼっこぼっこだ。あ、頭割れた。念入りに胴体をぉぉぉ! 完全に切・断!

 人間が殺されるシーンって、滅多に見ないから……冒険者なら見慣れてるだろ? いやいや人体が破損するシーンは見慣れてるけど、死ぬのはあまりない。


 クランの一員って、自動回復が標準装備なので、大怪我しても死なんのよ。わたしもクランに所属して十数年になるけれど、その間に死んだ団員って二人くらいだよ。


 これでも一流クラン所属だから、他の団員も強いもんで。


 さてと、ドロクローの死因は……どれですか? [複数人による殴打]

 失血する前に殴打によって命を落としたのか。死体を見たら、絶対胴体ぶった切られたのが原因で死んだと思うな。


 もちろん、ユセリラルダ侯爵が広めた”生活反応”があるから、気付くけど!


 死因は分かった、では死亡年月日は……その日付は五ヶ月前だな。

 …………あれ? 行方不明になったのって、おおよそ二ヶ月前って書類に書かれてたよ。

 三ヶ月の誤差は一体?

 占いだから三ヶ月くらいの誤差はあるのでは? それはないんだ。


 これが口寄せ魔法での占いの場合は、真偽が怪しくなる。


 よく「当人は真実を言っているつもりだが、それは当人から見た事実であって、真実ではない」ということがある。

 口寄せ魔法を使って、死者に直接話を聞くことはできるが、ほとんどの霊魂は主観でしか語らないので、あまり……というか、ほとんど役に立たないのだ。


 気配を消した何者かに背後から殴られて死んだとしたら、霊魂になっても分からないのがこの世界。


 ましてや霊魂になったからといって、知的になるわけでもない――酷な話だが、嬰児が殺害されてその霊魂を召喚しても、答えることはない。

 死んだ時、そのままなんだ。


 ちなみに過去、わたしも試しに口寄せ魔法で占って、死亡日時を聞いたら、四日くらいずれていたことがあった。これは単に被害者が「日付が曖昧なまま死んだ」ため。


 殺す前に監禁しておくと、日付が狂うことが多いんで、仕方ないんだけど。


 逆に天与(ギフト)は神視点なので、日付の間違いなどはない。天与(ギフト)ってそういうものだから。


「それにしても……三ヶ月の誤差は」


 迷宮主がいなくなると、かなり早い段階で、スタンピードが起こる……らしいよ。

 実際今回の件も、大量発生という程ではないが、迷宮から魔物がちらほらと出てきたので、異変を感じた冒険者がギルドに報告して、四人編成の調査隊が派遣されたけど、三人が死亡して一人が命からがら逃げ帰って、ドラクローが確認できないことを報告し……て、わたしにこの一件が回ってきたってわけだ。


「誤差なあ…」


**********


「お待たせいたしました」


 駅のホームまでやってきたギルド制服――カーキ色の作業服に、茶色のハーフブーツを履いた、癖があると分かる程度の長さの白髪に、浅黒い肌の男。


「いや……いやまあ、少しは待ったか。ギルド職員のイルジオンで間違いない?」


 聞かなくても髪の毛が同封されていたから「分かる」けど、ここは聞いておく。


「はい。遅れてすみません。ただいまでは迷宮へ、御案内します」

「あーちょっと待て。書類では、行方不明になった迷宮主を探して欲しいと記されていたんだが、それで間違いないか?」

「はい」

「疑問はあるだろうが、次の魔道列車に乗るぞ」

「何故?」

「わたしは迷宮攻略に来たわけじゃない。わたしへの依頼は、迷宮の主を探して欲しいということ」

「そうです」

「あの迷宮に主はいない」

「やっぱり! 魔物の種類が違い過ぎ……」

「ここから、それほど遠くない場所に、前の迷宮主がいる」

「ドロクローですか?」

「待て。向こうでも同じことを説明する必要がある、それはコスぱぁ……じゃなくて効率が悪いから、いまは疑問を我慢してついてきてくれ」

「分かりました…………」


 すっごく怪訝な眼差しを向けられていることに、いまになって気付いた。


「どうした?」

「リビティーナーリウスのクラン紋は」


 ああ、名刺忘れてた。


「それ? わりと目立つから普段は隠してる。これで、納得してくれたか?」


 いつもは鎖骨下に隠している紋を、首へと上げ――ギルド職員らしく、紋が本物かどうかの魔法を掛け、身分を偽っていないかを確認する。


 もちろん本物なので、ぶわっとダークブルーになり光る。


「次のが来た。乗るぞ」


 疑問で溢れているイルジオンと共に、先代(・・)迷宮主の元を目指すために、魔道列車に乗り込んだ。


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