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過日の亡霊――転生冒険者と死亡した転生元王女。ただし転生冒険者は現在副業中  作者: 剣崎月
第四章・過日の亡霊――亡き元王女により暴かれた過去

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【17】

「ユセリラルダ侯爵の室内を爆破する。それは自らの侵入経路を消すため、そして退出する際に、降下する姿を人目につかないようにするため。もしも犯人が飛行魔法を使えるのならば、そもそも爆破などする必要がない。密かに殺害して速やかに飛び去ればいいだけのこと。誰かを雇って魔石を入手して、運び込んだり陽動口に設置したり……そんな面倒なことをする必要はない」


「そうですね」


「ただ犯人は小型録画機については知らなかった。瀕死の彼らはそれを知っていた。そして、助からないと悟ったその場にいた者たちは、エルトハルト長官の元にある、録画機に送られている映像に賭けた。裁判長、映像再生を許可いただきたい。エルトハルト長官の冤罪を晴らすために」


 犯人としては上手くいったと思ったのに、眼鏡と眼鏡の鎖が小型の録画機だったなんて想定外だっただろう。


 傍聴席で死にそうな顔してるなあ。


 なんで最後に賭けに出たこと、映像を見てもいないのに知っているのかって?

 それは眼鏡の位置が不自然だったから。

 ユセリラルダ侯爵は証拠収集器具として採用されるため、録画機能を稼働、眼鏡として使用していた。使用に関しては血痕が証明している。

 直前まで身につけていた眼鏡、それも眼鏡チェーンというずり落ちただけでは、体から離れない状態。

 さらに眼鏡チェーンも切れてはいないし、なによりダメージが少ない。眼鏡が負ったダメージのほとんどは余波によるもの。

 そこから考えられるのは、眼鏡は爆破の中心部にはなかったということ。

 そうなると「誰か」が、最期の力を振り絞って外して遠くに放り投げた。そのときに、少しでも情報を……というのが自然だろう。


「分かりました。ユセリラルダ侯爵が作った小型録画機の性能を、わたくしも見てみたい。監視員立ち会いのもとになりますが、再生を許可いたします」

「長官の魔力で動く設定になっているかもしれないので、長官の魔力使用許可、及び会話の許可をお願いします」

「わかりました。エルトハルト氏の魔力使用と、説明等の受け答えや会話を許可いたします」


 クールベイト裁判官が立ち上がり、裁判長の元からトロフィー……じゃなくて、録画再生機を運んできてくれた。


「期待しています」


 クールベイト裁判官から、小声で声援をもらいながら録画再生機を受け取り、二人で長官の元へ。


「持ち込み許可を取っていた、机を運び込みます」


 オルクスが机をもってやってきた。長官の前に机を設置して、机の上にトロフィーにしか見えない再生機を置く。

 いつも通り、ルミルレットーバ首席秘書官が隣に立つ。


「わたしは”こういうの”は分からないぞ」


 長官が言わなくても、誰もが理解している台詞を!


「そうでしょうね」

「エリニュス、お前なあ!」

「侯爵が派手な装いを好まないことを皆が知っているように、長官が侯爵が作った魔道具に興味がないことも知られています。なんなら、憎んで殺害すると思われるくらいに」

「殺害すると思われているのは、甚だ不本意だが、興味がないのは事実だ」


 本当に興味がない人だからなあ。


「そんな長官を説得しようとするとき、侯爵はどうするか? を、考えます」

「どうするのだ」

「限りなく簡単にします」

「限りなく簡単?」

「純青石は受信と録画専用の魔石なので外します」


 三分の一くらい出ている、丸い魔石をつかんで外し、そいつをクールベイト裁判官に手渡す。


「外れたな」

「はい。長官、純白石に似た魔力を、この縁に流してください」


 本来なら純青石が嵌っていたところに、純白石を嵌めるはず。


「純白石か。波形と種類は、これでいいか?」


 長官ときたら、簡単に純白石の魔力を作った。さらっと、簡単にやった。それも手をかざすなんてしなくてもいいくらい。

 すごいなあ、空間を介すると多少ぶれるもんだけど、


さすちょう(流石長官)!」


 長官の魔力に変質は一切ない!


「エリニュス、今の言葉、あとでしっかりと説明するように」

「えー」

「それはともかく、どの程度流せばよいのだ? 五タラントなど、考えたこともない」

「それはそうでしょうね……長官の前髪を風が軽く揺らす、その風のような感じで」


 わたしの五タラント・純白石のイメージを伝えたが……長官の魔力量が桁外れ過ぎて、機器に流していいのかどうか不安しかない。


「分かった。これでどうだ?」

「全然駄目です! というか、怖いです! 壊したら終わりなんですから」

「別に壊しても良かろう。おまえなら、他の証拠も用意しているだろう」


 うん、この映像が証拠として採用されないことは分かっているから、他も用意はしていますけど!


「そうなんですけど!」


 侯爵の見積もりが甘かった……のか?


