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過日の亡霊――転生冒険者と死亡した転生元王女。ただし転生冒険者は現在副業中  作者: 剣崎月
第四章・過日の亡霊――亡き元王女により暴かれた過去

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【18】当日に撮影された映像

 ドアをノックする音が響く。


「いいわよ」


 ユセリラルダ侯爵が声を掛けると、シンプルな作りのドアがゆっくりと開く。

 そこにいたのは、ロテルシト男爵と従者のファミーヌ。

 ファミーヌは車輪と持ち手がついた、荷物運びに便利な箱を持っていた。


「お久しぶりにございます」

「久しぶりね、ファミーヌ」

「主は迷宮で喉を少しやられてしまい、わたしが代わりに挨拶をさせていただきます」


 ユセリラルダ侯爵の招きに応じ、室内に足を踏み入れたロテルシト男爵と、彼の従者ファミーヌ。

 がらがらという音を立てながら車輪が床の上を滑る。ファミーヌが運んでいたケースに、ロテルシト男爵が手を伸ばし――車体と持ち手をつないでいる軸の中から、鈍色の刃が現れた。

 その刃――剣を持ったロテルシト男爵は、自分の隣にいた従者のファミーヌの側面を腕ごと貫く。


 その刃は肉が締まる前にすぐに引き抜かれ、大きく一歩踏み出す。

 ユセリラルダ侯爵の護衛ミークが自分の武器、刃幅が大きめでやや湾曲している短剣を抜いて、ロテルシト男爵に飛びかかる。


 ミークの膝から下の両足が、一瞬にして吹き飛んだ。


 肉片はすべて後方に飛び散り、衝撃により空中で体勢を崩したミークは、床にべちゃりと落ちる。


「あっ……あ……」


 ユセリラルダ侯爵の途切れ途切れの声。


 画像の端に映っていたバッジドゥが立ち上がり――彼の動きた特段遅いのではない。

 彼はいつも、来客に対応することなく作業をしていた。

 この部屋にやってくる者は、誰もが彼のその行動をとがめなかった。だから、この時も、ミークが床に落ちるまで気づかなかった。


 椅子から立ち上がったバッジドゥだが、彼とロテルシト男爵の間に武器になるものはなにもなかった。


 彼はその身をロテルシト男爵の前にさらけ出し、ユセリラルダ侯爵の盾になることしかできなかった。


 画面を一瞬覆う濃紺。それはすぐに下へとさがり、画面から消えた。画面が下を向くと、バッジドゥの両足も、先ほどのミークと同じように膝から下が失われていた。


 そして画面に飛び散る黒みを帯びた血。

 画面はぐるりと周り、どっ! という、物体がぶつかる音とともに、床を映し出す。


「はぁ…………ごぼっ、ごっ……ひゅ、ひゅ……ひゅ……」


 空気を吐き出すような声。液体が吐き出される音、そして管が哀れに泣く。

 そこから足音が遠ざかり――何かが這う音がかすかに聞こえ、腕だけで体を運ぶバッジドゥの姿が映った。

 彼の手のひらが画面を覆い、ユセリラルダ侯爵の眼鏡を掴む。その手は床を滑らせるように眼鏡を投げた。

 眼鏡は黒いなにかにぶつかって止まった。画面に作りのよい靴――貴族男性が履くような靴が映り、その靴は眼鏡を蹴り飛ばし、画面はくるりくるりと回る。


 画面の動きが止まり――ロテルシト男爵がバッジドゥが座っていた機器の前で、監視画面に手を加えている姿が映る。長いような短いような時間が流れ、ロテルシト男爵は持ってきた箱を開けて魔石を握り、瀕死のファミーヌ、ミーク、バッジドゥ、そしてユセリラルダ侯爵の襟元から魔石を押し込む。


 そして魔石を蒔き、その上に彼らを積み上げる。一番上はユセリラルダ侯爵だった。


 画面の端で青白い光と赤い光が入り交じる。魔石の連鎖爆破に用いる魔法と、すぐに連鎖爆破しないための保護魔法、この二つを施し、それらの魔石が入っているケースを、ユセリラルダ侯爵の上に乗せ、刃物を手に画面から消える。


 窓が開くような音、そしてもう一度同じ音。


 少しして振動により画面がわずかに揺れ、そして室内は光に包まれた。光はすぐに消え、画面には爆破直後の部屋が映し出される。


 画面の端にはかすかに陰が映り込み、そして消えていった。


 余波で小さな瓦礫が、からん、からんと音を立て、ひびの入った床が大きな音を上げて亀裂が広がる。



 ふんわりとした焦げ茶色のロングヘアに、機関の制服――黒のズボンに黒いワイシャツ、赤いネクタイに光沢ある深緑色のベストを着用した人物が現れ、右手を前に出して、すぐに画面から消えた。


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