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過日の亡霊――転生冒険者と死亡した転生元王女。ただし転生冒険者は現在副業中  作者: 剣崎月
第五章・過日の亡霊――亡き元王女に捧げる正義の亡霊

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【05】

 昔の事件って調べるのが大変。でも、これがしたくて、カラブリアに来たのだから、楽しい! 不謹慎? いくらでも不謹慎の誹りは受けるさ。誹りを受けるだけで、こんなにも楽しいことができるのなら、いくらでも!


「そして最後の魔力紋が、先代国王の従者のものと推測されます。先代国王の当時の従者が誰か? を詳しく調べている時間はありません。手元に照合できる登録情報はありませんし、この状態では王家に資料を求めるのは不可能……と思ったのですが、見つけることができました」


 長官を有罪にすることしか頭にない国王もそうだが、国王の元に怪文書を届けた人物――王宮に出入りできる人物、もしくは国王に怪文書を届けることができる人物と近しい者。

 下手に近づくと、情報を求めたことがバレる。これは避けたかったので。


「見つかったのですか?」


 裁判長は「まっとうに」頭がいい人なので、機関が王家に情報を求めなかった理由を、すぐに察してくれた。


「はい」

「見つけたのか?」


 クアルバーグ参事官は思わず声を漏らす。参事官も王宮資料抜きで三十年前に死亡した先代国王の”その当時”の従者が誰かを見つけ出すのは、大変だろうことは分かっている。


 下手に貴族に聞けないしねえ。情報が漏れたら困るから。


「はい、辿り着きました」

「……申し訳ございません、裁判長」


 法廷内で勝手に喋ってはいけないので、参事官は謝った。


「いいえ。クアルバーグ参事官はご存じなかったのですね」


 裁判長は許してくれたが、長官の視線が険しすぎる。これはもう、減給ですわ。くっ! 参事官かわいそうに……金持ちだから、給与は別に必要ないだろうけど。


「時間ぎりぎりだったので、全員がすべての情報を共有して大法廷に臨むということができなかったのです」


 ”減給でも強く生きてくれ”と思いながら、大変だったんですよーと裁判長に語る。


「そうですか。機関側で情報を共有しなくても、大丈夫ですか?」


 最初の頃と比べて、裁判長も随分と緩くなってきた。ありがたいことだ。


「お心遣い、ありがとうございます、裁判長。それでは……裁判長への説明という体で、最後の一人にたどり着いた経緯を語らせていただきます」


「お願いします」


「証拠として採用されておりませんが、ヨトラコル伯爵は半年以上前にユセリラルダ侯爵から、パールス氏殺害事件について聞かれた。その時、侯爵はロテルシト男爵を警戒していた。そしてパールス氏の遺体を調べたあと、ロテルシト男爵のことを警戒しなくなった。今までと変わらず、屋敷に通したことからも分かります」



 ユセリラルダ侯爵殺害事件は、彼女が優秀だったことが原因の一つに挙げられる。



「なぜユセリラルダ侯爵はロテルシト男爵に屋敷の立ち入りを許可したのか? ユセリラルダ侯爵はロテルシト男爵がパールス氏殺害犯ではないことを知ったからに他ならない。すなわち殺害犯に辿り着いた。ロテルシト男爵は犯人ではないので、今まで通りの付き合いに戻した。その結果、ユセリラルダ侯爵は殺害されることになるのですが……真実にたどり着いたせいで殺されるということを、たまには聞きますが、これはよく言われる真実にたどり着いたら殺害されるとは、かなり違うものですが、そのようにしか表現できません」


 事件の聞き取りをしていたエンワークがロテルシト男爵に、この一件を語ったのが原因なので、遅かれ早かれ殺されていたことだろう。


 ロテルシト男爵は傷口に残った自分の魔力紋に気づかれた……と思っての犯行だろう。傷口もなにも残ってなかったんですけどね。


「なるほど。たしかにそれなら、ユセリラルダ侯爵がロテルシト男爵を以前と変わらず邸に招き入れても不自然ではありませんね。参考映像からもそれはうかがえます」


「はい。真実にたどり着いたということは、パール氏の遺体を復元した人物にも辿り着いた。逆に言うと、真実に辿り着くまでロテルシト男爵に助力を求めることはしなかった。だが真実に辿り着いたため、ロテルシト男爵との関係を今まで通りに戻した。これは侯爵自身が手に入れられる証拠だけで、犯人に辿り着けたという証明でもあります」


