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過日の亡霊――転生冒険者と死亡した転生元王女。ただし転生冒険者は現在副業中  作者: 剣崎月
第四章・過日の亡霊――亡き元王女により暴かれた過去

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【14】

 わたしが裁判を楽しんでいる同郷の奴らに説明している間も、裁判は進んでゆく。


「ラパチノール氏。いまのファンタズマ氏の発言に異論、もしくは訂正などはありますか」

「ございません。その小型録画機は、かなり魔力を消費し、さらに高等な魔力操作を必要とするものなのですが……裁判長や機関上級調査官ならば微々たるものかもしれませんが、魔力があまりない者たちが使うとしたら、魔石が必要になります。魔石で動かす場合は、上質な魔石と魔力の流れを制御する特殊な管が必要でした。それを置物と違和感なくするためにはどうするか? ……といった話を、ユセリラルダ侯爵閣下から聞いておりました」


 かなり魔力を含んだ魔石が必要という証言も取った。


「ありがとうございます。ではファンタズマ氏、お願いします」


「はい、裁判長。話が戻って恐縮なのですが、カフェの店員やフォーロウ通りの人たちが、侯爵の眼鏡が記憶に残っている原因の一つに、非常に煌めき輝いてている眼鏡の鎖を付けていたことが上げられます。侯爵はあまり宝飾類を好まないので、目立っていて記憶に残ったとのことです」


 転生した貴族令嬢は、キラキラしたものを嫌う傾向がある――彼女もご多分に漏れずそうだったんだろうなあ。でもそんな彼女がキラキラした眼鏡の鎖を付けていたということは、付ける必要性があった。更に言えば、キラキラしている石以外では、代用できなかったってことだ。


「証拠品24の、殺人事件が起こった部屋に残っていた、眼鏡と眼鏡の鎖になります。この種類が違うものを、一つの証拠品として提示するのには理由があります。それについては、この先で説明させていただきます」


「わかりました。これが眼鏡と眼鏡の鎖ですか。鎖は純度の高い魔石が使われていますね。貴族女性の宝飾品としては、珍しいものではありません」


 貴族目線での回答、ありがとうございます裁判長。


「はい。ユセリラルダ侯爵のもので、間違いないと確認が取れております」

「そうですか」

「この眼鏡の鎖は、一つ一つかなり高価な魔石がはめ込まれています。これが小型録画機の動力だとしたら……先ほどの証拠品22と見比べて下さい」

「蔓の部分が、似たようなものですね」

「小型音声録音機は、何処忍ばせても録音することはできますが、映像を録画するとなると、設置する場所が必要になってきます。それには、眼鏡が一番良いと判断したのでしょう」

「自分の視線がそのまま記録されるということですか?」

「はい。そして先ほどラパチノール氏が語った通り、動かすのには魔力が必要。わたしたちにとっては、些細な魔力ですが、王籍を抜かれるほど魔力が低かったユセリラルダ侯爵には、己の魔力でこれを長時間稼働させるのは不可能。ゆえに、外部動力源をつけた。それが彼女のいつもの装いとは違う、煌めく眼鏡の鎖になります」


「眼鏡の鎖に埋め込まれた魔石によって、動力を得て撮影できる……ということですか」

「そうなります」

「カメラのほうは壊れていないので、侯爵が殺害された後も撮影は続き、そして今も、撮影していると思われます。ですので、眼鏡とその鎖は一つの証拠品として提出させていただきました」

「ファンタズマ氏、一つよろしいですか?」

「はい」

「この魔石で作った鎖は、現場にあったのですよね」

「はい」

「では、なぜ事件現場で起こった魔石の連鎖爆破に反応しなかったのですか?」


 知っていらっしゃるでしょう、裁判長もお人が悪い。


「魔石と魔石をつなぐために縁があります。その縁が、魔力の絶縁体になっており、連鎖爆破に巻き込まれませんでした」

「外側からの影響はないと言うことですか」

「はい。その魔石の鎖をよく見ると分かるのですが、中心に小さな穴が開けられており、管が通されており、それで魔力を流す構造になっています。ラパチノール氏に確認なさってください」


 ユセリラルダ侯爵は魔石に特殊なコーティングを施していた。

 おそらく「念のために暴発対策をした」ってことだと思う。ある程度魔力があれば、あの眼鏡チェーンに魔法をぶち込まれても対処できるけど、侯爵は自前の魔力では対処できないから、保護しておかないと、魔法による暴発を防げないからな。


 侯爵の魔力のなさが、いい仕事したって訳だ。ご本人が亡くなっているので、こういう言い方しちゃ駄目なのかもしれないが。


 犯人がこれに気づかなかった理由? 魔石の防御コーティングは存在している技術だけど、コーティングした魔石をつないで魔道具の動力源にするという発想は、この世界では珍しいものだから。だから「特殊」なコーティングと表現させてもらった。