「裁判長、話し合い時間を請求いたします。許可をお願いいたします」

「クアルバーグ氏からの請求を認めます」


 突然クアルバーグ参事官が、裁判所での話し合い時間を申請し――大法廷はこういうことも出来るんだ。


「実はユセリラルダ侯爵閣下から、長官との面会の際エリニュスを同席させて欲しいと言われていたんだ」

「わたしですか?」

「ああ。エリニュスなら長官の魔力を調整してくれると考えた……他に、実はユセリラルダ侯爵閣下はエリニュスに会って、話をしたがっていたから、きっかけ作りにもなるかと」

「なんでわたしが他人の魔力の調整できることをご存じで?」

「バビロンでもっとも有名な魔道具師イポホロスとエリニュスが同一人物だと、ユセリラルダ侯爵閣下に伝えたからだろう。バビロンのイポホロスの魔力調整は、バビロンでは知っている人は知っていると」


 クアルバーグ参事官、ユセリラルダ侯爵にそんな話してたの! それなら頼りにされるかもなー。そして知っている人は知っている……クラン内ではね!


 おまえは特級魔道具師コスパ・ジタンじゃないのかって? それは内輪の呼び名で、外向けに売っている魔道具に銘を刻むときはイポホロスって名乗ってる。

 わたしは自分でコスパ・ジタンって名乗らないからな! 自分で名乗っておきながら、オルタナをすり潰してたらバカじゃないか!


 それはそれとして――


『正式名称を伝えたんだ、褒めてくれよ』

『褒め……この場合は”特級魔道具師コスパ・時短(ジタン)”のほうが良かったかもな』


 コスパ・ジタンやトッキュウを聞いていたら、侯爵はわたしと前世を同じくしているのでは? と気づいて未来が変わった……。いや変わらないな。オルタナがそのとき名前を出さなかった。未来確定ギフトを持つ男が、その時に言わなかったということは、わたしと侯爵は会わないで終わる運命だったんだ。


『珍しいな』

『いろいろな』

『褒めてもらえると思ったのに、残念だ』

『大勢いる恋人に褒めてもらえよ』

『恋人なんか、いないが』

『そいつは、知らなかった』


 面会予定日にわたしはドロクローの一件で出張していたけれど、あっちが確定未来だったってことだ。


「時間終了です」


 裁判長から話し合い終了が告げられる。


「分かりました、長官の魔力をわたしが制御すればいいんですね」

「自分で言っておきながら言うのもなんだが、おまえの魔法の使用許可は下りないぞ、エリニュス」

「体内自動発動なら裁判長の許可がなくてもいけますから。その手の準備は冒険者の基本装備でいつも万全ですので、ご心配なく。長官、お手をどうぞ」


 長官が不本意な表情を隠さないで、わたしの手のひらに手を乗せた。一応加減はしてくれているようだが……わたしの直感、当たってた。これ乗せたら、ぶっ壊れてた。


 那由他の向こう側の世界が見えそう……絞ってこれか。


 わたしが手の甲をそのまま機器に乗せると、空中に画面が浮かぶ。

 右上の端に「_ □ ×」という、見覚えあるアイコンが!

 画面にフォルダが現れた。フォルダ名は日付で、一日ごとに新しいフォルダが作られる仕組みらしい。

 想像通り、殺害される数日前から録画を初めてたようだ。


 ………あれ? カーソルは? もしかしてタッチパネル式かな? 可能性にかけて触れてみたが、駄目だった。


「ここで侯爵が、使用方法を解説して下さったはずですが、わたしたちには分からないので、ラパチノール氏の立ち合いをお願いします」


「ラパチノール氏、お願いします」


 裁判長に呼ばれたラパチノールが、本気で困った表情に。あれ? もしかして、知らない? バッジドゥと侯爵しか知らなかった?


「その”ふぉるだ”を開くのには”まうす”が必要になります。”まうす”は動きがやや悪く……直前まで、バッジドゥと調整を重ねていたようなので」

「爆破でなくなったと。予備はありますか?」

「ありますが、機関から証拠品として求められなかったので、提出しませんでした」


 なるほどなー。事前に確認しなかったのが、ここに来て仇となった――が、わたしには侯爵と同じ記憶がある。


「どうするつもりだ? エリニュス」

「長官。一度、魔力を引いてください」

「分かった」

「ラパチノール氏、ユセリラルダ侯爵が言う”まうす”とは、どんな感じでした?」


 聞かなくても、完璧に分かるんだけど、聞かないで再現しようものなら、あとで長官に何言われるか! オルタナにどれほど絡まれることか! 勘が鋭いのよ、この人たち。


「片手にすっぽりと収まるような形で、人差し指や中指で、画面に現れた矢印を動かすものでした」

「なるほど」


 知ってるけどね。有線か無線か? おそらく有線だな。無線だと、電池替わりに魔石が必要になるし、魔石を持ち込む場合、細工されていないかどうか? 前もって確認しなくてはならないから、面会日より前に申請を出さなくてはならない。

 有線マウスは前世の記憶(共通知識)から、低い位置に差し込み口があるのは分かるから……土台部分にあった。


 よし! 無理やり無線マウスにする。マウスそのものも、わたしのイメージの産物で動かす。


 このイメージは、製作者の侯爵と同じだから、動くはず!


