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過日の亡霊――転生冒険者と死亡した転生元王女。ただし転生冒険者は現在副業中  作者: 剣崎月
第四章・過日の亡霊――亡き元王女により暴かれた過去

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【13】

 法廷で「ウェイヨウィス神官は攻撃魔法苦手」ということを証明していたら、地元(バビロン)のウェイヨウィスクランの奴らの笑い声が届く。


 うん、おまえたちは神官じゃなくて、冒険者だから。回復魔法が大得意なだけの兇人。驚きの速度を誇る自動回復魔法をいいことに、体は後からついてくる(爆散復元)! で危険に飛び込んでいく、バビロンのクラン内でも屈指の狂ってる奴らの集合体だから、世間一般の神官と違うから。


 回復魔法の使い手が集うクランだから穏やか……などと、ほかの国は勘違いするけど、ウェイヨウィスクランは素人(外国人)が手を出していいクランじゃないんだなあ。


 だから、黙れ。回復兇人どもめ。


 あ、レシジス? あれは、バビロンのウェイヨウィスクランに所属していないから、大丈夫。神官になってるところからも分かる通り、他国の人が想像するウェイヨウィス神官です。レシジスにはバイネウスを説得してもらって、本当にありがたい……いやあ、同郷の冒険者の役に立つこと。


 ウェイヨウィスクランの知り合い? ……あれは、バビロンから出しちゃ駄目。


「裁判長、ユセリラルダ侯爵は、最近になって眼鏡をかけられていたことを、ご存じですか?」

「わたしは知りませんが、他の裁判官に知っている者がいました」

「わたしも事件当日までは存じ上げなかったのですが、事件直前、ユセリラルダ侯爵の自宅近くのカフェの店員から、ユセリラルダ侯爵が最近(・・)眼鏡をかけられていることを聞きました。いつ頃かについて尋ねたところ、一ヶ月くらい前と教えてくれました。その時は、流しただけでしたが、後日カフェに出向き、同じ店員に改めて聞いたところ、正式な日付を教えてくれました。正式な日付と根拠は証拠品21をご確認ください」


「確認しました。話を続けてください」


「カフェの店員に聞かれたのは”魔力で視力低下を防げるのか?”カフェの店員は魔力がないそうで、本当に魔力でそのようなことができるのか? と聞きたかったとのこと」


「そのように記載されていますね」


「魔力が低い人は、身体強化ができないので、補強器具を使うことは珍しくない。そしてユセリラルダ侯爵は、視力低下を防げるほどの魔力はないので、眼鏡を使うのはおかしくはない。ですが、ユセリラルダ侯爵は本当に視力が低下していたのか?」


「伊達眼鏡の可能性ですか」


「はい。そうは言っても、伊達眼鏡であろうがなかろうが、この場では”どうでもよい”のです。証拠品22の確認をお願いします」


 証拠品22は眼鏡ではなく、殺害現場に残されていた被害を免れたもの。壁のオブジェに隠されていたものだ。

 見た目は眼鏡の蔓に”よく似ている”


「この品は……説明は、ラパチノール氏にとありますね。ラパチノール氏、この棒状の証拠品の説明をお願いします」


「はい、裁判長。そちらは、ユセリラルダ侯爵閣下が開発を進めていた、小型動画録画機になります」


「動画録画機……ああ、監視カメラを小型化したのですか。随分と小さくなりましたね」

「はい。小型音声録音機よりも小さく、それでいて動いている映像を撮影できるよう、改良を重ねていました」

「なるほど。これに映像が記録されるのですか」

「いいえ、映像は別のところに録画される仕組みになっています。ただわたしに説明できるのは、ここまでです」

「どういうことですか?」

「詳細はユセリラルダ侯爵閣下と共に殺害された、バッジドゥしか知らないのです。商会の開発は、ユセリラルダ侯爵閣下が案を出し、バッジドゥと共に基礎をつくり、その後バッジドゥが更にユセリラルダ侯爵閣下の案に近づけてゆき、完成後にユセリラルダ侯爵閣下が仕様書や設計図を描き生産される形になっていました」


