表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
過日の亡霊――転生冒険者と死亡した転生元王女。ただし転生冒険者は現在副業中  作者: 剣崎月
第六章・とある転生者の死後

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/53

【01】

「……で、こちらの誘いを受けてくださるようです」

「そうか。これで元女王が残した危険な魔道具を監視下におけるな」

「はい」

「それにしても、元王女の護衛は弱かったな」


 ルミルレットーバと仕事を話をしているなかで、法廷での映像を思い出し、エルトハルトは呟いた。


「そうですね」


 ユセリラルダ侯爵の護衛ミークは、元は騎士で任務で負傷し後遺症が残ったため、騎士を引退したところを、ユセリラルダ侯爵に拾われ護衛として採用された。


「忠誠心などは高かったかも知れないが、護衛としては役立たずだろう」


 ミークは後遺症が残っている騎士だったこともあり、動きには制限があった。ロテルシト男爵はその制限幅を理解していたので、簡単に殺害することができたのだ。


「ユセリラルダ侯爵は、負傷し引退した者たちの第二の人生を支援する活動もしていたとのことです」 


 ハーラミルリッツがメモを読み上げる。


「その志はいいが、元王女は弱いのだから、負傷で引退した騎士などは護衛にすべきではなかった。金がないのならまだしも、資産を持っているのだから、そこは腕が立つのを雇うべきだったな」


 ユセリラルダ侯爵の考えそのものは間違っていないが、彼女のように恨みを買うことを繰り返し、さらに当人がさほど強くもない者が、本来の五~六割程度の力しか出せない護衛を雇うのは悪手でしかない。

 その「五~六割程度の力」も元の能力――エルトハルトの魔力やオルクスの戦闘力程ならば採用されても問題はないが、ミークは戦闘力減で引退を勧告されたのだから、本当に「いざという時」には役に立たなかった。


「わたしも、そう思います。竜を倒すという目的で、オルクスを雇ったヨトラコル伯爵のように、雇う者は確実を求めるべきです。そうだ、ヨトラコル伯爵といえば――」


**********


 その後――


 ユセリラルダ侯爵殺人事件。現場に残されていた身元不明の二つの遺体のかすかな痕跡は、ロテルシト男爵カルネッセの従者二名だと判明した。



 ユセリラルダ侯爵たちを殺害した魔石を採取した冒険者たち三名は、大法廷当日に、首都近くの迷宮で発見され死亡が確認された。



 ロテルシト男爵カルネッセを「金蔓」と見なし、強請ために男爵邸に赴いたスパルクは、男爵邸で破片が発見された。



 またロテルシト男爵邸からは、ほかにも幾つかの不自然な人の遺伝子が発見され、そのうちの二つが、行方不明届けが出されていたこともあり――捜索範囲がまた広がることになる。


 ただロテルシト男爵カルネッセは、小型録画機初の参考資料に映っていた、手慣れた殺害動作に、今回が初めてではないことは、誰の目にも明らかだったため、調査機関では驚きは極めて少なかった。


 そのロテルシト男爵カルネッセだが、自らが前の国王とヴェデリオン・パールス氏の殺害犯ではないことを立証するために、隠し持っていた証拠を提示する。

 他にも極刑から逃れるため、司法取引を持ちかけており、司法取引するかどうか、機関で話し合いが行われている。



 ロテルシト男爵カルネッセは極刑回避どころではなく、起訴を見送らせようとすらしている。



 半身不随になったメルシュエト・バリオロッシュ。彼は自らの罪を認めた。

 また犯行動機は「祖父の罪を暴かれたくなかったから」と証言している。

 彼によると、ユセリラルダ侯爵は遺体のずさんな復元を行ったのが、彼の祖父だと突き止め、ヴェデリオン・パールス殺害事件に関与していることにたどり着いていおり、まだ存命の祖父に自首するよう勧めるように事件の概要を知らされたのだという。



 祖父が殺人事件に関わっていることを知られることを恐れていた最中、ユセリラルダ侯爵が殺害され――疑惑の目が自分に向けられることを恐れて、今回の犯行を思いついたとのこと。



 エルトハルト・ラッカンネールを犯人に選んだのは、女王の姉を持つことから、死刑にはならないだろうという短絡的な考えによるものだった。



 怪文書の一部「監視カメラに映っていなかった」に関してだが、これは彼の完全な妄想であり、その妄想が「たまたま当たった」だけだったと、ラッカンネール・エルトハルトが正式に発表している。



 メルシュエト・バリオロッシュの祖父に関してだが、すでに身柄は機関に拘束されている。またバリオロッシュ侯爵家の当主である、メルシュエトの父は国際法廷から召喚状が届き――貴族位の剥奪が囁かれている。