 侯爵にはその他のアドバンテージがあったかも知れないが、それについて語ったところで、どうにもならないし証拠もない。


「そうなりますね」

「我々よりも圧倒的に手持ちの資料が少ない侯爵は、どこから情報を入手したのか? それは”侯爵はある事実を思い出した”ことです」

「ユセリラルダ侯爵が思い出した情報が起点になったというのは、あなたの推測ではありませんか? ファンタズマ氏」

「いいえ、裁判長。証明できます」

「では、お願いします」


 わたしは再び”真実の愛とはなんでしょうか?”を手に取り掲げる。


「それは”真実の愛とはなんでしょうか?”に書かれています」


 これを掲げるたびに、元婚約者と可愛そうな異母妹と、証人控え席に座っている【特技:証拠偽造】が小刻みに震える。


 羞恥っぽいけど、お前らがやったことだ!


「また、それですか」

「はい。十五年前、学園で起こった断罪。異母姉にいじめられている、かわいそうな異母妹のために立ち上がった彼ら――当時最高裁判所長官だったバリオロッシュ侯爵の息子メルシュエト氏が証拠を集め、機関調査員の真似事をした記述があります」

「少々お待ちください、ファンタズマ氏」


 裁判長がクールベイト裁判官を呼び、本を指さして尋ね、クールベイト裁判官が強く頷く。めちゃくちゃ頷いて……からの、証人控え席にいるバリオロッシュに汚物を見るような視線をぶつける。


 クールベイト裁判官からしたら、汚物以上だろうなー。


「確認いたしました。続けてください」

「この場面も、実際にあったと確認が取れています。何故裁判官の息子が調査機関の真似事をしたのか? 小説にはこう(・・)書かれています”彼の祖父は調査機関の長官を勤めたことがあるから、調査には長けている”と――侯爵の元婚約者リーノス氏は、ユセリラルダ侯爵に言い放ちました。この台詞のあとに”調査機関にいたのは祖父で、あなたはには何の関係もないじゃない”と、侯爵が内心で突っ込む場面があります。わたしも侯爵と同意見です」


 貴族って祖先の役職をさも自分のものの様に言うよね。まあ、初代が武人なら軍門というのが貴族だから、当然の思考なのかも知れないけれど。


「わたしもユセリラルダ侯爵と同意見です」


「裁判長と同意見で嬉しい限りです。では続けさせていただきますが、調査したところメルシュエト・バリオロッシュ氏の祖父が機関の長官だったのは事実で、ヴェデリオン・パールス氏殺害事件が起こった直後に機関長官に就任し、三か月後にその地位をロテルシト男爵に譲り、裁判官に転身して爵位にふさわしい役職として、最高裁判所の長官となりました」


 ロテルシト男爵の前の機関長官は、すぐに変わるので、特に疑問は持たれなかったと、ヨトラコル伯爵が言っていた。


「続けてください」


「現バリオロッシュ侯爵の父で、いま証人控え席にいるメルシュエト氏の祖父に焦点をあてて調べたところ、機関長官に就任する前は、先代国王の傍に控える治癒師であり従者であり、ウェイヨウィス神官の知り合いは大勢いる人物でした」


「……続けてください、ファンタズマ氏」


「はい。わたしが”侯爵は思い出した”と述べたのは、ユセリラルダ侯爵は卒業式で行われる、粗末な断罪喜劇を察知し準備していた。これも”真実の愛とはなんでしょうか?”に書かれています。ただ詳しく”なになにを調べた”とは書かれていませんが、()は貴族ですので家系や一族の役職について調査した……のではないかと思います。そこでメルシュエト氏の祖父に辿り着いたのではないかと」


「確かに、彼らについて調べたという記述がありますね。王族が貴族について調べたと記述しているのでしたら、家系や役職は調べた可能性が高いですね」

「貴族である裁判長にそのように言ってもらえて、自信が持てました」

「続けてください」


「メルシュエト・バリオロッシュは、断罪劇の際に”証拠を捏造して侯爵を追い詰めた”。侯爵は追い詰められてはいなかったと”真実の愛とはなんでしょうか?”に書かれていますが。そしてこの一件は、裁判にならずに終わった。当時の最高裁判所長官は、意気揚々と捏造証拠で当時の王女に非礼を働いた人物の父親ですから、裁判などできなかったと思われます。また正式な裁判に持ち込まれたら侯爵は”負けた”はずです」


 当時の裁判は人治裁判。

 最高裁判所長官は、息子を擁護もだが、国王に疎まれている王女に対して、正しい裁判を行うなど考えられない。


「これに関しては、ファンタズマ氏の推測だとしても、認めざるを得ません。あの状況で裁判を起こしても、ユセリラルダ侯爵は負けていたでしょう」


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