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過日の亡霊――転生冒険者と死亡した転生元王女。ただし転生冒険者は現在副業中  作者: 剣崎月
第三章・正義の亡霊

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【01】

 期間内に無事、攻略完了……じゃなくて、事件を解決して戻ってくることができた。遊んでただろう? うん、遊んでましたね。でも、事件は解決したし……多分。


「エリニュス主幹!」


 機関本部に戻ってきたら「待ってました!」とばかりに声を掛けられる。


「クアルバーグ参事官の部下の……」

「スルセニックと言います」


 自己紹介ありがとう!

 一応は知ってるよ? 知ってるけど、スルセニックなのかスセルニックなのか、少し悩むくらいで。


 それは覚えていないって言うんだよ? そうとも言うね。


「入り口で待機していて、声を掛けてくるってことは、なにか重要な案件だろ? なんだ?」

「済みません。頼みごとがありまして」

「なんだ?」

「実はクアルバーグ参事官からの命令ではなく、わたし個人の希望でして。もちろん、私的なことでは無く……ですが私的な要因も」


 いいから、本題に入り給え。これだから、貴族は面倒で困る。

 

「お忙しいのは分かっていますが、どうしても頼みたいことが」


 忙しいと思っているのなら、頼みはすぐに言おうね。

 そして黙って聞いてるってことは、忙しくないってことだよ。わたしは、これから報告書を提出するだけだから。


「なんだ?」


 わたしって、優しい!


「証拠品の封印を二重にしたいのですが、その二重の部分をエリニュス主幹にお願いしたく」

「え? わたし? なんで」


 ユセリラルダ侯爵の一件に関して、わたしはノータッチの部署なんだけど。


「その……実に……」


 はよ、言うんだ! スルセニック――話を要約すると、証拠品の管理において、第一室と第二室が喧嘩状態なんだって。

 普段はそんなこともないんだけど、今回の被害者はユセリラルダ侯爵。クアルバーグ参事官はユセリラルダ侯爵信者で、エルトハルト長官は「素人が首突っ込むな」派。


 国家ぐるみで証拠捏造して、外国人に冤罪を押し付けていた貴族……の血縁が、第二室には大勢いるんだ。

 基本的にカラブリア貴族は全員犯罪者の血筋といっても、カラブリア貴族は否定できないくらいには、やっちまったんだ。


「押収品倉庫に、わたしが結界を張ればいいのか?」


 極論を言うと、第二室の三分の二と、第一室の四分の一は、侯爵に恨みを抱いていてもおかしくはない……と目されているということ。


 実際はそんなことないよ。周辺国の目が厳しいのに、あえて調査機関に飛び込んできて、故国の名誉を取り戻す! という、タイプばかりなので。


 でも不正をしやすいという目で見られていることも、理解している。


 だから証拠品の保管にも、すっごく気をつかうし、誰も信じられない……みたいな状態なので、わたしに結界を張って欲しいと。

 現場の結界がわたしに任されたのも、同じ理由だろうな。


「できることなら」


 そのくらいなら問題ないと、歩き出そうとしたら、


「エリニュス!」


 長官に呼ばれた! 居たのか長官! 本部だから、居て当然なんだけど!


「うわ! 長官。急いでるんで、失礼いたしまぁぁぁぁぁぁ」

「逃げたら攻撃するぞ」

「機関本部内、攻撃魔法禁止!」

「時と場合による。いまは使っても良いと、わたしが決めた」

「うわぁぁ……で、なんの用ですか。現場の結界を外せとかですか? すぐ外します」

「結界はお前でいい。お前は結界の名手だろうが」

「名手ってほどでも。誰がばらした……かについては聞きませんが、あいつ(オルタナ)か。あいつめ!」

「ばらされたくなかったら、誓約魔法をかけたらどうだ?」

あいつ(オルタナ)に誓約魔法を掛けるなんて、無断なことしませんよ」

「どうしてだ?」

「……それは秘密ですよ、なにせ冒険者の領分なんで」

「なるほど。冒険者の領分ならばそれはよい。お前が結界の名手でなくとも、機関でもっとも信頼できるので、お前に任せる」

「うわ! いつの間にわたし、長官の信頼勝ち取った?!」

「勝ち取ったのではない。他の者の評価が低いだけだ」

「言葉をお選びにならない! さすが長官!」


 そこに痺れないし憧れもしない!


