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7.談話室

 その後、イジーに、この世界のことなどを訪ねた雄大だったが、着替えて少し休憩したら説明をする場に案内するので、それまでお待ちください。と言われてしまった。少ししょんぼりしている。

 推しのリクエストをスルーするなんてあり得ないので、こいつは同担ではなさそうだ。

 俺はそもそも同担拒否の傾向を自覚している。が、しかし、このような異世界に来てそんなことをして、雄大を孤立させては危険だということは分かる。

 なので、このように、雄大がスルーされてしょんぼりしていたら、怒らねばならないのだが、側仕えなんて素敵なポジションをかっさらっていくこいつが、ライバルになるのは嬉しくないので、同担でないことはよい事だと思ってしまう。


 なんてことをつらつら考えていたら、談話室に行く時間になったようだ。

 置いて行かれてはたまらないと、すかさず肩に駆け上がる。

「リス様のお部屋もご用意いたしました。談話室へ行く前にご案内します」と言われた。


 雄大の部屋から少し離れたところにある小さな温室だ。

「少し前に引退した庭師が、植物研究用に作った温室ですが、今は新しい施設が出来て、ここは誰にも引き継がれなく放置されておりました。急遽清掃して、寝床になりそうなものを集めておきました。お気に召すとよいのですが?」


 かなり、気合の入った寝床が用意されている。イジーはどうやら、雄大推しではなく、俺推しのようだ。それは重畳。手下にしてやってもいいか。

「きゅーきゅっきゅきゅきゅー!(雄大の部屋と行き来できる出入口が必要や!)」と身振り手振りで主張する。

「???」と、きょとん顔をしている。わからんのんか!?手下失格やな。


「もしかして、僕の部屋へ自由に出入りしたいの?」と雄大が聞いてくれる。

「きゅ!(そうや!)」流石我が推し。ファンの気持ちが分かっとる。

「合ってたみたい。かわいいね。僕もそうなったら心強いよ」といって撫でてくれる。ご褒美過多で死んでまうわ~!


 喜ぶ一人と一匹を見て、イジーはすぐに手配をかけている。仕事が早い、やっぱり手下にしてやろう。


 談話室は、神殿の奥の奥、もはや密会室とか秘密作戦本部室とかの方が似合っている部屋だった。


「それでは、」とイカロスが始めた話は、聖教会のやるせない話が沢山詰まった一大悲劇だった。

 簡単に要約すると、ユリリーアス神はこの世界の魔物を減らしたい。全人類が協力して対処してほしいと願っている。

 だが、ダークスポットの北側にあるジュード王国の国王は魔王で、ダークスポットから魔物を生み出し他国に差し向けていると信じられているので協力もなにもない。

 神は勇者に魔物を減らしてもらい、人々を少しでも落ち着かせてから話し合いの場を設けようと考えた。

 というのも現状で、「ジュードとも協力して~」と人々に訴えかけたら、ジュードは同じ人類ではない!魔王の手下だ!と反発する人々が暴徒化して、各地の神殿を焼き討ちするなど非常にまずい状況になったらしい。

 更に悪いことに、唯一神の声を聞くことのできる大神官一族は執拗に狙われていて、イカロスは妻と、息子ウーゾの嫁を殺されてしまったというから、かなり深刻だ。


「神は、世界創世の折に立てた誓約があって、我らに力を授けることは出来ないとおっしゃいました。しかし、力を授けた別世界の者を一人だけ送ることはできると。そして、あなた様がいらしてくださった。どうか、どうか、我らにお力をお貸しください!」

 妻の死に際の話をしている途中から、涙が止まらなくなったイカロスだが、それを止めることも拭うこともせず話し切って頭を下げた。


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