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旅の準備、隊商キギリ

「あのさ~、いい雰囲気の時に悪いんだけどさもうちょっと説明していい?」

「はいっ、どうぞ」

「まずはここ、風の国から調査してほしい。ここは風の国の郊外に建っていて、首都ソロネまで230km。風の大精霊—リーシア様が住んでる緑の森までは270kmだ」

「緑の森は風の国の極西にあって、風の国には常に西風が吹いてるんですよ」

「へぇ、そうなんだ」

「早速なんだが調査に向かってほしい。事態は刻一刻を争う。詳しいことはミアちゃんから聞いてくれ。何か質問は?」

「あっ!どうやって俺が監察官だって証明すればいいんですか?」

「ん?そのペンダント、大精霊紋のペンダントだろ?複製は絶対にできないから十分な証明になるだろうし、念のためにミアに協会の調査通告書を持たせるから心配するな」

「うわっ、なんだこれ....わ、わかりました」

「それじゃあ頼んだぞ!ミアちゃんもな」

「はい!それじゃあアキラ様、行きましょう」

「よし!行こう!.......どうやって一階まで降りるの?」

「それは....階段でどうぞ...」

「えぇ~!?」

「アキラ君、ミアちゃん、いってらっしゃい!」

「「いってきます!」」



「さぁアキラ様、白い塔は風の国の国境ギリギリにあるので、ここからはひたすら東に行きますよ!」

「ちょっと...はぁ..まって..はぁ..いま下りたばっかり...」

「いきますよ!....きゃぁっ!」

「やっぱお前運動オンチだろ!」

「ちがいます。いまのはつまずいただけです」

「なにもないところで?」

「そういうときもあります」

さっきから見てるけどやっぱ運動オンチだろう。そんな子が200kmぐらいを移動できるのだろうか?

....ほんとにこれから大丈夫か?


はぁ..はぁ..

荒い息を吐く音だけが響く。もはや一言も発する気力さえ残っていないだろう。

「ねぇ、ミアちゃん、大丈夫?休憩しようか?」

「だ、だいじょうぶです」

「いや結構限界だよね。一回休もう」

「はい、ありがとう....はぁ...ございます」

「どれぐらい歩いたかな?」

「体感的には10kmぐらいですけど塔がみえてるので5㎞くらいでしょう」

「んん~まだそんなもんかぁ...ところで今晩はどうするの?」

「あと一時間ぐらいしたら野営の準備しましょう」


あまりの疲労に二人して地面に倒れこむ。

草の香りと風が心地よい。


「やっぱ運動不足と運動オンチにはきついな」

「そうですね。塔にいると運動しないですからね」

「運動不足は俺のことだよ!というか《浮遊》使えばいいんじゃない?」

「今日はさすがに魔力がキツイですし、有事に備えたいので」

「お~い!そこの二人、大丈夫か~」

「だ、誰」

「お~いってミアちゃんじゃないか!」

「シグルドさん!こんにちは」

「いや~人が倒れてると思ったらミアちゃんだったからびっくりしたよ。えーっと、そちらの兄ちゃんは?」

「明です。ミアちゃんとこれから風の国に調査に行くんです」

「俺はシグルド。隊商キギリの隊長でいろんな国をめぐって商売をしている」

「キギリの皆さんは白い塔によく物資を売りに来てくれるんです」

「なにか買っていくかい?」

「ミアちゃん、なにか買う?ほとんどというか手ぶらで俺たち来てるけど...」

「ある程度の食料や水は《収納》に入ってるので大丈夫です」

「《収納》?」

「魔力量に比例して生きた動物以外の物を収納できる魔法で、収納されたものは経年劣化がとても遅くなります。中級程度の魔法ですよ」

「兄ちゃん《収納》も知らないとか大丈夫なのか?」

「えっと、彼、新人みたいなものなんです」

「そうか、新人でもちゃんとミアちゃんを守ってやれよ。よし、これをやろう!」

「これって...ナイフ..というより短刀?いやいやいやもらえませんよ」

「いいんだ、ミアちゃんのためだと思ってくれ」

「シグルドさん、すみません」

「いいって、いいって、なんか他にいるかい?」

「う~ん...移動手段とかあったりしませんよね?」

「移動手段か...馬は俺たちの商売道具だからな...あっ!ロバならあるぞ!」

「「........ロバ?」」


「ロバ....シグルドさんに貰っちゃったな」

「はい、確かに移動手段ではありますね」

「名前、何にする?」

「う~ん....ユキちゃんとか」

「そうだな、ユキちゃん」

なんとも形容し難い潰れたような鳴き声でユキちゃんが鳴いた。

奇妙な旅の一員が増えた。



これからユキちゃんの鳴き声は日本語のロバの擬音で「グーヒー、グーヒー」を使うつもりです。

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