「長官、もう一度お願いします」

「分かった」


 長官の魔力で動き出し、画面にフォルダが再び現れ、カーソルも出た。


「この矢印ですね」

「はい」


 机に手を乗せてマウス触っている風に動かすと、画面のカーソルがイメージ通りに動いた。


「動きは、こういう感じで正解ですか?」

「正解……なのでしょう。バッジドゥが作ったものは、もっと動きが悪かった」


 反応速度が悪かったのか。


「とにかく、こんな感じで? この日付が書かれている部分に触れれば、映像が見られるということで?」

「はい」


 ラパチノールには席に戻ってもらい、


「少し待ってくださいね、長官」

「なにをする気だ?」

「他の皆さまにも見えやすいように、この画面に千里眼をつないで、高い位置でも見えるようにします。あとは、全方向に見えるように四面くらい作りますか」


 長官に説明するための画像なので、傍聴席はともかく裁判席についている裁判官たちに見えなくては意味がないので、この画面とリンクできる画面を作って空中へ。

 法廷がコロッセオなので、全面に見えるように。


「裁判長、見えますか?」

「はい、よく見えます」


 画面も整った、さてフォルダをクリックして……


「エリニュス、お前本当にこの魔道具の開発に、関わってはいないのだな?」


 机に手を置いたら、長官に声をかけられた。


「関わっていませんよ」

「それにしては、すぐに適応するな」


 疑われている! ……疑われても仕方ないか。


「わたし、魔力が低い人の考え方を、長官よりは知っているので。低魔力の人は、ここではこうするだろうな? って、なんとなく分かるんです」

「コスパのハザマか」

「ええ……まあぁ」


 こんな真面目な場所で、その名称を出さないで欲しい。


「魔力が低い人間の思考を読める……思考の幅が広がるということか。おまえの摘発が完璧なのは、それもあるのか。そうだな、犯罪者は総じて機関調査官よりも魔力が低いのだから、その思考を読まねば…………」


 長官が目を閉じて考えこみ始めたけど、これから映像を見るんですよ。目を開けてください。


「裁判長、それでは初めてもよろしいでしょうか?」


「始める前に一つだけ。エルトハルト氏ではありませんが、ファンタズマ氏は本当に、それらの開発に関わっていないのですね?」


 裁判長にも疑われた。なめらか過ぎた? もう少し苦心したポーズとった方がよかった? でも、まだまだ裁判続くんで、ここで時間使いたくないんですよ!


 いいとこまで来てるように思うだろ? だが、こっからが本番なんだよ! まだ終わらないんだよ! だから黙って見てろ、バビロンの素人ども!


「関わっていません。宣誓しましょうか?」

「結構です。では、始めてください」


 侯爵が殺害された当日のフォルダを開くと、画面が暗転し、少々のタイムラグがあってから、


『録画は心配してないんだけど』


 画面にはショートカットの女性が映り、その女性とは別の女性の声が流れた。室内が映し出され、ノートパソコンにしか見えない物体を操作している前にいる男性の横に立ち、前かがみになる。


『申し訳ございません』


 男性の声が聞こえる。

 ここで、一度止めて、


「裁判長。ラパチノール氏に尋ねたいことがありますので、証言台へお願いします」

「分かりました。ラパチノール氏、証言台へ」


 証言台に立ったラパチノールに、青髪ショートカットの女性と、話している女性、そして男性について尋ねる。


「最初に画面に映ったのはミークという護衛、話し声はユセリラルダ侯爵で、謝罪しているのがバッジドゥです」

「室内で死亡が確認された四人のうちの三人ですね?」

「そうです」


 侯爵が室内を見まわしてくれたら、もう少し情報が入ってきてくれるんだけど、この時は「もうじき自分が殺される」なんて思っていないから、こうもなるよな。


『認識が弱いのね』

『そうです』


 バッジドゥと侯爵はパソコン画面を覗き込み、カクカクな動きのマウスカーソルについて、話し合っていた。


『リビティーナーリウスのエリニュスさんの千里眼記録は、他人でも映像に触れて、戻したり先送りしたりできるって……やっぱり。話を聞いてみたい』


 おうあ? わたしの話題? 長官を見ると目が合ったが、すぐに視線は画面に戻った。あ、長官いつのまに目開いた。


一家(クラン)を通さないと無理よねえ』

『そうですね。リビティーナーリウスの長スムマヌスに会うのも難しいようで』


 護衛のミークも会話に混ざってきた。そしてスムマヌスかあ……そんなレアキャラじゃないから、簡単に会えるけどね。


『カフェによく現れるようですが』

『仕事中に声をかけて、エルトハルト氏の不興を買うのは……これ以上ないほど、不興を買っているのだけれど』


 よく分かってるじゃないか、侯爵。


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