 バッジドゥというのは、侯爵の部屋で死亡した四名のうちの一人の技術屋。


「完成するまで、詳細はその二人にしか分からないということですか?」

「はい」

「分かりました」

「試作品の段階で、わたしたちも見せてもらいましたし、絶対に必要な材料の発注などは行っておりましたが、委細は分かりません」


 技術を秘匿していた訳じゃないんだろうけど、素地がないやつに設計図見せても分からんよなあ。きっとわたしも、分からない。


 前世の記憶で共有できる場合は、分かる……かもしれない。


「分かりました。ファンタズマ氏、他に聞くことはありますか?」

「ございません」

「控え席に戻ってください、ラパチノール氏。ではファンタズマ氏、続きをお願いします」

「はい。そちらの小型の動画録画機ですが、誰でもよろしいので、人差し指と親指でつまんで、軽く魔力を流していただけますか?」

「分かりました……魔力が流れるようですね」

「それは侯爵が殺害された部屋にあった、置物の一つに埋め込まれていました。その置物が証拠品23になります。また証拠品4の見取り図に緑の丸がついています。置物はそこに設置されておりました」

「なるほど。部屋の見取り図からすると、これが犯人を録画している可能性があるのですね」


 入り口を撮影できる場所に設置されていた小型カメラ。これが稼働していたら、犯人の姿が映っていただろうが、


「設置場所からして、そのように使用する予定だったと思われますが、残念ながら証拠品22は、なにも録画しておりません」


 残念ながら、映ってないんだなあ。画像を調べたのか? それ以前の問題。


「未完成だったということですか」

「完成品だと思います」

「なぜ完成品だと?」

「未完成品を置物に忍ばせて、部屋の入り口が録画できる場所に設置する必要がないからです」

「未完成の可能性を排除できませんが、未完成ではないという可能性も排除できないので、続けてください、ファンタズマ氏」


「はい。完成して設置していたが、起動していなかった。これは動力の問題、即ち魔石です。小型化したのには、相手に気付かれないように撮影するという目的もあったはず。そこで録画に使う魔石も、置物に合ったものにする予定だったと思います。何故か? それは小型録画機の最大の利点は、なにかに紛れ込ませて撮影していることに気付かせないこと。となれば、設置した置物の側に、高純度の大きな魔石を置いていては、擬態もなにもあったものではない……と考えております。ラパチノール氏に確認していただければ」


 あえて説明はしないが、殺害方法が魔石の連鎖爆破なので、棚に小型カメラの魔石が置かれていたら、その魔石も連鎖爆破する。

 いま裁判長の手元にある小型カメラとの動力の魔石がつながっていた場合、暴発した魔石の「暴走した」魔力が小型カメラに逆流して回路を破損して、この場で魔力を流すことはできない。

 先ほど裁判長が自ら魔力を流したので、魔石とつながっていなかったことが証明されているため、そのことに関して、裁判長には異論がない。

 魔石が棚にあった場合は、おなじく連鎖爆破で壁にも床と同じような被害が出るが、現場の壁はほとんど無傷だ。

 小型カメラの録画に必要な動力は、純青石という魔石で、かなりの魔力を含んでいるため、連鎖爆破した場合、壁には大穴があいていたことだろう。

 だが現場の壁は、ほぼ無傷だった。

 もちろん連鎖爆破に耐えられるよう、魔石を加工することも可能だ。

 だが加工されていた場合、魔石はその場に残っていることになるが、殺害現場にはなかった。


 加工された魔石が棚に残っていたら、犯人は気付きその周辺も破壊する。なにせ犯人の目につく位置に設置されているので、見過ごすわけがない。

 だがいま提出した証拠品は特に破損していない。よって小型カメラと魔石はつながれていなかったし、棚に魔石はなかった可能性が極めて高い。

 壁の魔石に気づいて持って逃げたのではないか? については、廊下の画像加工から、犯人が魔石を持って上昇下降ができない可能性が極めて高い。


 帰りは魔石が手元にないから下降が可能になった。


 ……ってことだよ、裁判素人どもが! 脳内で説明もとめんな! おまえが説明しろよ、オルタナ!

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