 ただコーティングして煌めきを上げて、宝飾品にするということは珍しくない。裁判長も証言してくれた。もちろん機関の貴族女性たちにも聞いた。


 いつもと違う侯爵の装いに関してだが、ヴェデリオン・パールス氏の事件で、両者はしばらく顔を会わせていなかったから装いが変わっても、そこまで違和感を覚えなかったんだろう。

 なにより犯人は古い貴族男性だ。裕福な女性貴族の宝飾品に違和感を持つなんてあるはずがない。


 ラパチノール氏の証言が終わり席に戻り、裁判長がわたしに話しかけてくる。


「確認いたしました。これが小型の映像記録機であり、今も稼働しているとして、記録された映像はどこにあるのですか?」

「証拠品22、24は小さいため、街中に設置している監視カメラのように記録媒体を内蔵することはできなかった……と聞いています」

「その解決策は?」

「記録を飛ばして、離れた所に受信機を設置し、それに連動する大容量記録媒体に記録するとラパチノール氏が証言しております。確認をどうぞ」


 ラパチノール氏、席と証言台を行ったり来たりさせて済まない! でも、この面倒が裁判なんで諦めて行き来してくれ。


「ラパチノール氏。いまのファンタズマ氏の言葉に、間違いはありませんか?」

「ありません」

「ではその記録媒体はどこにあるか、ご存じですか?」

「それは分かりません」


 無声ながら落胆の声が漏れた。一人、二人は安堵のため息かもしれないが。

 ラパチノール氏が再び席に戻り、


「ファンタズマ氏」

「はい、裁判長」

「続けて下さい」


 再びわたしの出番だ。


「はい。では……話は再びエルトハルト長官がユセリラルダ侯爵を嫌っていた……何度も聞かされて、そろそろ皆さまも飽きてきたとは思いますが、エルトハルト長官が侯爵を嫌っていたことを念頭に置いて聞いて欲しいので、再度言わせてもらいました」


 オルタナが笑いをかみ殺してるし、長官は怒鳴りたいのを我慢してるし、参事官は「もうそろそろ……」みたいな、何とも言えない表情になってるが――


「そうですか。エルトハルト長官がユセリラルダ侯爵を嫌っていることを念頭におきました。では続けてください、ファンタズマ氏」


 さすが裁判長、何ごともなく話を続けてくれる。それでこそ、大法廷を預かる裁判長。


「ありがとうございます、裁判長。ユセリラルダ侯爵は、正しい証拠集めの為に小型音声録音機を開発なさいました。これはご存じですね」

「多くの人は知っていることですね」

「ありがとうございます、裁判長。この小型音声録音機は、我々機関でも正式採用されおり、裁判所でも証拠として認められたものです」

「その通りです」

「この中継を見ている方で、ご存じないかたもいらっしゃるかもしれませんので説明しておきますと、小型音声録音機が裁判で証拠として認められたのは、機関が証拠として採用したからです。我々”機関”が採用しなければ、これは証拠になりません。そうですよね、裁判長」

「ファンタズマ氏の言う通りです」


「小型音声録音機を正式(・・)採用したのは、当時の長官。いま証人控え席にいる、先代長官ヨトラコル伯爵シャサイア氏になります。先代長官は五年前のあの事件の余波で辞任なさいました。あの事件はカラブリア王国の多くの貴族が関わっており、調査機関の長官を務められる者がいないということで、エシュヌンナ王国から長官が招かれました。正式には派遣された……かもしれませんが、そこは、まあどうでもいいかと」


「あれは酷い事件です。そして派遣して頂いたというのが、正しい表現です」


 過去形にしないところに、裁判長の気骨を感じる。

 大元の国王から司法権を奪うことには成功したけど……成功しても、この騒ぎ。そろそろ国王というか王家を、どうにかしたほうがいいよな!


「正式採用はヨトラコル伯爵ですが、参考として採用したのはその前の長官ロテルシト男爵になります」


 いきなり採用! ではなく、準備期間を経て正式採用となった。うん、普通試用期間を設けるよね。

 その試用期間を設けた二代前の長官ロテルシト男爵は、機関における音声証拠記録の取り扱いに関しては、かなり実績がある。


「そうですね」

「それで話は戻りますがエルトハルト長官は、ユセリラルダ侯爵の開発したものは、余り好みません。嫌ではありますが、小型音声録音機のように、今では調査に欠かすことができない侯爵が開発した機械を、証拠採用から削除するようなことはしませんでした」


 採用を取り消せるの? 消せるよ。昔の非科学的……魔法世界で非科学的もなにも、あったもんじゃないが、とにかく「間違っている」と立証された証拠採用から削除される。


 それに伴い、その証拠で逮捕された人は冤罪ではなかったのか? ということになるので、いままで証拠採用を削除したことはない、なんとなく使わなくなるだけ……長官は知らないけど! 長官なら採用証拠を見直すかもしれない! ますます冤罪事件の発掘が増えて再審が増えると思うと、楽しみでたまらないね!


「そうですね」



「ですが、ユセリラルダ侯爵が作成した、新しい調査用魔道具の承認となればどうでしょう?」



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