9.話し合い
「なにすんねん!」
「キオル、あなたの利用価値があるかと光の精霊として我が世界に迎えたというのに、あなたのやっていることは何です?私の悪口だけでも許しがたいのに、雄大の首筋のにおいをかいで鼻血を我慢しているという体たらく。この世界に害しかありません!」
一息に言い切ったユリリーアス。ぜえぜえと肩で息をしている。どうやら、他人に文句をつけるのに慣れていないようだ。
さては神としてはまだまだヒヨッコだな。
「おまえさ~、国造り失敗したイライラを俺に八つ当たりしても始まらへんでぇ」
わっはっは!一番嫌な事、言ってやった!
「!!!私は!」
「私は?」
「ここは、あなたの世界のような信仰の上に神があるような世界とは違って、絶対的な創造神である私の世界なのです。単独で国造りの経験もないあなたに悪く言われる覚えはありません!」
うむうむ。確かに正論だ。前の世界は神を欲する人類がいたらいただけ、神界から神が勧請されるというシステムだった。創造神はあくまでそのシステムを作っただけ。
よって大所帯。神様会議で相談もできるし、合議制で連帯責任。いいね、万歳。
この世界は、ユリリーアスが一人で運営して苦情に対処しているんだろう。過酷なワンオペ。しかも変更不可の『最初のルール』に中二病を爆裂させていて収集はついていない状況。
詰んでるな。可哀そうになってくる。
「まあ、せやかて、上手く世界運営できてへんのは確かなんやろ。雄大連れてくくらいやし」
「それは……そうですが」
「味方は作ってへんの?」
「光と闇の精霊を眷属にと造りました。が、闇の精霊は、魔王の手下で、触れると魔物になると信じられてしまって、私と直接話せる大神官周辺と、そういうことを気にしないジュード王国でしか居心地よく過ごせないと、偏った配置になっています」
「それでも居ることは居るんやろ?」
「はい、でも、光と闇が両方揃って力を振うシステムになっていて……」
「揃っていない場所が大半だから、力が振るえない。だから、味方は当てにできないと。そんな状況なんやったら、俺を転移させるときに、闇の精霊にしとけば良かったんちゃうん?俺やったら雄大の側なら、居心地とか気にせえへんけどな」
「はっ!そ、そうですね」
あかんな。これは、見た目は端正で落ち着いていて、できる神っぽいオーラがあるのに、悲しいほどポンコツや。
「しゃーない!俺もちっとは手伝ったるし。とりあえず、雄大と話せるようにしてくれへん。俺のモチベーションあがったらええ事あるかもよ」
「精霊は人類と話せません。神力を使って念話すればいいかと思いますが、キオルの神力はリスの体を乗っ取った時に枯渇しています。念話が出来る程に、溜まるには時間がかかるでしょう」
「まじか!?お前の神力、分けてくれたりせえへんの?」
「やってみましょう……ダメなようです……」
もう、こいつ、どんな設定でこの世界創ったんや?危機回避するつもりあらへんな!