 カラブリア国王エスカバーナはラッカンネール・エルトハルトに訴えられ、早々に敗訴し、多額の慰謝料を支払うことになる。

 ラッカンネール・エルトハルトはこの慰謝料を、ユセリラルダ侯爵が立ち上げた冤罪被被害者支援救済基金に全額寄付した。



 ヴェデリオン・パールス殺害犯とされていたガルムロド・アーティホードだが、肉塊となったヴェデリオン・パールスの遺体にガルムロド・アーティホードの魔力残渣がなかったことが証明され、無罪の判決が下された。

 無実を証明されたガルムロド・アーティホードは、彼を信じていたかつてを知る四人の仲間と、彼らの弟子たちから歓喜を持って受け入れられた。

 ガルムロド・アーティホードは、自らの無罪に最初に気づいていたユセリラルダ侯爵に深く感謝し、冤罪被被害者支援救済基金に携わる道を選ぶ。


 そして――


「戻ってこられたのですか」

「いろいろと思うところがあってな」


 五年前の事件で引退していたヨトラコル伯爵シャサイアが、機関に復帰した。


「よろしいのでは?」


 オルクス・バベル・ウィルトゥース・タナトスは笑顔で出迎えた。


「それはそうと、役職なしでよろしいのですか?」

「役職が欲しいわけではないからな」

「で、配属希望はコスパの下ですか」

「コスパ?」

「エリニュスのことです」

「渾名か」

「ええ。言っているのを聞かれると、もれなくえげつない多段攻撃を喰らいますが」

「そうなのか……ああ、そうだ。彼女はわたしが長官だった頃を知らないから、一調査官として扱ってくれると思ってな」

「なるほど……ま、コスパの下が飽きたら、わたしの元へどうぞ。お待ちしておりますので」

「待っていなくていいぞ、オルクス……副参事官殿」

「あなたにそう呼ばれるのも、悪くないですね」

「そうか……いや、そうですか」

「エリニュスの部下になるのでしたら、切欠になる話題があったほうがいいですね。エリニュスには幾つか渾名がありまして。コスパにジタンにインチ。他には迷宮食いに誓約破り返し、バリティタにサルコファガス。あとは――」


 ヨトラコル伯爵サシャイアはオルクス・バベル・ウィルトゥース・タナトスに礼を言い穏やかに笑い、エリニュス・バベル・リビティーナーリウス・ファンタズマが居る、第四室へと向かった。



 その頃第四室では、受け取った人事書類を両手で持ち、自らが部下を持つことを知ったエリニュス・バベル・リビティーナーリウス・ファンタズマがいた。


「部下を連れて調査か……お気軽一人外周りが好きだったんだけど」

「ごめんね、エリニュスちゃん。長官からの命令なの」

「やっぱり、外回りで自由にしすぎた?」

「理由は言ってなかったけど、エリニュスちゃんの実力を買ってのことなのは確かよ」

「褒めてくれてありがとう。ヨトラコル伯爵は長官ほど気難しくはないよね」

「そうね。お優しい方よ、でも自分に厳しいところは、長官と変わらないかしら」

「自分に厳しい派か。自分に甘いわたしとしては……ま、いっか」



「失礼する」



「いらっしゃいませ、長官……じゃなくて、元長官」

「久しぶりだな、ヒルミ。今日のわたしの仕事は?」

「エリニュスちゃんと一緒に調査よ」

「久しぶりなので、勘は鈍りきっていると思うので……よろしく頼みます、エリニュス主幹」


 ヨトラコル伯爵シャサイアが礼をする。その姿に、


「まともな年上が部下になっちまったー。うわぁーどうしよー」


 エリニュス・バベル・リビティーナーリウス・ファンタズマが声を上げ――室内にいる「元長官を部下にするのはちょっと」という当たり前の感性の持ち主な調査官たちが「頑張って」という視線を向ける。


「それはそれとして、調査に行きましょうか」

「はい、エリニュス主幹」

「ちなみに事件は、十年前の感電事故。ユセリラルダ侯爵の目安箱に入っていたものなので、再調査をする……といった感じです。調査の途中で、いろいろな案件が入って、後回しになっていたものですけど……どうしました?」

「十年前というと、わたしが機関の長官を務めていたころで……本当に申し訳ない」


 打ちひしがれるヨトラコル伯爵シャサイアの隣で、秘書官のヒルミとエリニュス・バベル・リビティーナーリウス・ファンタズマは視線を交わし頷き、腕を組んで強引に室内から連れ出した。


「そういえば、二名の従者は?」


 ずるずるとヨトラコル伯爵サシャイアを引きずり、廊下に出たエリニュス・バベル・リビティーナーリウス・ファンタズマは「待機しているのだろう」と勝手に思っていた彼の従者がいないことに驚き尋ねた。


「試験対策中です。採用されたら、部下として伴ってもよろしいでしょうか?」

「あー。それはいいんですけど、無試験で採用にはならなかったんですね」


 そうは言いながらも、無理だろうなと感じていた。


「はい。長官が許してくださいませんでした。ご立派な方です」


『さすちょう』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