「たしかにわたしは、カラブリア貴族を疑っている。それは個々の悪意ではなく、染みついてしまった悪習ということだ。機関職員たちは、悪事に手を染めてはいないが、彼らの教育係は息をするように悪事に手を染めた過去がある。それは代々続いた教育であり、それらは簡単には修正できない」


「あ……はい」


 さすが長官、言葉を選ばない。オブラートに包むなんてことは、一切しない。スルセニックの表情すら気にしない。


 この世界にオブラートないけど。


「現在がもっとも危険な時期だと、わたしは思っている」

「と、いいますと?」

「悪意はない。悪いことをしようとは思わない。正義を履行する。だが根底に間違った教えがある可能性がある。意図為ずに事実をねじ曲げ、罪を作り上げてしまうかもしれない」


 基礎が間違ってる……うん、これは難しい問題だね。


「あ……幼少期に間違った呪文を教えられて、直せないやつ的な」

「違う」

「あ、違いました?」

「だが言われてみれば、そうかもな。教える人側すら(・・)間違っているとは思っていないのだから、これは直しようがない……と手を拱くわけにはいかない。だからわたしたちが派遣されたのだ」

「長官凄いですね」


 思えばよくこんな国にきて、正しい調査が行われているかを監視しようと思ったもんだ。


「その顔やめろ。もちろんわたしとて、完全に正しいわけではない。それは理解している」

「それはそうですね!」

「即座に返答するな!」

「いや、吃驚したもので。長官が自分が正しくないかも? と疑うことあるって、驚き以外の何物でもありませんよ」


 スルセニックもびっくりしているよ。あれ? スセルニック? スルセニック……おや?


「お前な。まあいい。とにかく、この国の貴族と外国の者たち、そしてバビロンの奴らと様々な環境の者を取り揃え、良いことを取り入れていくことが、この国に根ざした冤罪気質を正してゆくことにつながる。たとえ時間がかかろうとも、もっとも確実だ」

「凄い立派なご意見なんですけど、バビロン出身者は外国人に入らないんですか?」


 外国人枠にすら入らないの? 遠足おやつのバナナ枠立場すら危うい?


「政府のない国の人間と政府がある国の人間を、一緒にするわけないだろう」

「そっか……まあ、そっか」


 この世界で唯一政府がない国だからな。それを国というのか知らんけど、他の国が「国」と認めているから、国なんじゃないかな?


「お前は圧倒的第三者だから適任だ。侯爵の邸の結界も、お前に任せてよかったと思っている」

「褒められたー」

「スルセニック、こいつに依頼する際には、わたしに話を通せ」

「失礼しました」

「お前たちがエリニュスに仕事を依頼するのはいい。ただこいつが、どんな仕事をしているのかは、注意深く確認したいのだ。こいつは報告が適当なところがあるからな」

「はあ」


 スルセニックが返事しずらそうで笑う。


「わたしも証拠品の結界について、お前に頼もうと考えていた」

「どんな感じですか?」

「仕様書が長官室にある。ついてこい」

「えええー」


 仕様書などという堅苦しいモノがあるってことは、面倒じゃないかー……と、文句を言う前に、長官に魔力により捕縛され、引きずられることに。


「スルセニック。任せておけぇぇぇぇ。あとエルトハルト長官、これ、わたしやオルクスじゃないと、死にますよ」


 魔力拘束のつもりなんだろうが、圧がひどすぎる。魔力でプレスされてる感じだ。わたしはこういうトラップに慣れてるから、対処できるけどさ。


「死なないのだから、いいだろう」

「そうなんですけどね。でもエルトハルト長官が力加減間違ったら、さすがに潰れますよ」

「お前は平気だろう。この程度で潰れていたら、バベルの塔など攻略できないだろうが」

「そうなんですけどぉぉぉーーーー」


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