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過日の亡霊――転生冒険者と死亡した転生元王女。ただし転生冒険者は現在副業中  作者: 剣崎月
第一章・とある転生者の死

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【04】

「殺害現場は、侯爵の邸の敷地内だ。至る所に監視カメラがあるんじゃないのか?」


 侯爵の邸は、監視カメラが設置されていた。


「はい。たくさんあるので、まだ犯人が映っている映像が見つけられていないとか」

「あーそっちか」


 証拠がたくさんあって困るほうか。映像確認に時間かかりそうだな。


「侯爵の工房の職人たちに、映像の確認を依頼するかしないかで、長官と副参事がもめているとか」

「工房の職人に殺人事件調査なんて、エルトハルト長官が許すわけないよな。クアルバーグ参事官も理解しようよ」


 これに関しては、長官が正しい。

 工房の職人や使用人が犯人の可能性があるんだから、証拠品を触らせるわけにはいかない。

 ただ……あの爆破規模を出せるほどの、魔法が使えるような連中は、見た限りではいなかったけどなあ。

 魔石の爆発であろうとも、叩きつける魔力はある程度必要になる……いや、魔石の配列で、僅かな魔力でもあの程度の爆発はできるけど……普通はしないと思う。

 わたしも研究したことあるけど、結構面倒だ。

 魔石のエネルギーの流れとか、性質とかを考慮して並べるんだけど、これがもう面倒でさ。

 でも魔道具の開発しているから、魔石配列計算くらいはできるか? ……ま、正しい方法で頑張ってください、長官。


「そうですね。だから解析員不足で。多少時間はかかりそうですけれど、犯人さえ映っていたら」


 新人が気楽な台詞を吐いているが、


「映ってりゃあいいけどな」


 そう上手くいかない気がするんだよな。


「不吉なこと言わないでくださいよ、エリニュス主幹」

「不吉というか、侯爵の研究所に多数の監視カメラが設置されているなんて、誰でも知っていることだろ。屋敷を訪問したことがないわたしだって知っている」


 監視カメラを開発したのが侯爵本人で、それを邸で試し、徐々に街中にも広げ……ということをしている。

 監視カメラのお陰で、窃盗犯が見つかったという話はよく聞いている。


 残念ながら、監視カメラの映像は裁判では証拠として認証されてないけどね。なんで? そりゃ、うちの長官が承認してないから。

 この世界では、調査機関が承認しない限り、裁判所は証拠として認めてくれないのさ。

 だから逆説的に映っていても大丈夫……いやまあ、調査の手がかりにはされるけど。前述の窃盗犯も、犯人が割れてから調査を開始して、別の証拠を見つけて裁いている状態。


 すでに何人も監視カメラの映像が元になって見つかり、裁かれているから、今回の殺人犯も映らないように、動いていると思うんだ。


「そうですね」

「侯爵の研究所を殺害現場に選んだ。それも大量の魔石を持ち込んだ……ってことは、事前に計画していたはずだ。だとしたら、監視カメラの目をかいくぐっている可能性が高い」

「死角なしに設置しているのでは?」

「室内をざっと見たところでは、そこまで室内にカメラは設置されていなかった」


 わたしは庭から室内に侵入したから、本来の通路にはみっちり監視カメラが設置されているかもしれないが……どうだろうな?


「どうしてでしょう?」

「監視カメラの映像を確認する人員の問題だろうな。あと記録媒体の保管場所とか」


 確認はそのうちAIでも開発する予定……かどうかは知らないが、記録媒体の保管場所も大変だろう。

 クラウドとか作る予定だったんじゃないかな。侯爵が転生者なら。


「ある意味、初動捜査で監視カメラ映像に重点を置いていない、エルトハルト長官の調査方法のほうが、着実じゃないかと思う。もちろん、監視カメラを確認するのは、絶対だけどな」


 でもあの長官は、監視カメラの映像を調べようとしないかも知れない。まあどれほど映っていても、長官が証拠だと認めなければ証拠にならないんだけどさ。


「やっぱり恨みを買ってたのかな」

「犯罪者というよりは、貴族たちに」

「あの貴族のほとんどが関わっていた事件な」

「あの事件で活躍した小型録音機」

「あれでユセリラルダ侯爵は、犯罪調査の魔道具も凄い! って名声が高まったんだよなあ」

「録音は証拠採用なのに、監視カメラの映像は……」

「小型録音機は前の長官が承認したからな。そしてお辞めになった」


 わたしが来る前の事件だし、貴族の関連性が分からないと、話が全く解らないので事件資料を読み込んだことはないが、今や機関調査員の標準装備となっている魔力で動くボイスレコーダは、証拠としても採用されている。


 採用したのは前の長官で、そのボイスレコーダの音声により貴族が次々と罪を曝かれ、直接関係はしていないが、貴族だった前の長官は引責辞任した。


 先代長官本人は本当になにも関係していなかったんだが、いいところの貴族だったのが禍した。たしか伯爵だった……うん、たしか。二代前の長官が男爵で、前の長官が伯爵。現長官? 別の国の大公爵だ。


 だんだん階級が上がってる。三代前の長官? 知らんなあ。


「おい、お前等」


 情報交換とは到底言えない、駄弁りながら夕食をあらかた食べ終わったところで、


「お疲れさまでーす、オルクス副参事官。今日から徹夜続きですね、頑張ってください」


 侯爵の一件が片付くまでは、参事官の仕事を代理でこなすことになる副参事官が現れた。


「今日だけ徹夜だ。人手が足りないから、お前たちにも仕事を割り振るぞ」


 第四室は遊軍みたいなものだから、人手が足りなくなったら、こうやって使われる。


「はーい」

「来ると思って、今日は定時で帰らず」

「残業届も書いてました」

「晩飯もしっかり食いました。もちろん経費で」

「わたしなんか、シャワーも浴びたもんね」

「エリニュス主幹なんか、現場から戻ってきたあと、仮眠とってましたよ」

「徹夜になることが一目で分かったから、夜に向けて英気を養っておいた」


 勝ち誇ったポーズをとったら、


「おまえ、それ勤務時間内だろが。まあいいが」


 ”おいおい”って表情されたが、お前もいつもそうだよな? そんなオルタナ(・・)が次々と仕事を振り、


「……で、エリニュス主幹。お前は夜の街で聞き込みだ」


 最後にわたしに振られた仕事は、所謂夜回り。


「酒飲んだほうがいいか?」

「酒が入ったほうが、口は軽くなるからな」

「酒嫌いなんだよな」

「知ってる。それで、お前に言うのもばかばかしいが、義務として言っておく。侯爵を殺害した犯人が、うろついている可能性が高いから気を付けろ」

「王都を出た可能性は?」

「さあ。そっちは、俺の部下が追っている」

「こんなにか弱いわたしに、もっとも危険な任務とか」

「お前ならアンデッドになって情報を持って帰ってこれるだろ」

「ひでぇ。殉職なんてしたくないから、ここで仕事してるんですよ」

「じゃあ死ななきゃいいだろ」

「てめーで囮になろうと思わんのかな? オルクス副参事官」

「俺じゃあ強すぎて、万が一にも敵が襲ってくることはないからな」

「うわ、ただの事実で笑うしかない。はいはい。それでは夜の見回りに行ってきます」


 人に話を聞いて歩く仕事でなければ、夜空を見上げたまま歩き回れるのだが――


 酒を飲んでもいいか? と聞いたが、わたしは特に酒が好きなわけでもないので。酒が入るとみんな口が軽くなるから――ということで、酒場を渡り歩いたり、人気のない路地裏に入ったり。


 なぜ路地裏に入るのか? 情報を持っているが人目が気になる人が、話し掛けやすくするためだよ。

 ごみなど落ちていない裏路地――掃除が行き届いているのではなく、裏路地の住人は貧乏なので、ごみになるようなものを持っていないし、なんならごみが、生活用品なので路地には何も落ちていない。

 そんな中を、機関の制服を着て歩いているのだから、なにか情報を持っている者は、近づいてくるだろう。

 もちろん、人気が無いので襲われる確率も上がるが、それは込みだ。


 酒場と裏路地を行き来し――とくに情報は集まらなかった。


――犯人はどうやって移動したのかな……いや、移動方法はいくらでもあるから、どれを選んだのかが……


 最後に少し高級な酒場へ。


「ゼブンズ」


 重厚な作りのカウンター席だけの酒場の端で、昼間会った冒険者ギルドの支配人、ゼブンズがグラスを傾けていた。


 ゼブンズの隣に腰を下ろした。


「同じものを一つ」


 どうやらゼブンズが奢ってくれるらしい。



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